第49話:冒険者+5:デート乱入戦
テレサや謎の視線を感じながらも、私とエリアは王都を見て回り、なんだかんだで楽しんでいた。
少しお茶をしたり、小物屋を覗いたりした。
それにエリアに髪飾りが似合うと思って、彼女に買ってあげたら凄く喜んでくれて、私も久し振りに平和を楽しめている気がした。
そして昼過ぎ頃、私とエリアは少し遅い昼食を取って、先程までの事を話しながら楽しんでいた。
「ルイス殿、髪飾り……ありがとうございます」
「いやいや、別に構わないよ。寧ろ、それで良かったかい? 女性と出掛けたり、贈り物をするのは弟子達ぐらいだし、あまりセンスに自信がなくてね」
私が買ってあげたのは青い花の髪飾りだ。
彼女は清楚な感じもあるし、似合うと思って送っているが、やはり自分に自信がないから不安だ。
「いえ! これ凄く嬉しいです……大事にしますね」
だがエリアはそう言って、髪に付けている髪飾りに触れ、嬉しそうに微笑んでくれた。
あぁやっぱり美人だなエリア。彼女と結婚する男は幸せものだ。
「あぁ、それなら良かっ――殺気!」
「っ! 刺客ですか!」
私は確かに感じた殺気に思わず立ち上がり、エリアを守る様に移動すると彼女も立ち上がって護身用の剣を手に持って、いつでも抜ける様にしていた。
「ずっと視線は感じていた……だが、敵意がなかったからね。相手をしてなかったけど、今の間違いなく殺気! さぁ! 出てこい!」
「良いでしょう!!」
そう言って草むら、木々、各店――いや多いな。そんなに見られていたのか。
しかも、飛び出してきたのは見覚えのある者達ばかりだったのも驚いた。
「フレイちゃん!? クロノ! ミア! レイ! あっ、小太郎も! それに弟子達のギルドメンバーも!」
それだけじゃないな。よくよく見ると、他の弟子達もチラホラといるぞ。
なんでこんなにいるんだ。って言うか、隠れてエリアとの外出を見ていたのか!?
何でか分からないが、間違いない。エリアも驚いて口を開けているぞ。
「クロノ! これはどういう事だ! 何が目的だ!」
「……その、依頼です」
なんだ依頼って。こんな馬鹿な依頼を出す人がいるか。
おっさんと美少女の外出の覗き見だぞ。
「誰だ! そんな依頼を出したのは!」
「私です!」
「フレイちゃん!? なにが目的なんだい!」
そんなまさか、あの初々しかった受付嬢である彼女が、こんな覗き魔みたいな依頼を出すとは。
少し悪い事をしたくなるあれかな。クロノ達も、大人になったからって葉巻に手を出したりしてたな。
――確か、半日で止めてたが。
「ずるいです! 私だってルイスさんとデートしたいのに! そんなパッと出の発情騎士なんかに!」
「は、発情騎士!? 発情騎士ってなんですか! それに、良く見たらまたアナタですか! 手紙といい、今回といい、良い加減にしてください!」
「こっちのセリフです! なんですか、その外用ドレス! 背中どころかお尻の一部見えてるし! 髪で隠しているから大丈夫だなんて思わないで下さい!――行きなさい! エミック!!」
『~~♪』
「きゃぁぁぁ!! 舐めないで!?」
「こらエミック! お尻舐めない!!」
なんでフレイちゃんの言う事を聞くんだよ。
って言うか、お前が舐めるからエリアの背中が際どい――いやいや、耐えろ! そしてエミックを止めろ。
私は何とかエミックを引き剝がし、エリアの身支度を待っているが、これは流石に酷くないか。
「フレイちゃん! いくら何でも酷いぞ! こんな、おっさんと出掛けたいなら時間作るから!」
「えっ! 本当ですか!――でも、その前に、その女の告白だけは阻止します!」
「へっ?」
「なっ!?」
何を言うかと思えば、こんなおっさんに告白なんてする訳ないだろうに。
悪い子とした告白ぐらいだろう、可能性があるのは。
「フレイちゃん。エリアが私に告白する筈ないだろうに。歳の差だって10以上だよ?」
「何をいっているんですか! 明らかに好意を持ってる反応でしょ! 髪飾りだって羨ましかった! それに服装だって気合が入り過ぎ!」
「そ、それは……」
エリアはフレイちゃんの言葉に、顔を赤くしていた。
えっ、まさか本当に? いや恥ずかしい可能性もある。
だが、一瞬だが夢を見てしまったな。
「――そこまでです!」
「今度はなんだ!?――あっ! テレサさんに騎士団!?」
「テレサ! それに団長も!? なんですか、これ!」
私達を守る様に展開する騎士達の姿に、いよいよ言葉を失ってしまった。
グランも何をしている。暇なのか。
「副団長の恋路! 私達が邪魔させません!」
「前から思っていました。副団長は美人ですが、行き遅れる雰囲気があると!」
「だから、それはオッサンでも恋を成就させようと我等騎士も見張っていたのだ!」
「それかエリアはダメ男に引っ掛かりそうだったし、ルイスなら信用できる」
「止めてください! 恥ずかしいし、失礼ですよ!」
本当にな。本人を前にしてよく、そんな事を言えるよ。
失礼通り越して人格否定だぞ。
「さぁ! 今の内に行け! ここは俺達が抑えてやるから、デートの続きしていこい!」
「こんなデートがあるか」
「……折角のムードが」
エリアが何か肩を落としているが、いやそれよりも、これこのままじゃクロノ達と全面対決なんじゃ?
「なんだよセンセイ! デートだったら、オレもしたい! ほら見たいなら胸も見せてやるぜ」
「ブフッ!」
ミアの奴、なに服を捲し上げて胸を見せているんだ! しかもデカイ!
――違う違う。そうじゃない止めるんだよ馬鹿! 騎士もギルドもおぉ~じゃない!
「止めろミア! 皆見てるぞ!」
「別にセンセイに見てもらえるなら良いんだけどな……しゃあねぇ。――ところで、これよ騎士共、やる気かオレ等と?」
「その通りです! 副団長の為、邪魔するなら許さん!」
そう言った瞬間、何故か両者はぶつかり合った。
本当になんでだ?
「綺麗な仕事してんじゃねよ! この騎士共!」
「やまかましい! 礼儀も出来ん奴等が綺麗な仕事できんだろうが!」
どうやら両者共に不満があるようだな。
全く、もう付き合ってられない。
「逃げるぞエリア!」
「えっ!? あの――きゃぁ!?」
私はエリアを抱き抱え、その場から走って逃げる事にした。
彼女が少し悲鳴をあげたが、我慢してくれ。
王都に来てからアホみたいな事ばかりで、少し平穏が欲しいな。
結果、その日――王都は騎士とギルドの大乱闘が起こり、第一次騎士ギルド乱闘と呼ばれた。
私とエリアは仕方なく、私の拠点で一夜を過ごしたが、次の日にはおしゃれしたフレイちゃんが玄関にいたので諦めた。
――因みに、第二次騎士ギルド乱闘は、その日に起こった。
♦♦♦♦
王都の街、その建物の上からルイス達を見下ろす男二人がいた。
片方は道化師の姿をした始高天のラウンだった。
「ほぉら~あれがダンジョンマスターだよぉ。ボクちんの為に、仕事してよぉ~」
「分かったよ。依頼金も貰っちまったし、あの野郎共をぶっ飛ばせば良いんだな?」
「そうそう! 頼むよぉ~五大ギルドの一角さん!」
「任せとけ! じいちゃんや父ちゃんは引退してるし、今のボスは俺だ。初仕事を確かに受けたぜ!」
「ヌフフフ……お願いねぇ~ゼン!」
――精々、頑張ってね。多分、死ぬと思うけどぉ。
アーライと呼ばれた金髪に、アクセサリーで身を固める青年へラウンは内心で、嘲笑うと、再びルイスを見下ろした。
「そろそろ、始末したいしね」
そう言うラウンの、その瞳は狂気に満ちていた事をルイスはまだ知らない。
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