第4章 第52話 ルナの告白

「さてそろそろ締めのうどんと行きましょうか?」

鍋奉行の美咲が鍋の具材が尽きたのを確認して鍋の締めをみんなに提案した。


みんなの同意を得て鍋の中にうどんが入れられると雄一がまた鍋に火をかける。

雄一が真剣な表情で火加減を調節する。今回は鍋がグツグツ言うほどに鍋の中のうどんを煮る。


さっき食べた具材を煮た時に出汁に浸み出したエキスがうどんに移りかぐわしい匂いが漂ってきて……そろそろ食べ頃だろうか?


「よーぅし、そろそろね」

鍋奉行がGoサインを出した。


美咲はさっきと同じ要領でうどんを深皿に盛ってさっきと同じく各人に配り、僕にもうどんを盛った深皿が来た。


……美味そう……


まずは出汁を飲む。

キャベツ草と鳥肉と猪肉から出汁にあふれた匂いが僕の鼻腔をくすぐり、しょっぱくて甘くて旨い出汁が舌の上を走り抜ける。


……これは美味うまいですわぁー……


うどんをはしつかんで口にもっていく。


……ズルズルズル……


そしてうどんをゴクリと飲み込む。この喉越のどごしこそが快楽と言っても過言ではない!


僕は少しの間、虚空をを見つめてこのうどんの旨味を!快楽を!楽しんでいた。


……?


僕のふとももの上で僕に甘えていたミレイと僕の隣にいたアリーが微妙な目線で僕を見ていた。

「あのう……イチルウ……言いにくいんだけど……食べるときに音を立てるのは良くないと思うの……」

「……ミレイもそう思うにゃ」


……異世界に日本の【麺を食べるときは音を立てる】と言う常識は通用しない……


僕は「はい、ごめんなさい」と謝ってうどんを音をたてないように食べた。






食事が終わり、僕は【掃除屋】の能力で雑巾を出して拭くと食器や調理道具がピカピカになった。

それらを片づけていると、ルナとラポーナさんが何やら話してるようなので聞き耳を立ててこっそり聞いてみた。


「ではルナさん、お話していただけますか?」

「私の暮らしていた集落、リビュードラが【魔王ザルド・ダークネス】の四天王の一人、手足頭がドリルの魔人のモシスウントと硬い殻におおわれてる甲殻人クラストマンに占領されたのじゃ……」

ルナが話をしてるとだんだん悲しげな表情に変わっていった。


「……逆らうものは殺され、無抵抗の者は奴隷にされて……

族長であった私の父は最後まで抵抗して……モシスウントに殺されたのじゃ」


降り注ぐような星が綺麗な夜空、僕が食器や調理器具を片付ける音以外に何一つ音が聞こえない静かな夜、ルナの悲しい告白に僕たちがルナの話を聞きっていると沈黙を破ったのはラポーナさんだった。


「ルナさん、私は魔王討伐の王命を受けて【魔王ザルド・ダークネス】とその配下を倒すための旅路たびじの途中です」


……宮廷魔術師補佐じゃなくて宮廷魔術師見習いでしょうに……


僕は心の中でツッコんでるとラポーナさんが凛々しい表情で話を続けた。

「四天王モシスウントも我々が倒すべき敵です。リビュードラまで案内していただければモシスウントを倒してリビュードラを取り戻して差し上げます」


「父の敵は私が討ちたいのじゃが……手伝っていただけるのか?」

「決まりですね。リビュードラまでの案内をお願いします」


ルナとラポーナさんは意見が一致した。

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