リアリティって、こう云うことさ。……の一つの答えがここにある。

世界的ロックバンドが、組織犯罪に巻き込まれていく。そう聞くと、並みの腕の作家なら荒唐無稽な夢物語に堕してしまいそうですが、これは最後まで現実感を失わず、読み応えある物語となっています。
我々が日常接することのない世界でありながら、リアリティを感じるのです。それを可能にするものは、確かな筆力に支えられた文章と、圧倒的な下調べの蓄積がもたらす世界の再現力。
音楽や欧州各地の風物、それに麻薬や銃器。ディテールのなかにリアリティを埋めこむことで、どれだけ物語の説得力が高まるか、まざまざと見せられた思いになります。書く人も読む人も、ぜひ読んでいただきたい作品です。

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