狼でもなく、人でもなく、唯一無二の彼女自身を靭くしなやかに咲き誇れ

ある集団の中で一人だけ違うということ。
それがその社会での価値基準に関することで、劣った方向に違っていれば、『出来損ない』の烙印が押される。
本作のヒロイン・レティリエは、そんな少女でした。

しかしそれは物理的な『強さ』を絶対とする人狼族の中でのこと。人間から見れば、レティリエは類い稀な『美しさ』という価値を持つ存在でした。
いずれにせよ、それらは他者から決め付けられた価値です。

窮地に陥った時、レティリエは才能を開花させます。
周囲を観察し、知恵を働かせて、賢く立ち回る。
愛する人や仲間のためなら、辛い道を自ら選ぶ覚悟がある。
そんな姿にこそ、『強さ』と『美しさ』を感じました。

ある社会が一つの価値だけに重きを置いてしまうと、別の側面から殴られた時あっという間に崩壊してしまうかもしれません。
大きな事件を経て、レティリエが村に呼び込んだ新しい風により、新しい価値観が芽生えました。
誰しも得意なことはバラバラです。それを互いに活かしてこそ、真に強い集団となるはずです。

ジャンルが『恋愛』で、ストーリーラインは恋愛感情を軸に進んでいきますが、大事なテーマはむしろそこにあるように感じました。
読み応えのある、ドラマチックな物語です。
切なく苦しい展開の少女漫画が好きな方には、特に刺さると思います。

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