第3章 第48話 ヒミッゾの最後を見届ける

僕たちが扉から出ると廊下は人だかりで、ヒミッゾは沢山の人に囲まれていた。

「よくもだましてくれたな!」

「チクショー!金と時間を返せ!」

「この女悪魔!やってくれたな!」

「お前の言いなりなんてまっぴらだ!」


ヒミッゾに魅了されてた人達が、夢から覚めてヒミッゾを攻め立てている。


「我はユゲノラ王国宮廷魔術師補佐のラポーナ=ブルノジーである!

王命により魔王討伐をするために旅を続けている!

さあ【魔王ザルド・ダークネス】四天王ヒミッゾ!

話を聞かせてもらうぞ!」


ラポーナさんが凛々しく叫ぶと人々は僕らに道を開けてくれて、僕らが通る途中にヒミッゾを囲う人の中に僕たちの学校の制服を着ている人がいた。


「あ、健太!健太じゃないか?!」

「ああ、西村!無事だったのか!よかった!」


クラスメイト西村大輔が健太と久しぶりの再会に喜びあった。


「一郎くんはこっちです!」

僕も喜び合いに混ざりたかったけどラポーナさんに引っ張られてヒミッゾの前まで来た。


「さあ、ヒミッゾ!いい加減観念して【魔王ザルド・ダークネス】の居場所を話しなさい!」


「ユゲノラ王国宮廷魔術師補佐のラポーナ=ブルノジー……やられましたわ……これは全部あなたのシナリオですの?」


「あなたがザルドの居場所を答えたらこのシナリオは完成します」


ラポーナさんの答えを聞いて、ヒミッゾは口で笑ったが目が座ってた。


……何か不気味な……何を考えてるんだ?





……僕は悪い予感がした……


「フフフ……ラポーナ……あなたのシナリオは未完成で終わるわ……」

「モシスウント!【魔王ザルド・ダークネス】様の為におやりなさい!」

ヒミッゾは目を座らせたまま笑顔で叫んだ。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!


その瞬間、地震かと思うほどの揺れに倒れる人もいて、僕たちも立つのがやっとの状況で……僕たちは信じられない光景を見た。


廊下から巨大なドリル出てきたと思ったらそのドリルはヒミッゾの体をつらぬき、ヒミッゾはみじんに……バラバラになった。


「ヒミッゾは魔王様の為に忠義を貫いた。

我が名はモシスウント。

【魔王ザルド・ダークネス】様の四天王の一人。

ぬしらをほふる者だ」


ドリルが床から出てきてドリルの下に顔があり手足の末端が全部ドリルな魔人があらわれた。


……最後の四天王……頭、手、足の末端がドリルの魔人、モシスウント……


僕はその異様な姿に少し緊張していた。


モシスウントと名乗る全身ドリルの魔人が空けた穴から全身鎧のような赤っぽいピンク色の殻をまとった奴がゾロゾロとやってきて、人々を襲った。


……なんだ?エビをモデルにした変身ヒーローのような赤っぽいピンク色の奴は?……


ラポーナさんが全員に忠告する。

「あの薔薇色ばらいろの甲冑を着てるような人種はは甲殻人クラストマンと言ってとても硬い殻におおわれてるので注意してください!」


甲殻人はその硬い殻で人々を殴る蹴るで、人々は阿鼻叫喚あびきょうかんで逃げまどうが、甲殻人はお構いなく暴力を振るう。


やがて甲殻人が西村を見つけるとさらわれる!


カンカンカンッ!


健太が剣と盾を出し甲殻人と戦うも、多勢たぜい無勢ぶぜいで健太が負けることはないとしても、結果として西村を取り戻すことも出来なかった。


ドドドーンッ!


雄一が魔法【炎弾連射】で対抗するもビクともしない。


カッカッカッ!


美咲も短剣で戦うも甲殻人の殻に刺さらないので話にならない。


久しぶりに会ったクラスメイトの西村大輔はあっと言う間に5、6人の甲殻人に連れていかれてしまう……


僕はセルリアンブルーに輝くコードレス掃除機のダイヤルを【魔】に合わせてスイッチを押して叫んだ。

「【アベル商店の掃除機】よ!赤い殻をまとった奴らとモシスウントの魔力を吸いあげろ!」


………………


……あれ?何も起きないぞ???……


「ラポーナさん!あいつらって魔力ありますか?」

ラポーナさんに質問すると困った顔で

「一郎くん、聞いてください……彼らには……魔力は……ないですね」


……魔力がないなら魔力を吸うことは出来ない……当たり前だけど、僕はに落ちないよ……魔力の無い魔人って……


僕は愚痴をブツブツ言っていた。


「ユゲノラ王国宮廷魔術師補佐のラポーナ=ブルノジーよ、さらばだ!この異世界人はいただいてくぞ!」

モシスウントはそう言うと自分が空けた穴から撤退した。





魔王の居場所を知るヒミッゾには秘密を守ったまま死なれ、クラスメイトの西村大輔は甲殻人に連れ去られ、西村をさらったモシスウントには全く歯が立たなかった……


……僕たちはソードアの街を解放した以外負けに等しい戦果だった……



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