第9話:冒険者+5:襲撃される
「オラァァどけどけどけぇぇぇぇ!!!」
「わあぁぁぁぁぁ!! あのギルドが帰って来たぞ!!」
「歩く災害のミアだぁぁぁぁ!?」
町を出てから僅か1日で、私は王都へと辿り着いていた。
いやジェネラル・ホースの体力っって、一日中全力で走っても疲れないし、ミアも全然休まなかったんだよ。
そんな感じで、ミアの馬車が見えた途端、門番らしき人達が周りを避難させ、逃げる様に門を開けてくれた。
そこにミアが突入。あぁ、師匠として申し訳ありません。
「よっしゃ! 付いたぜセンセイ!! 王都だ! クロノの野郎よりも早く着いたぜ!!」
そりゃそうだ。クロノやエリア達は仲間と動いているんだから、足並みを揃えないと。
それに王都の正門広場は広いからって、こんなど真ん中に止めては駄目だぞミア。
まぁ、反省した様子もなく伸びをしているが。
「あぁ~楽しかったぁ!」
「全く、お前は相変わらずだな。まぁ病気とかよりは良いが」
私はスッキリして伸びをしているミアをそのままに、馬車から降りる。
「良いじゃんかセンセイ! オレのお陰で楽に入れたろ?」
確かにそれはあるな。
本当なら入るのに色々と書かないといけないが、オリハルコン級ギルドを筆頭に一部のギルドは免除されている。
因みに私は違うさ。ただの冒険者なんだから。
今回はミアのお陰だが、普段は発行された書類と一緒に来るよ。
「それでセンセイ! こっからどうすんだよ? オレのギルドに来るんだろ? それに街を案内するから」
「そう言われてもなぁ……」
ミアに連れられて来てしまったが、目的は騎士団関係だ。
それ以外だと他の弟子の状況や、今の王都でのギルドの事も聞きたい。
ただ住む場所もあるし、やはりエリアやクロノを待つしかないか。
「ミアのギルドも後で見に行くが、騎士団のエリアやクロノ達とも合流したい。だが皆がいつ来るかが分からないだろ?」
「そんなのオレに任せろって! そこらの門番を捕まえてよ、オレのギルドに連絡寄越す様に言うから――あっ?」
急にミアが周囲へ意識を向け始めた。
私も同時に風の流れの変化に気付く。
いつの間に、周囲から人や物がいなくなっている。
「王都の正門だぞ……こんな事がありえるのか?」
気付けば静寂だ。
先程まで騒がしく感じていた場所――いやミアがうるさかっただけかも知れないが。
「……周りにいるな。出てこい!」
ミアは鼻が良い。
何かに気付き、すぐに利かせて周囲に圧を放った。
すると、ぞろぞろとマントで顔を覆った集団が現れる。
「んだテメェ等――」
「待てミア!」
私はすぐにミアを止めた。
彼等が動く度に金属音が響き、武装しているのが分かったが、妙なのは殺気がない事だ。
そんな者達が2、30人で人を囲みもせずに現れる。
しかも統率が取れた様に、一人も殺気を出さずに。
「あなた方は?」
私の言葉に周囲の者は動かないが、その中から一人が歩いて来た。
その手には身の丈と同じ程の大剣を持って。
「ダンジョンマスター……と、お見受けする」
「そう呼ばれてはいますが、アナタは?」
声は男。しかし言葉に重みがある。
油断のならない相手と思うが、やはり殺気はない。
武器だけを構え、まさに様子見って感じだ。
「……お相手願いたい」
だが相手は私の質問に答えず、大剣を構えてきた。
その動きは静かで、何千何万と同じ動きをしたのだろう。
構えへの澱みが一切ない。
ただ真剣だ。こちらは無抵抗、そんな事は出来ないぞ。
私は両手のガントレットからブレードを出し、ミアへ視線を送った。
「ミア、手は出すな。自分に危険が迫ったら良いが、それまでは……頼む」
「良いけどさ……コイツ、強いぜセンセイ」
逆にミアの殺気立つ。
瞳の眼光は獣の様で、私が言わなかったら先に手を出したのだろう。
だが強いのは分かってるさ。
何故なら既に『+Level5』が発動しているからだ。
そしてスキルが対象を教えてくれる。目の前の男が危険だと。
私は同時に『力量の瞳』を発動し、男の姿を捉える。
「……レベル<64>か」
「!……ほう! 面白いスキルだな」
男は楽しそうな声で喋った。
しかし、これ程のレベルの者だ。
様子見するにも危険があるが、ここは王都だ。下手な事なんて出来ないぞ普通。
だから殺気を出すまでは、此方も戦うにしても様子見に徹しなければ。
幸運にも私のレベルは+5されて<69>だ。
真っ正面からでも受け止められる。
「目的は分かりませんが……お相手します」
真剣を使うからか、私の声もいつもより鋭くなる。
相手も私の声の変化に気付き、笑みを浮かべる。
「では――参る!!」
相手が大剣を持ち、飛ぶ様に私に迫る。
それを私も両手のブレードで受け、襲撃者との戦いは幕を開けた。
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