第2章 第29話 獣人の少女と出会う

そこにいたのはコウモリ魔人だった。


僕はすぐさま準備万全だった【アベル商店の掃除機】のスイッチを入れて突撃した。


「一郎くん、そのコウモリ魔人はレベル23です!気を付けてください!」

ラポーナさんが情報をくれた。


……そうは言われてもやることは一つ!


「【アベル商店の掃除機】よ!コウモリ魔人の魔力を吸え!」

僕はセルリアンブルーに輝くコードレス掃除機をコウモリ魔人に突き立てた!


ゴォオオオオオオッ!


……と思ったらコウモリ魔人は消えていた


コウモリ魔人を見失った僕はアタフタと周りを見回してると美咲が

「上よ!」

と指示してくれたのでコードレス掃除機を上に向けた。


ゴォオオオオオオッ!


コウモリ魔人は華麗に飛び回り僕のコードレス掃除機をけて行く。

コウモリというよりもネコ科のような動きに少し困惑しているが、見た目はコウモリ中身はネコ科なのかもしれないので気にしないことにした。


コウモリ魔人がいくら華麗に避けたとしても狭い部屋の中、しかも僕は奥の手【ターボボタン】を押した。


ブォオオオオオオオンンッ!!


【アベル商店の掃除機】は轟音を響かせてしなやかな動きをするコウモリ魔人をお尻の方から吸い込んだ。


一度吸いついたら離さない僕のセルリアンブルーに輝くコードレス掃除機はコウモリ魔人の魔力を吸い尽くすとその正体が明らかになった。


「にゃー!なにゃをするにゃー!私のお尻からこいつを離すにゃー!」

猫の耳、猫のしっぽがついた少女。獣人の少女だった。


僕はコードレス掃除機のスイッチを切り、【アベル商店の掃除機】はその姿を消した。


「私はユゲノラ王国宮廷魔術師補佐のラポーナ=ブルノジーである!獣人の少女よ何故なにゆえコウモリ魔人に変装していたか答えよ」

「知らにゃいにゃ、ミレイもトールスに捕まってここに閉じ込められたにゃ」


獣人の少女【ミレイ・ファング】が言うにはコウモリ魔人は【トールス・ドイム】と言うらしく、僕たちはようやく敵の名前を知ることが出来た。


……今までコウモリ魔人と呼んでたからトールスと名前で呼ぶのは違和感があるなぁ……

今まであだ名で呼んでたけど、いざ本名を聞くと違和感が半端ない……そんな感じ


とりあえず、健太、雄一、美咲は他に部屋がないか探しに行き、僕とアリーとラポーナさんは獣人の少女ミレイに話を聞くことにした。


「ミレイさん、こんな奇妙な服を着た人を見たことがありませんか?」

ラポーナさんが珍しく丁寧にたずねる

「知らないにゃ、そんなおんにゃ見たことないにゃ」


……ん?ラポーナさんは【奇妙な服を着た人】とたずねたのにミレイは【女】と答えたぞ?

こいつ、このままだと答えないつもりだな?


僕はミレイが答えを言うようにするために勝負に出た。


「ミレイ、僕と勝負しよう」

「にゃ?ミレイは負けたことがにゃいんだけど……いいのかにゃ?」

「僕はこの世界でNo.1の掃除屋だ。この世の中で僕よりキレイに出来る人間はいない」

「ほう……それでにゃにするにゃ?」

「ミレイがここに閉じ込められて何日経過なんにちけいかしたかは知らないけど髪の毛がほこりっぽいだろ?」

「そうだにゃ」

「僕がミレイの髪の毛をキレイにしてあげよう。それでミレイが声を上げたら僕の勝ち、声を出さなかったらミレイの勝ち」

「これでどう?」

「わかったにゃ、受けて立つにゃ」


僕はミレイと髪の毛が綺麗に出来るかどうか勝負することになった。

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