幕間:冒険者+5の休日

第48話:冒険者+5:エリアと外出+見守り隊


 フレイちゃん謎の激怒から三日後。私は王都の拠点にいた。

 髪を整え、服装も冒険用ではなく外用の、しっかりとした物を選んだつもりだ。


「エリアに恥じをかかせられないからな……」


 今から約束通り、エリアとの外出がある。

 一応、エミックは連れて行くし、ガントレットブレードも装備はしていくが、まぁ何も起こらないだろう。


「さて、こんなもので良いか……」


 鏡の前で身支度を整えた私は、そう言って鏡から離れた。

 それから数秒後だ。玄関の扉が叩かれると同時、エリアの声が聞こえて来た。


「ルイス殿! そ、その……準備は宜しいでしょうか?」


「おっと、あぁ! 今から行くよ」


 私はそう返事してから扉の方へ行き、そして扉を開けた私は思わず固まった。


「あ、あの……どうでしょうか?」 


 目の前にいるのはエリアだ。だが姿はいつもと違う。

 整った長く綺麗な金髪、薄く塗られた化粧に口紅が、歳関係なく、彼女を大人の女性に見せていた。


――驚いたな。


 私は思わず心の中で、そう言っていた。

 まるで絵のモデルだ。それ程までにエリアは美しかった。


 ただ気になるのは服装だった。

 外用の女性用ドレス。街で貴族が少しお洒落をして出歩く時に、よく着ている様な逸品を彼女を着ている。


 だが背中が出過ぎだと、私は言葉が詰まった。

 彼女の、ソワソワとした動きで見えてしまう。

 肩は出ているし、そこから背中に生地がないドレスだと言う事を。


「あ、あの……似合いませんか?」


「えっ……いや違う。驚いたんだ……元々、君は綺麗だったけど今日は誰だか一瞬、分からなかったぐらい、更に綺麗で……!」


――あぁ、何を慌てているんだ私は。もっと、ハッキリ言えないのか。


 私は自身の語彙力と共に、もっと気の利いた事が言えないのかと自己嫌悪した。

 どう見たって気合いの入った姿じゃないか。

 それなのに、気の利いた事も言えないとは、我ながら情けなかった。


「っ! ほ、本当ですか……それは……ありがとうございます」


 しかし、私の言葉にエリアは嬉しそうに頬を赤く染め、笑顔を浮かべていた。

 その姿はあまりに可憐で、普段は剣を持つ騎士にも、数日前に共にツンドラマウンテンへ行ったとも思えなかった。


「し、しかし……その、あれだ。少し、肌を出し過ぎじゃないかな?」


「うっ……そ、その……こういうのは、お嫌いですか?」


 彼女はそう言いながら後ろ髪をたくし上げ、私にドレスの後ろを見せて来た。

 

――えぇ! なんで逆に見えてくるんだ!?


 エリアは顔を真っ赤にし、プルプルと震えながら私に背中を見せて来る。 

 これは、彼女の神が長いから大丈夫だが、背中だけじゃなく腰や、最悪はお尻の上もギリギリ見えるんじゃ――


――ってこら! エミック! 大人しくしてなさい! 今日は絶対に駄目だぞ!


 私は必死にエリアのお尻に飛び込みそうなエミックを止めながらも、何とか彼女に気の利いた言葉を絞り出そうとした。


「い、いや嫌いとかじゃなくて……少し、あれだ。少々、見え過ぎている様な……」


「……お嫌いですか?」


 そう言ってエリアは距離だけを縮めて来た。


――だからなんでだ!? いや待てよ。こんな感じの事、前にもあったぞ。


 私は前にギルドでスカウトされた事を思い出し、周囲を見て見ると、私は彼女を見付けた。

 少し離れた木の影で、こっちを見ている女性――エリアの副官・テレサだ。


 確か彼女は、私にエリアと自身を使って色仕掛けを仕掛けてきた女性だ。

 最近、見ないと思ったら、このタイミングで出て来るとは。


「テ、テレサ……こ、これ以上は恥ずかしいぃ」


「駄目です。もっとです……それを着る時に覚悟をしたのでしょう。さぁ仕留めなさい」


 なんか話してるけど、全部聞こえてるよ。

 隠れる気もないな向こうは。一体、何を企んでいるんだ。

 

 私は少し不安を抱いたが、これ以上、エリアの素肌を晒せる訳にはいかない。


「その……そろそろ行こうか、エリア」


「えっ……! も、もう良いのですか? その……もっと見なくて――」


「いやいや大丈夫だから!」 


 男として見たいという気持ちはある。

 だが、それを自制できる精神力だってあるさ。


「さぁ……襲うのです! ルイス殿!」 


 襲わないよ。なんてことを言うんだ彼女は。

 私はこのままだと、彼女によってエリアに何かしてしまうかもしれない。


 私は急いで場所を変えようと、エリアの手を取った。


「取り敢えず、行こうかエリア!」


「えっ! は、はいぃ! ルイス殿……大胆」


 なんかごめん。焦り過ぎて恥ずかしいな。

 私は顔を赤くしながら微笑む彼女に謝りながら、その場を後にしようとした時だった。


「――ん? なんか視線が」


 私は背後の方角から視線を感じた気がした。

 最初、テレサかと思ったが、彼女は堂々と此方を見ているから違う。


 彼女のせいで、少し敏感になっているのかもしれない。

 そう思う事で私は自身を納得させると、今度こそエリアの手を取って場所を移動した。


♦♦♦♦


「グルルルル……あの女ぁ!」


 私、フレイ・レッドアイは王都にいた。

 そして一部始終(全部)を見ていました。


――あのアバズレェ! 一度ならず二度までもルイスさんに色仕掛けなんて卑怯な事を!


 しかし私だって女だ。デートの邪魔はしない。

 けれど告白の妨害はする。そして、その秘策もある。


「皆さん! お願いします!!」


「……あ、はい」


「よっしゃー!!」


「……めんどくさい」


 私の後ろには、疲れた表情のクロノさんに、気合の入ったミアさん、やる気のないレイさんがいる。

 それに、他の弟子の方にも声を掛けてますし、絶対に告白だけは阻止!


「絶対にルイスさんは渡さないからぁ……!!」


 そう言って私は二人の後を、クロノさん達と追って行った。


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