第32話:冒険者+5:娯楽都市・パンドラへ
モンスタースタジアムに参加すると決めた私の、その後の動きは早かった。
クロノ達やエリアにも頼み、すぐに事前参加の知らせを大会本部に送って貰い、その間に私は旅支度をする。
それと開催場所は娯楽の大都市・パンドラと分かり、この際だからとクロノ達はギルド内旅行をすると言って付いて来る様だ。
レイも、仕事を暇にして付いてくと凄い事を言っているし、エリアの護衛はいりますよね!――と必死にアピールしてつい来る様だ。
この様子だと騎士達も来そうだし、他の弟子達も噂を聞いて来そうだな。
今回も今回で、どうやら騒がしくなりそうだよ。
しかし今回は祭りだ。ノア達の様な想定外の敵はいないだろう。
私はそう思いながら荷造りをし、エミックやベヒーを連れて数日後――私達はパンドラへと旅立った。
♦♦♦♦
王都から北西に二日の距離――そこに大都市パンドラはあった。
中央に巨大なスタジアムがあり、道中でもモンスター使いや行商人、そして富裕層の者達をよく見る。
だが誰もが、私達の方を見て来るんだ。
当然と言えば当然か。なんせ巨大なベヒーモスがいるんだ。
モンスター使いの冒険者なんて、まさか出場しないよなと、祈る様な表情だった。
あとそれ以外にも理由ははある。
今、私は馬車で移動しているが、前後左右を弟子達のギルドや騎士達で固められていた。
「オリハルコン級ギルドが何組も!? しかも騎士も――!」
「なんだ、王族の護衛なのか……!」
「えぇ……ベヒーモスってマジかよ。どうやって従えたんだ」
違うんだ。王族じゃなくて、おっさんなんだ。
しかし騎士で思い出すとあれだな。留守番のグランが可哀想だな。
『王がいるのに王都を離れる訳にはいかんだろ? 色々とやって貰ってるし、楽しんで来い』
そう言って送り出して貰って申し訳なかったな。
グランにはお土産を買って来よう。
「おい! クロノ! テメェの所の馬車邪魔なんだよ! もっと寄せろ!」
「黙れ! これが模範通りの感覚だろ! お前が変なんだ! しかも早すぎるぞ! 少し速度を落とせ!」
「御二人共! お静かに! 他の通行者にご迷惑です!」
「……スピースピー。レイちゃん、ねんね」
あぁ既に祭りの様に騒がしいな。
ミアもクロノも互いの馬車の屋根に上って騒いで、それをエリアが止めている。
レイはレイで、ベヒーの上で寝ているし、皆マイペースだな。
そんな事を思いながら私は、馬車の手綱を持ちながら溜息を吐いていた時だ。
――不意に、私の馬車に僅かな物音と、若干のバランスが崩れた感覚を抱いた。
もしやと思って私は馬車の屋根を見てみると、そこには黒装束に身を包んだ銀髪の青年が立っていた。
「おぉ……誰かと思ったら、やっぱり小太郎か!」
「……はい。宴会以来ですね、師よ」
静かな口調で私に一礼する彼――小太郎・
彼もまた、私の弟子の一人だ。
プラチナ級隠密ギルド――<
「来てくれたのかい、小太郎」
「はい。――欲望の街・パンドラ。そこは裏に生きる者達の巣窟でもあります。今回のモンスタースタジアムでも、必ず賭け事として介入している筈。そうなると、ダークホースとなる師は目を付けられます」
「えっ、つまり私の為に来てくれたのかい!?」
「無論」
小太郎はそう言って小さく頷く。
全く、本当に私は優しい弟子達に恵まれているよ。
「それはありがたいが、小太郎も楽しんでくれよ? そうじゃなきゃ、私は申し訳なくて悲しいよ」
「承知」
そう言って小太郎は姿を消すが、きっと隠密活動をするんだろうな。
私は少し真面目過ぎる弟子を心配しながら、また前を見ると、徐々に活気に溢れた都市が見えて来ていた。
「おっ……見えたな。夢見る黄金街・パンドラ」
風船が飛び、花火が鳴る。
同時に大勢の人々の歓声が、遠くでも聞こえてくる。
「さぁ、エミック、ベヒー。一緒に楽しもうか」
『~~~♪』
『グオォォォン!』
私の言葉に二人は嬉しそうに鳴き、私達はパンドラへと近付いてくのだった。
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