第4章 第56話 朝が来た

一郎いぃちろぉ、そぉろそぉろ起ぉきろぉ」

雄一に起こされた。


どうやら朝が来たらしいのでテントを出ると、起きたばかりの僕にはまぶしすぎる朝日の光が、僕の目を刺すかのごとく力強い光を注いでくる。


「う~ん、まぶしぃ」


僕が寝ぼけて言ってるとアリーがタオルを差し出してくれながら

「イチルウおはよう、顔洗ったら?」

と言うので2つある銅製の鍋のうち小さいほうの鍋に入ってる水を手ですくい顔を洗う。


ちなみに2つ鍋には雄一の魔法【湧水ガッシュフォースウォーター】が掛かっていて、雄一が魔法を解くまでまで鍋から溢れない程度に水が湧き続ける。

大きい鍋は飲み水用だ。


僕は大きい鍋にある柄杓ひしゃくで自分用のコップに水を汲み、コップを口に付けて水を飲む。


「プハー生き返る」


夜にまったく水を飲まないで乾いてた喉に、久しぶりのうるおいを流し込むと僕の体は少しだけ喜びにあふれていた。


そして1日1食しかない携帯食を食べる時間が来た。

みんな不味い不味い言いながら残さず食べる。


「はぁ~……ミレイちゃんが作ってくれるご飯が食べたいよ~」

美咲が憂鬱な顔で言う。


「言うなよ美咲、俺まで食べたくなるだろ?」

健太も憂鬱な顔で言った。


美咲の発言にみんな憂鬱な顔をするところにルナが申し訳なさそうに

「みんな、すまないのじゃ……私のわがままに付き合ってもらって……」

と謝罪をした。


「いえ、佐藤さまも山田さまも覚悟が足りません!」

ラポーナさんが凛々しい顔で叫ぶと、みんなキョトンという顔をして驚いて動きを止めた。


「みなさんはクラスメイトの皆さんと一緒に元の世界に帰りたいのでしょ?

だったら、魔王四天王のモシスウントを放っておくわけにはいかないでしょ?

私にとっても魔王退治は王命であり達成しなければならない使命です!

そして、ルナさんはリビュードラを取り返さなければならない!

私たちは全員、目的は違えどモシスウント討伐という使命が同じ仲間じゃないですか!

その仲間に嫌味いやみを言うようなことはやめましょう!」


「ゴメン、ルナ、俺が悪かったよ」

「ルナちゃんごめんなさい、そんなつもりで言ったんじゃないの……許して……」

ラポーナさんの言葉を聞いた健太と美咲はルナに謝罪した。


「私にとっては皆はこれから恩人になる人じゃ、感謝をすれど責め立てるつもりは少しもないのじゃ」

ルナは2人を許した。


「さあ皆さん!リビュードラを取り戻しに出発しますよ!早く片付けて出発準備をしてください!」

ラポーナさんが僕たちにカツを入れた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る