帝都の空の下で《アジェンナ国物語~恋愛編》

rainy

はじめに

この小説は『アジェンナ国物語』シリーズの三作目に当たります。

ここから読み始める方のために、簡単に第一作、第二作の紹介をしておきます。


シリーズ第一作は『妖怪の村の小さな学校』です。

アジェンナ王国は常夏の南の島国。かつては西の巨大な帝国ピッポニアの支配下だったが、今では宗主国が入れ替わり東の帝国カサンの植民地である。

アジェンナは、人々が精霊や妖怪と共に暮らし、古い身分制度や慣習が色濃く残る場所。特に南部は文明化から取り残された土地柄であった。

ある日、南部の片田舎スンバ村に、若い女教師のオモ・ヒサリが赴任する。彼女の任務はアジェンナ現地の子ども達にカサン語を教え、立派な帝国臣民に育てる事だった。彼女が赴いたのは、妖怪と交わる仕事をするとして、周りから『妖人』と呼ばれ蔑まれる人々の住む「森の際」と呼ばれる地域だった。

彼女はそこでマルという幼い少年と運命の出会いを果たす。マルは皮膚病で全身が醜いイボに覆われていたが、可愛い声と人懐こい態度でヒサリの心を捕らえた。

ヒサリの元には十二人の意欲的な子どもが集まった。

やがてマルはずば抜けたカサン語習得能力と物語を作る才能でヒサリを驚かせる。実はマルは、『妖怪の語る物語を聞き取る』という不思議な力を持っていた。

さらにヒサリは、妖怪と交わる子ども達の驚くべき力に気付くのだった。そして子ども達もまたヒサリ先生に触発されて成長していく。


第二作『帝国寄宿学校の少年』

成長したマルは優れたカサン語力を見出だされ、アジェンナ国首都にあるエリート養成のための寄宿学校に入学する事になった。そこには賢い子にカサンの精神を叩き込み、カサンに忠実な官僚の卵にするという帝国側の意図があった。しかし入学はマルやヒサリの思いに反したものだった。マルは無理やり愛する故郷と仲間とヒサリ先生から引き離される事になった。

そこはエリート校とは名ばかり。暴力が横行し、生徒達に自由は無い。マルは自分自身を遠くの学校に追いやったのはヒサリ先生の意図だと誤解し、恨みを抱く。

 マルはそこで、猿の面をかぶった不思議なルームメイトのシンに出会う。彼は徹底的に体を張って教師や上級生からの暴力からマルを守ってくれた。

やがてマルはカサン人のクラスメイトのタク・チセン、同じスンバ村の出身で地主の子のエルメライらと出会い、刺激を受け、切磋琢磨しながら成長していく。

 やがてマルはとある出来事がきっかけで、シンの正体を知る事になる。彼は実はアジェンナ国王の第一子でありながら廃嫡されたヤーシーン王子であった。カサン帝国側は、ピッポニアと繋がりの深い現国王の代わりにヤーシーンを王位につけた後、彼をカサンの傀儡として意のままに操るつもりであった。ヤーシーン王子はその事を知りつつも、自分はカサンの操り人形になるつもりは無い、アジェンナの民の事を何より考えている、と秘かにマルに打ち明けるのだった。

 好奇心の強いマルは、カサンの敵国ピッポニアの本を読むなどのトラブルを起こし大問題になるものの、無事に優秀な成績で学校を卒業。カサン帝国の首都トアンの大学への留学も決まる。

 卒業式の日にマルはヒサリ先生と出会い、彼女に対する恨みが過ちであった事に気付く。そして新たな気持ちで学校を後にするのだった。


《用語集》


アジェンナ国

 ひょうたん型をした常夏の島国で王国。首都はタガタイ。多くの民族と言語があるが、代表は北部のアジュ語を話すアジュ人と南部のアマン語を話すアマン人。他に隣国シャク王国から移り住んで来たシャク系民族やカサン帝国の他の職員地から労働者としてやって来たベルベロン人、山岳少数民族など多数が存在する。


カサン帝国 

 高度な文明と強大な軍事力を誇るアジェンナの宗主国。首都はトアン。


ピッポニア帝国 

 長年に渡りカサンと軍事衝突を繰り返してきたカサンの敵国。アジェンナの旧宗主国。近年、アジェンナ国内の一部の反カサン勢力に資金を提供していると噂されている。


スンバ村

 アジェンナ南部に位置する僻村でマルの故郷。大河チャヤテー川の支流に位置する。村の中には川が流れ、農民が多く住む地域と妖人が住む「森の際」地区とに分かれている。


妖人

 「妖怪を操り、妖怪と共に生活する汚らわしい者」として、アジェンナ国内で徹底的に差別を受けてきた人々。具体的には妖獣の皮で靴を作る職人、人間に害をなす妖怪を退治する妖怪ハンター、妖怪の集まる汚物や死体やお産を扱う清掃人や葬儀屋、産婆、妖怪の言葉を操ると言われる物乞いなど。


トアン帝国大学

カサン帝国の最高学府。マルの進学先。


シャク人

アジェンナの隣国シャク王国から移り住んだ民族。勤勉で商業や金融業に長けた人が多い。ピッポニア帝国支配時代にはアジェンナ国内では優遇され、アマン人、アジュ人ら他の民族の彼らを見る目は複雑である。「シャク・ジーカ(シャクの豹)」はピッポニアから資金援助を受けた反カサン組織である。


ラハン団

妖人達を中心とした、反カサンゲリラ組織。

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