第1章 第13話 初めての戦い

僕は背中に衝撃を受けた。

突然地面が近づいて来て目の前が真っ暗になって、背中全体が熱い。


やがてその熱さは痛みを伴ってきて……あまりの激痛に叫んだ。

あと、背中に何かおもりが置いてあるみたいに重くて内臓が潰れそうだ。


「イチルウッ!……ああ、どうすれば……」

アリ―が狼狽うろたえながらあとずさりして行くが、しばらくして落ち着きを取り戻し矢を取り弓を構えて叫んだ。

「魔物よっ!イチルウから離れなさいっ!」


僕の背中にあるおもりの正体はどうやら魔物らしく、僕は絶体絶命のピンチだった……でも僕には……


僕が目を開けると目の前に【アベル商店の掃除機】があり、すでに手にしていた。僕はダイヤルを回すと【魔】とディスプレイに表示されたのを確認したらスイッチを押した。


ゴォオオオオオオッ!


【アベル商店の掃除機】が唸りを上げて空高く舞い上がると、そのセルリアンブルーに輝くのコードレス掃除機が魔物に目掛けて一直線に落ちてくる。


魔物は踏みつけている僕を地面に置き去りにして【アベル商店の掃除機】にとびかかった。


そのとがった牙で噛み、鋭い爪でき、重い体躯で体当たりをしたが、セルリアンブルーに輝くコードレス掃除機【アベル商店の掃除機】は傷がつくどころか、さらに輝きを増し、すきをついて【アベル商店の掃除機】の吸込口すいこみぐちがピタリと、まるでたこの吸盤のように吸い付いた。


今まで踏みつけていた魔物がいなくなって自由になった僕は、背中の傷の激痛をこらえながら立ち上がって、【アベル商店の掃除機】の吸込口エアーヘッド轟音ごうおんを響かせながら魔物に吸い付いてる様子を見つめてる。


まず、魔物は前の世界では見たことがないほど大型の狼だった。


だが、段々小さくなっていった。


ゴォオオオオオオッ!


狼型の魔物は暴れているがセルリアンブルーに輝くコードレス掃除機が離れることはなく、どんどん小さくなりやがて小鳥くらいの大きさになり干からびた姿となった。


なんだか子供の頃に食べたポキッと折ってチューチュー吸う氷菓子アイスを思い出す……吸えば吸うほど小さくなっていき最後はシワシワの姿になるところがソックリだ。


「イチルウッ!生きてますか?!」

アリ―が駆け寄って来たが右手を伸ばして制した。


まるで刀を腰に差す武士のように左手で【アベル商店の掃除機】を左腰にえる。右手でダイヤルを回すと【傷】とディスプレイに表示されるとスイッチを入れた。


グゥィイイイイインッ!


【アベル商店の掃除機】が背中の傷を吸い込んだようだ。

僕からは背中は見えないのでよくわからないけど、背中の激痛や熱がなんとなく無くなった気がするので多分治ってると思う。


「イチルウッ!良かった!良かった!!」

アリ―は泣きながら抱き着いてきた。

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