身元不明の男性の惨殺死体が発見されたところから物語が動き始める本作。
過去、恋人がストーカーに監禁されたことを機に関係が切れてしまった経験を持つ、若手刑事が主人公です。
その遺体発見現場近くで、例のストーカー男の姿を見かけたことから、過去と現在とをつなぐ細い線が見えてきて——
終始シリアスで緊迫感のある物語です。
捜査の展開などにリアリティがあり、まるで刑事ドラマを見ているようでした。
ストーリーが進むにつれて明らかになってくる真相と人物相関は、意外性とともに深い納得感もあり、ヒューマンドラマとしても優れた作品だと感じます。
ミステリーの要素があるためあまり多くは語れませんが、因縁のストーカー男・細間のキャラクターがすごくいいです。絶妙。
また主人公の上司にあたるベテラン刑事がいい味の人物で、思わず実写キャストをあれこれ考えたくなります。つまりドラマ化希望です。
皮肉な真相のお話ではありますが、事の顛末には不思議な清々しさもありました。少なくとも、ある人たちには救いが見える。
総じて、とても読み応えのある作品でした。本格サスペンスをお求めの方におすすめしたいです!
読み始め当初、「執着」が際立っているタイトルで、どのような展開が待っているのか、もしかしたら、読むとどろどろなのか、もしかしたら、タイトル負けなのか、わくわく感もありながら、先入観を持ってはいけないのでしょうが、ミステリーとして楽しむ気持ちで一日の楽しみとさせていただきました。
本作で気を配って読んでいたのは、愛の行方です。
過去、現在、そして未来に亘って。
隠れたテーマとして、「あなたは誰かを好きですか」というのがあると思いました。
できれば血の通う人間がいいのですが。
愛がないと血も凍ってしまうでしょう。
「好き」、それの度合いが増すと、「執着」なのでしょうね。
これだけの事件を破綻なくラストへ持ってこられたのは、綿密な設計をされた作者様とそれを書き上げた力だと思います。
是非、ご一読ください。