第3章 第41話 脱出

「ご主人様ぁ~助けに来たにゃ~」

ミレイの声がコッソリ聞こえた。


外の様子が少し騒がしいから多分たくさん人がいる……ミレイが捕まっているのか?


……そんな感じはない……


この街にはまだヒミッゾに洗脳されていない人たちがレジスタンス活動をしている……


僕たち6人は顔同士がくっつき合うくらいにお互い近づいて、美咲が小さな声で相談を始めた。


「ラポーナさん!助けが来ましたよ!どうすんのこれ?!」

「ここは一旦、脱獄しましょう。逃げ回りながらさっきの3つの情報が得られれば良し、捕まったら最初の作戦通りで行きましょう」


僕たちの作戦は少々複雑になった。


さてと、脱獄する以上サッサとやりますか……僕はセルリアンブルーのコードレス掃除機をとりだして……ん?

ラポーナさんが僕の腕を引っ張り「こんなところで、掃除機の爆音を鳴り響かせたら誰か来ちゃいます!」と言われたのでコードレス掃除機をひっこめた。


全員ぜぇいぃんうぅしろぉにさぁがぁってろぉ!空気孔くぅうきこぉうかぁす!」


外のミレイたちも牢屋の中の僕たちも壁から離れたのを確認した雄一が、酸の魔法【アシッドリキッド】を鉄製の空気孔の辺りに掛けると、空気孔と壁は音も立てずに静かにそして徐々に溶けて出して、やがて壁にポッカリと大きな穴が出来た。


ミレイがロープを投げてくれてそのロープでみんな登り、全員外に出た。


「この人達が助けてくれたにゃ!」

ミレイの周りには3人の男たちと1人の女性がいて、どうやらこの人達がミレイをかくまって僕たちの救出をしてくれたらしい。


「とりあえずヒミッゾに知られていないアジトがあるから、詳しいことはそこで話そう」

そう言うと静かに早足で移動を開始した。




どこをどう通って来たのかはサッパリわからないけど、5分くらいでアジトに着いた。

アジトの中は狭く20人くらいがおり、ここでヒッソリと暮らしているようだ。


「ミレイねーちゃん、またクッキー作ってぇー!」

子供たちにせがまれるけど困り果てて

「夜はおかし食べちゃダメにゃ、また明日にするにゃ」

さとし子供を寝かしつける。


ミレイは子供たちの為に自慢の料理の腕を振るってお菓子を作ってあげて、すっかり溶け込んでいた。


「僕はこのレジスタンスのリーダーをしているパーラクトと申します」

一人の男がそう名乗ると、ラポーナさんも一歩前に出て

「私はユゲノラ王国宮廷魔術師補佐のラポーナと申します。魔王討伐の王命を受けて【魔王ザルド・ダークネス】とその配下を倒すための旅路たびじの途中です」


「ああ、やはり、あなた方が噂の魔王討伐の皆様方みなさまがたでしたか!

ここでお救い出来たのは運に恵まれている!

ではヒミッゾも……」

「はいヒミッゾも我々が倒してこのソードアを取り戻します」

「おおぉ……ありがたい天は我々を見放さなかった……」

パーラクトは目を見開いてラポーナさんを見つめた。


ラポーナさんは凛々しい表情でパーラクトに質問した。

「このソードアは何故こんなにもヒミッゾに洗脳された住民が多いのですか?」

「ヒミッゾはこの街の住人を1人1人洗脳していったのです。」

パーラクトはうつむきながらゆっくり答えた。


「娼婦のふりをしたり、主婦のふりをしたり、若い娘のふりをしたり……色々な姿に変装してこの街の住人を3ケ月の間洗脳し続けて、ついにこの街の住人のほとんどを洗脳したのです。」


「我々はヒミッゾの洗脳をたまたま免れてここに集まりました。

物資が足りないときにはヒミッゾに洗脳されたフリが出来る者が買い出しに出かけます」


すると突然、女性の声がした。



「そして、今宵こよい、この街の住人全員がわたくしの奴隷になりますの!」

声を出したのは女性のレジスタンスメンバーだった。

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