第55話:激突! 全員集合!(三人称)

 早朝の王都。その正門広場に、ルイスの仲間達――辺境ギルドの者が集まっていた。

 

「全く、いきなり送ってきたと思ったらこれだ……」


 ギルド長は、昨晩にルイスから届いた手紙を見ていた。

 仲間達も内容を全て知っている。


 それはギルドの脱退及び、冒険者である事を示す手紙だ。

 他には五大ギルドと揉めた事。彼らの行いと、それが絶対に許せなかった事をが書かれている。


 そして最後は自分達に対しての謝罪で終わっていた。


「馬鹿野郎が……今更、五大ギルド如きで驚かねぇよ。それに元々、俺等は辺境の連中だ。五大ギルドがなんだってんだよ」


 ギルド長――ジャック・レンドは呆れた様に溜息を吐くと、ルイスの手紙を破り捨てた。

 そして、地面に置いていた巨大な斧を担ぐと、他の者達も武器を持つ。


「フレイちゃんを置いてきたのは正解だったな」


「あぁ、ルイスの事になると突っ込むからなぁ」


「さぁて、お前等……準備は良いか? 五大ギルドだが、派手にやるぞ!」


「よっしゃー!」


 彼等はそう言って空へ武器を掲げると、王都の中を走っていく。

 目的地は白帝の聖界天――本部だ。


♦♦♦♦


 クロノは『黒の園』本部で、一睡もせずに悩んでいた。

 五大ギルドの件、そして師匠――ルイスの事の両方だ。


「どうしましょう……ギルド長」


 傍で受付嬢の子が悩むようにクロノに言う。

 それは早朝、ルイスがエミックとベヒーを連れ、上級ギルド地区に行った事を、彼女や、他の冒険者がクロノに伝えたからだ。


「どうする……相手は五大ギルド。だが仲間を攻撃されて黙っている訳に……だが、ギルドを、皆の居場所も守らねば」


 クロノの頭を抱えた。

 報復でもギルドは終わる。だが仲間をやられて黙っているのも嫌だ。


「どうすれば……!」


 クロノは悩み続けていると、不意に彼の執務室に大勢の冒険者が入ってくる。

 その人数はあまりに多く、通路に入りきらない者達がいた。


「お前達……」


 そしてクロノは彼らの見覚えがあった。

 彼等は自分のギルドの仲間達だった。


「ギルド長……このままで良いんですか? ギルド長の師であるダンジョンマスターは、きっとカチコミに行ったんですよ!」


「俺等! 仲間をやられて黙っている訳にはいきません!」


「ギルド長! 私たち覚悟は出来ています!」


 仲間達は五大ギルドと戦う事を望む、その様に言った。

 それを聞いたクロノだが、まだ悩んでいた。


「だが……皆の居場所が。それに、それは師匠の想いも無下に――」


「何が無下にするですか! ダンジョンマスターは! 俺等の代わりに行ってくれてるんですよ!」


「助けなくてどうするんですか! そんな弱いギルドに入ったつもりはないですよ!」


「因みに……ギルド<天極の獅子てんごくのしし>の、ミアギルド長は、既に仲間を率いて殴り込みに行ったみたいですよ」


 その言葉、クロノは別の意味で頭が痛くなった。

 しかし、それを聞いて顔を上げたクロノの顔は先程よりも明るく、そして笑っていた。


「あの馬鹿らしい……全く。悩んでいる私が馬鹿じゃないか」


「じゃあ、ギルド長!」


「あぁ……!」


 仲間の言葉にクロノは頷いた。


「皆、俺と戦ってくれ……!」


「はい!」


「ギルドが無くなったら、そん時はやり直しましょう!」


 クロノ達は覚悟を決め、戦闘準備を整えようとした時だった。

 執務室の窓が何者かに叩かれ、クロノは、それを調べようとしたが、隙間から影の手が入り、そのまま手紙だけを置いて消えた。


「これは……小太郎のギルド『夢月』の印」


 クロノが拾った、その手紙には小太郎のギルドの紋が刻まれていた。

 そしてすぐに中を読むと、クロノはやがて笑いながら椅子に座った。


「全く……馬鹿みたいに悩んだのは私だけか」


 その手紙の中身には――こう書かれていた。


『弟子、全員集合。一番遅いの、お前』


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