第1章 第16話 両手に花
僕たちを乗せたキャラバン隊は城内を目指して街へ向かっていた。
「ねえ、アリー、僕が掃除をしてピカピカにした居酒屋があって【アシカの髭亭】っていうんだけど今夜、一緒に行かない?」
「イチルウが連れて行ってくれるならどこでも!」
「アシカの髭亭は鶏肉の香草焼きが美味しいんです!その後、私とハニーは……楽しみです、うふふ……」
「宿は【大通り3番目の宿屋】に泊るといいよ、ここも僕がピカピカにしたんだ!」
「へー見てみたい!ピカピカな宿屋!」
「宿を取る必要はありません。城内に山田美咲さまとご一緒の部屋にアルレシアさんもお泊りになられると良いでしょう。
あ、ハニーが寂しいというなら私も一緒に寝て差し上げます。楽しみです、うふふ……」
僕は両手に花だった。
左側に誰にでも優しくまるで天使のようなまるで森の入口に咲くスミレのように可憐なエルフの美少女のアリー。
右側に標高1000メートル以上の高地に生息するハイランド種の食虫植物であるウツボカズラのように、他人に厳しいのに意中の男性に迫るときはあからさま甘えてくる肉食系キャリア女子魔術師のラポーナさん。
まるで軍人が捕虜を連行するみたいにガッチリ腕を組んでるので、僕の右腕と左腕には自由がない。
突然だが、アリ―が死んだ家族の話をしてくれた。
まだ亡くなったばかりでツライはずなのに、僕の為に笑顔で……
アリ―にとってはもう僕しかいない!僕がアリーを守ってアリーの人生に付き添ってあげるんだ!
僕は
ちなみに、僕の右側には暗黒のオーラを振りまく美人の女性が不穏過ぎて一刻も早く離れたかった。
「……ラポーナさんちょっと苦しいので離れてもらっていいですか?」
と僕が不機嫌そうに言うと喰い気味に言ってきた。
「嫌です!ひと時も離れたくありませんっ!私とハニーの愛を!愛を!愛を!もっともっと混じり合いたいのです!」
「僕は蜂蜜じゃないのでハニーと呼ぶのはやめてください。あと何言ってるのかが、まったくわからないけど離れてください」
僕とラポーナさんが下らない話をしてる間に城壁が見えてきた。
いつも通りに城門を通れば街に帰れる……ハズだった。
城門に近づいて行くにつれて異常な光景を目の当たりにした。
いつも城門前で通行証を確認して城内外の人の往来をチェックする門番。
この時間に街中に入り行商する商人。
毎日、城門の外に薬草や木の実を採取して帰ってきた貧しい少年少女。
様々な人たちが……血を流して倒れてる。
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