第2章 第32話 旧友と再会

こうしてコウモリ魔人と僕らが勝手に呼んでいたトールス・ドイムは倒して、儀式の為に鎖につながれていたクラスメート5人を解放した。


「山田さーん」

「加藤さーん」

二人は抱き合って泣いていた。


こんな暗い地下で鎖につながれてコウモリの顔をしたおじさんが妙な儀式をして大きな狼を人に襲わせるところを見たら、こんなの怖いに決まってる。


僕が彼女たちの立場でも泣くと思う……ただ、美咲の方は加藤さんに合わせて安心させるために泣いたような気もする。

山田美咲一世一代の名演技だ。


救った五人、健太、雄一、美咲は最初から一緒にいた仲間だから暗い地下でも見間違う事はないけど、加藤愛さんはちょっとわからなかった。


もっとわからないのは僕が元にいた学校の制服を着た男子生徒。


……この人だれだろう?


「いよぉーぅ!智人とぉもひとぉではぁないかぁ!元気げぇんきだぁったかぁ?」

雄一は智人くんと仲が良いらしい。


智人……そうか、田中、田中智人くん……そういえば……クラスにいた……思い出した


「やあ、中村……なんでそんな変な話し方なんだ?」

わぁれ魔術師まぁじゅつしぃ師匠しぃしょぉう魔術まぁじゅつぅをはぁじめぃ、あぁらゆるぅことをぉおそわぁったぁ!こぉのはぁなしぃかぁたもぉそのぉひぃとぉつだぁ!」


健太が田中くんに話しかけた。

「田中くん、俺たち4人は王都に召喚され、戦いの訓練を受けて宮廷魔術師補佐のラポーナさんに導かれて、ここまで来たんだ」

「佐藤君はどんな職業ジョブなんだい?」

「俺は剣士、雄一は魔術師、美咲は盗賊、一郎が掃除屋」

「……掃除屋?」

「そう、掃除屋の一郎がほとんどの魔物を退治してるんだ

さっきも水色の掃除機で魔狼やトールスの魔力を吸い込んで倒したんだ!

一番凄いのは一郎だよ」


……健太ありがとう……


「アベェルゥ商店しょぉうてんのぉ掃除機そぉうじきぃよぉ!!魔狼まろぉう魔力まぁりょくぅすぅべぇてぇすぅえっ!!」

健太が田中くんに色々説明してるところで雄一が僕を茶化した

「雄一!僕はそんなねちっこい言い方しないぞ!

もっとシュッとした言い方するよ!」


雄一がこの場をなごましてくれた。


田中くんは雄一の言い方にクスッと笑ったが、やがて顔色を暗くして静かに話し始めた。

「……トールスの話ではヒミッゾという美しい女性の悪魔が支配してるソードアという街があるらしい……

その街には異世界人が沢山いてカーフスタンに捕らえられてる異世界人一人をデラダイムに連れてきたら、次はソードアから異世界人を連れてくる……って」


魔王四天王が言う異世界人とは僕たち、もしくは僕たちのクラスメイトの事だ。


田中くんは絶望的な顔をして続けて言った。

「オレは……何も……できない……から……ゴメン……」


「魔王討伐は私の仕事です。田中さまはご心配なく」

ラポーナさんが優しくなぐさめた。


「田中さまは何も知らない、訓練もしない中で、魔王四天王に捕らえられて不自由な生活をいられていたのです。

何もできないとしても恥じることはありません」


「そぉうだぁ智人ともぉひとぉ魔王討伐まおぉうとぉうばぁつわぁれらの使命しめぇい!あぁとはぁまぁかせてぇゆっくりぃやすぅんでいろぅ!」

雄一が言ったら田中くんは泣きだした。


……加藤さんも田中さんも怖かったに違いない!

……まだ見つけていないクラスメイト達もきっと怖い目に合ってるだろう!

……僕たちの使命は尊い!

……クラスメイトのみんなを救い魔王を退治する!


僕たちはさらに固い決意を固めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る