第4章 第59話 ビグアルハ

モシスウントと甲殻人クラストマンを全員倒して、ルナは奴隷として扱われていた竜人族は全員解放して、みんな喜びに満ち溢れていた。


ミレイは傷は癒えたけどまだ休ませようということになって寝てる。


「おーい、西村くーん」

ヒミッゾの館からモシスウントに連れ去られた西村くんをルナとミレイ以外の僕たちは探していた。


美咲が盗賊のスキルで人の気配を感知している。


「あそこね、あの建物の中に誰かいるわ」

美咲が誰かを見つけたようなので、僕たちは建物の中に入る。


建物は部屋の仕切りが壊されて建物自体が一つの部屋になっていた。


「中に誰かいるよ!」

美咲が人を見つける


建物の奥の方の暗い所にに僕たちの学校の制服を着た人達がいた……僕たちのクラスメイトだ。


「にしむらー!西村はいるかー?」

健太が叫んだ。


「けんたぁー!健太来てくれたのか!」

建物の奥で暗くてわからない謎の人物に腕を掴まれているクラスメイトは西村くんだった。


「異世界人の皆様方、あと憎きラポーナ、お久しぶりです。」

建物の奥に西村くんの腕を掴んでる謎の人物はドミルガンの部下だったカエル顔の魔人だった。


「カエル顔の魔人!西村君を返せ!」

僕が叫びながら掃除機を呼び出すとカエル顔の魔人は段々闇に隠れて行く……


「ふむ……皆様に私のお名前をお教えするのをすっかり忘れていたようですね……私の名前はビクアルハと申します。

異世界人を集めては【魔王ザルド・ダークネス】様の元にお連れするのが私の役目でございます。

以後お見知りおきを……」

ビクアルハと名乗るカエル顔の魔人はそう言った。


僕の後ろからビュッと言う音がした。


「ビグアルハ!あなたの好きにはさせません!」

アリーが矢を放った!判断が早い!


「ぎゃー!私の腕がー!」

西村くんの腕を掴んでるビグアルハの左腕に矢が刺さっていた。

そして西村くんはビグアルハの腕を振りほどいて僕たちがいる方に倒れた。


「ラポーナ……異世界人の皆様……今回はここで引き下がります……が、次に会う時には、こうはいきませんよ……ではさようなら……」

ビグアルハはアリ―をにらみつけててゼリフをき左手の矢を抜き、投げ捨て闇に消えた。


そこには血塗られた矢が転がっていた。


僕はセルリアンブルーに輝くコードレス掃除機のダイヤルを【動】に合わせて

「【アベル商店の掃除機】よ!ビグアルハの動きを止めろ!」

と叫んだけど間に合わず既にビグアルハが消えた後だった。


「にしむらー!」

「けんたー!」

西村くんと健太はお互いの肩を軽く叩き合って再会を喜んだ。


部屋を見渡すと、西村くんの近くに僕たちと同じ学校の制服の女性が泣いていた。


「……中園さん?中園千鶴さん?!」

美咲が声を掛ける。

「……山田さん?」

中園さんは一旦泣くのをやめて顔を上げて美咲を確認して、美咲に泣きついた。

美咲は「もう安心だよ」と中園さんをなぐさめた。


「みなさん、これを見てください」

ラポーナさんが床を指を差しながらみんなに語り掛けた。

「ビグアルハはこの魔法陣でどこかに転送して逃げたようですね。

でも、この魔法陣を使えばユゲノラ王国王城までご友人のおふたりを転送することが可能です」


「中園さん……お城には加藤さんと田中くんが豪華な接待を受けて待機してるの……魔王討伐して私たち全員が元の世界に帰れるまでそこで待ってて……」

美咲が中園さんに言うと

「西村もそこで待っててくれ」

と健太もうながそうすると西村くんが

「健太たちだけ戦って俺だけ待機するなんて……」

と健太にしがみついた。


「西村さまは王城で待機してください。

佐藤さまをはじめ、こちらにいるみなさんは魔王と戦う才能があるから戦ってるのであって、決して無謀な戦いをするために旅をしているわけではありません」

と言ってラポーナさんが西村くんをさとす。


「そういうことだ。俺たちが魔王を倒してクラスのみんなを全員集めて元の世界に帰るから、それまで大人しく豪華な食事を接待されて待ってろ」

と健太も続けてさと


ラポーナさんが中園さんと西村くんに魔法陣の中に入るように言うものの、ふたりはなかなか入らないので美咲と健太も付き添いで5人で魔法陣に入って転送した。


僕らはいつ帰ってくるかわからないラポーナさんたちをアリーとミレイとおしゃべりしながら待って、5分くらい経過してからラポーナさん、健太、美咲が帰ってきた。


「偶然近くに田中さまがいらっしゃったので、田中さまに説得してもらって中園さまと西村さまを近くの衛兵に預けて帰ってきました」


……田中智人くんは、トールス・ドイムという魔王四天王の一人に捕らえられていた……僕は直接会えはしなかったけど、健太と美咲が田中くんの状況を確認して報告してくれただけでも安心できるし、西村くんと中園さんも安心しただろう……


……これで4人は豪華な接待を受けながら僕たちが魔王討伐を終えるのを待ってるわけだ……ちょっとうらやましいなあ……


僕はくだらない考えを巡らせながら、クラスメイトがまたふたり救われた実感をみしめた。

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