第1章 第12話 【恋の勘違い三段活用】を使用する!

問題の川岸の巣は【アベル商店の掃除機】がほとんど吸い込んであらかた片付いた。


僕はトリカブトの細かい木をゴミ箱に入れてデッキブラシを使って川岸や川の中の石のトリカブトの毒を擦って浄化にして、消臭スプレーで匂いを消した。


「うわぁーきれい……」

何故か美咲が一番乗りでやってきて感嘆の言葉を口から出した。


次にアルレシアがやってきて彼女は突然、僕の手を取った。

「あの・・・あなたのお名前を聞いてもいいでしょうか?」

僕は間髪入れずに「高橋一郎です」と答え、僕も彼女の手を取った。

アルレシアは話を続けた。

「高橋さん……?イチルウさん……?どちらで呼べば……」

「一郎とお呼びください」

「じゃあ、イチルウさん……イチルウさんのおかげで川が綺麗になりました。森の守護者の一員としてお礼申し上げます」

「あなたは何とお呼びすればよろしいでしょうか?……アルレシアさん」

「親しい者たちは私を【アリー】と呼びます」

「では、アリー……では僕の事はさんをつけずに【一郎】と呼んでください」


これは勘違いかもしれない。

多分勘違いだろう……

イヤ、勘違いでも構わない!


僕は恋の初心者の特権で【恋の勘違い三段活用】を使用する!

アルレシア……いや、アリーは僕に恋してる!間違いない!


だって僕の手を握ったんだよっ!女の子がっ!

親しい人にしか教えない呼び名を教えてくれたんだよっ!女の子がっっ!!


僕の止まっていたはずの恋心の時計が動き出した!秒針がチクタク……長針も少し動いてる!短針は動きが遅すぎて動いてるかどうかはわからない。

思い返せば中学生の頃に同級生の女の子に告白してはフラれてから恋を諦めて生きてきて2年。

ついにっ!この僕にっ!恋のっ!季節がっ!やっ!てっ!きたっ!


「アリ―、僕と二人でこの森の平和を守ろう。僕は出来得る限りのことはするよ……」

僕は両手でアリーの手を握りながら言うと、アリーは嬉しそうに答えた。

「イチルウは私たちと共に魔物と戦ってくれるんですね!嬉しい!」


……あ、そっか……まだ魔物の巣を除去して水源を綺麗にしただけでその発生源である魔物がいなくならないとまた汚れるのか……


恋に浮かれていた僕は現実に引き戻された。


……でも、戦うのは健太たちだし関係ないか……


「ごめんアリー、僕は戦士じゃなくて掃除屋なので……戦うことは出来ないんだ。戦いの後の掃除なら頑張るよ」

僕がそう言うとアリーは僕の手の甲をアリー自身のほほに当ててから目を瞑り祈るように言った。

「うん。私がイチルウの分まで戦ってくるから帰って来るように祈っててね」


……生きて?

……そんなに命がけなの?!


アリ―は続けて言った

「お父さんもお母さんもお姉ちゃんも魔物に殺されて……次は私かな?なんてね……」


僕は思った以上にヤバイ場所にいる事に気づいた瞬間、背中に激痛が走った。

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