第15話:冒険者+5:VS暗殺ギルド頭領・ダアナ

「ハァァッ!!」


「ぬっ! なんと――!」


 私とダアナ飛び出すと同時に蹴りを放ち、空中でぶつかり合う。

 だが純粋な力ならばレベルの高い私の方が上だ。


 私はそのまま勢いでダアナを蹴り飛ばし、向かいの屋根へと叩き付けた。


「ぐおっ! なんと……俺が力負けとは。しかし、この速さならば――」


 ダアナはすぐに立ち上がり、私が屋根に着地したタイミングを狙って来た。

 

 だが見えているぞ。

 これならばドクリスの蔓の方が何倍も厄介だ。

 私はガントレットで奴のナイフを受け止めた。


「なっ! 馬鹿な、俺の速度を、透明となったナイフすら見切られたのか!」


 奴は驚愕し、冷静さを僅かに欠けさせた。

 私の力量の瞳は相手の強さを視る。即ち、相手の力――魔力でもある。

 

 スキルを使う以上、魔力を使うならナイフが見えなくとも、魔力を通してみれば良い。


「弟子や、そのギルドメンバーや家族が世話になったんだ。私も加減はしない!」


 私は魔力を解放し、両手のブレードには炎を。両足には風の魔法を纏わせる。

 そして怯んだ相手へ一気に叩き込んだ。


紅蓮刃疾風脚ぐれんじんしっぷうきゃく!!」


 炎を纏った両ブレードの斬撃、からの風を纏った回転蹴りはダアナを捉えた。

 

「うっ、うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


 鬼の腕で必死に防御するダアナだったが、徐々に鬼の腕もボロボロとなっていく。

 そして耐えきれず吹き飛ばされたが、ダアナは受け身を取った。


「嘗めるな! 若造が!!」


 アイツ、受け身の反動を使って更に速度を上げたのか。

 けど見切っているよ。私の第二スキル『力量の瞳』は相手のレベルや強さを捉える。

 逆に言えば、相手がどこにいるかを把握できるんだ。


 何より、追い詰められた暗殺者が最後は何処を狙うか。

 もう何回もやられてるから分かっているよ。


 私は特に無駄に動かず、ただ両手のブレードを背中へと向ける。

 ただそれだけだった。その直後にブレードへ鈍い感覚を感じた。


「ガハッ! う、うぅ……全て見破られていたのか……!」


 もう自分でも制御が出来ていない速度だったのだろう。

 ただ後ろへブレードを向けただけで、彼は自分から刺さりに来た。

 刺さったのは片方の脇腹だが、ダアナは自ら下がって抜くと、そのまま屋根の上に倒れる。


「すまないが死なせないよ」


 彼は大事な情報源だ。余罪だってある。

 私はポケットから『ヒールスライム』の体液が入った瓶を取り出し、彼の腹へと撒いた。


 するとジェルの様に彼の腹部に張り付き、出血もすぐに固まった。

 そして、その直後だ。彼をなものが屋根から生え、そのまま拘束する。


「師匠!」


「センセイ!!」


「ぐえっ!!」

 

 クロノとミアの声が聞こえた瞬間、腹部に強烈な一撃が入った。

 ミアが飛び込んで来たんだ。

 駄目だ吐く吐く。食べて飲んだ物が驚いてしまう。


「どうだセンセイ! オレも強くなったろ!!」


「わ、分かった分かったから! 取り敢えず身体をそんなくっつけるな! はしたないぞ!」


「えぇ? 別にセンセイなら良いし!」


「何をやっているんですか二人共……」


 私に抱き着いて来るミアを注意するが、彼女は甘えんぼだったからな。

 注意しても小動物の様に離れない。

 そんな私達を見てクロノも呆れている。


「そ、それよりもクロノ。向こうはどうなった?」


「全員なんとか捕えましたよ。こちら側は怪我人数名、死者は無しです。ですが、恐らく情報を知っているのは、この頭領でしょう」


「どうすんだ、吐かせんのか?」


「いや、彼等はプロだ。尋問で拷問でも吐かないだろうな。自決されても困るし、私に任せろ。この手に強い冒険者に知り合いがいる」


 顔馴染みの情報ギルドの冒険者。

 彼のスキルならば情報を得られる。

 今日中に手紙を出せば、明後日の朝には来てくれる筈だ。


「流石は師匠です! お願いします!」


「何が流石は師匠です! だよ、この間まで死にそうな顔をしてたのによ。オレに感謝しろよ! オレがセンセイに助けてやってってお願いしたんだからよ?」


「黙れガサツ女! 絶対に貴様にだけは礼は言わんぞ! っというより、そろそろ師匠から離れろ!」


「いやだぁ~今日はセンセイと寝るぅ~」


「無理を言うなって……」


 私はクロノとミアの喧嘩を見ながら締まらないぁと思っていると、近くに来ていたエミックが笑う様に口を開閉していた。

 全く、他人事だと思って。飼い主のピンチだぞ。助けてくれよ相棒。


 因みに余談だが、この後エリアも合流したが、私に抱き着くミアを見て一悶着あったのは別の話だ。

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