第10話:冒険者+5:VS謎の襲撃者
「うおぉぉっ!!」
「おおっ!! これを受け止めるか!!」
私が相手の大剣を真っ正面から受け止めると、相手は嬉しそうな声を出した。
周囲の者からも、ざわつきが聞こえるが、それを聞いている暇はない。
「強く、そして練度ある太刀筋だ……!」
大剣は扱いが難しい。
格好いいからという理由で使う者も何回も見て来たが、結局は大剣に求められる練度に挫折し、結局は諦めてしまう者を多く見て来た。
だが、この男の大剣の振りには一切のブレがない。
それ程の繊細な扱い。だからこそ、敵が加減しているのが分かった。
「やはり本気じゃないか」
「流石に気付かれるか……だが、それはそちらもだろう!」
数秒の鍔迫り合いをし、私はブレードで大剣を弾く。
だが反動を利用し、相手は再び大剣を振り下ろし、私はまたそれを防いだ。
「同じではないぞ!!」
すると相手はそう言って、そのまま身体を後ろに退き、そして一気に突きを繰り出してくる。
だが甘い。それは隙が大きいぞ。
私は身体を逸らし、がら空きの側面から男へと迫った。
「甘いな!!」
けれど男も対応してくる。
持ち手を一瞬で変え、刃を横へとして私へ薙ぎ払いをしてきた。
「クソッ!」
大剣でまさか、こんな俊敏な動きをするなんて。
私は右手のブレードで受け、咄嗟に小さく飛び、両足を地面から放した。
そして右のブレードの角度を微調整し、私は大剣に押される形で男の反対側の側面へと回る。
――ここだ。
核心があった。間違いなく獲れる。
相手は薙ぎ払った事で腰を捻っていて、体勢に無理もある。
だが相手の狙いが分からないのも確かだ。刃を首で寸止めし、武器を降ろさせよう。
「これは参ったな……第一スキル『
「うおっ――!」
相手から急激に魔力が溢れた。
まるで全身から炎を出しているかの様に荒々しい。
同時に私自身のレベルも跳ね上がった。
この男、スキルで自身を強化したのか。
しかし第一スキルでこの強化幅とは、どれだけ極めたんだ。
力量の瞳で見る限り、男のレベルは<64>から<76>に上がっている。
なんて男だ。ダンジョンならば危険度9だって行けるぞ。
やはりただの襲撃者じゃないな。
だが考えは後だ。ここからが私の『
相手のレベルに変動し、更にレベルを上げた場合でも影響がある。
これで私のレベルも<81>に上がった。
それによって魔力も肉体に留めることが出来ず、男と同じ様に溢れ出す。
「なんと……そちらもまだ上がるのか!!」
「こっちが言いたいよ」
男は驚きながらも、嬉しそうな声は変わらない。
そして強化した男の振り。
それは体勢の不利を無視し、大剣を高速で振り直して私を捉えた。
それを私も真っ正面から受けて立ち、首ではなく大剣へ双剣をぶつける。
「ぬぅっ!! ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」
強烈な魔力同士のぶつかりが起こり、周囲へ余波が飛ぶ。
ミアはブレスと一緒に防御態勢を取っていたが、襲撃者の者達は数名が吹き飛んでいた。
ミアが無事なのを確認した私はレベル差に物を言わせ、ブレードに風魔法を纏わせて男を吹き飛ばす。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
だが男は普通じゃなかった。
通常ならば吹き飛んで外壁に叩き付けられる筈が、両足で踏ん張り、地面を抉りながら後方へ飛ばされるだけだった。
しかも、そうなっても大剣の構えは崩していない。
「なんて男だ……襲撃されたのに、尊敬の念すら抱いてしまう」
「ハァ……ハァ……それは俺の台詞でもあるよ。試すだけだったが、これ程の男とは。病み上がりとはいえ、大人しく出来る筈もなし!」
そう言った男の魔力が更に高められ、周囲に魔力の渦が起こる。
だが男が力を増やせば、私も力が上がる。
私の周囲にも魔力の渦が起こり、両者の渦がぶつかり、再び余波が起こる。
「ハハハ……一体、あなたの底はいつ見れるのですか?」
「それは私の台詞ですよ。そのスキルの練度、大剣の技量……その全てが並の人間では生涯到達できない領域。――もう止めましょう。あなたは何者なんですか?」
「まだ言いたくありません。俺が真っ正面から押し負けたのは何年振りか……それに、俺の大剣――<アルカナム>を受けて、その双剣は折れるどころか刃こぼれもない。やはりオリハルコン製ですか?」
「えぇ、嘗て冒険で得た贈り物……それを知り合いのドワーフに作ってもらった相棒です」
男の言葉に私も、ようやく腑に落ちた。
高レベルとなった私。その両腕のガントレット・ブレードを受け、一切傷付かない大剣だ。
やはり同じオリハルコン製だったか。
「やはりそうでしたか……俺以上の強者。そんな存在との戦い、今止める事は出来ないな。――心が既に燃える準備をしている!!」
「第一スキルでここまで上がるのか……!」
魔力がレベルがまだ上がる。
今度は大剣にも魔力を込めている。もう彼の瞳も魔力の波で眼光しか見えない。
いやきっと私もそう見えるのだろうな。
「センセイ……すげぇ」
ミアの声が聞こえた。
オリハルコン級のギルド長にそう言われると嬉しいものだ。
だが相手次第では第四スキルを使わざる得ない。
「お互い、次で決めましょう……!」
「望むところです、ダンジョンマスター」
私と男は自然と同じタイミングで構えた。
次で決める。これ程の相手、私だって戦えて嬉しい。
レベルは必ず私が上回るが、それでも技量を学べる事が私にとっての糧。
互いに構えて僅か、数秒。
魔力の流れが一定になった刹那。私と相手は時が満ちたと、互いに飛び出し――
「いけません! 師匠!!」
「そこまでです! 団長!!」
飛び出そうとした瞬間、聞き覚えのある声によって私は我に返る。
相手もそうなのだろう。互いの魔力が薄まって行き、私のレベルも下がっていくのを感じる。
「師匠!」
そして声を掛け、私の傍に来たのはクロノだった。
「クロノ! いやぁ助かった……王都に着いたら襲撃されてね。だが相手も中々の男でつい火がついてしまった」
「全くもう……それに襲撃ではありませんよ。試験ですね。ただ度が過ぎたのは向こうも同じ様です」
クロノの言葉に私も男の方を見ると、そこではエリアが男に何やら叫んでいた。
「団長! 一体何をやられているんですか! 王都の正門広場で、しかもルイス殿を殺す気ですか!!」
「い、いやそんなつもりは……それに彼は強いぞ!? 死んでいたのは、俺の方だったかもしれないぐらいだ」
何やら男の様子がおかしい。
エリアに色々と言われて怯んでいる。
――っていうか団長って言ったか?
「どういう事だクロノ?」
「こういう事ですよ、師匠」
そう言ってクロノが周囲を見渡すと、私の耳に拍手が聞こえて来た。
「これは……」
私も周囲を見ると、そこにいたのはマントを被った襲撃者達が拍手をしていた。
いや襲撃者じゃない。マントを脱いだ彼等の姿――それはエリアと同じ騎士達だった。
彼等は私を見ながら歓迎する様に拍手をしているが、そうなると疑問があるぞ。
「待て、じゃあ……団長って。私が戦っていたのはまさか……?」
「はい、我が騎士団の団長――<グラン・レオンハート>です。ほら団長!」
「ア、アハハハ……どうも」
「……え、えぇどうも」
エリアに連れてこられた男――グランは、先程までの気迫はない。
私と同じぐらいの歳かな。
グレンにはさっきまでの姿はなく、身だしなみを整えサッパリした印象が残った。
そんな何とも言えない戦いの終わり。
これが私と騎士団長との出会いだった。
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