仲間想いで、儚げなようでいて芯の強い、素敵な人狼の恋物語

人狼と聞いてまずは猛々しい姿を思い浮かべたのですが、現れたのは狼になれない、狩りもできないか弱い女の子。
ところが読み進めるうち、芯の強い心やさしさに、気品ある誇りたかさに、やっぱり彼女は人狼なのだと好きになっていきました。いざとなると仲間のために自分の身をも犠牲にできる、真の人狼。

次々と襲う苦難のなかで次第にたくましくなっていく彼女と一緒に、人狼たちが人間に立ち向かうさまを、手に汗握って応援していました。

そしてなにより応援したくなるのが、彼女の恋。
やさしくて強い幼馴染に自分が似合わないと思って一歩を踏み出せない、そんな切ない想いがじんじんと伝わってきました。
一番近くにいるのに遠い。互いに大切に想っているのに伝わりきらない。人狼の価値観が壁になる。それにふたりの間を割く人間の魔の手。
ときにもどかしく思い、ときにきゅんとしながら、ふたりの幸せを心から願ってしまいます。

読後感のいい、とても素敵な人狼の子の恋物語でした。

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