第2章 第30話 vsミレイ・ファング

僕はミレイの後ろに回り、右手に雑巾を出した。


僕がミレイの髪の毛を雑巾でサッとなぞると、まるで美容院でシャンプーをしてもらったくらいに美しく艶やか髪に仕上がった。


僕の【掃除屋】のスキルは掃除道具を自由自在に出してその道具でなぞるだけで世界一ピカピカに出来ることだ!

髪の毛だって例外じゃない!!


ただ、雑巾で髪の毛を拭くという行為には若干の抵抗はあったが、仕方がない……


ラポーナさんの手鏡でミレイが自分の髪を確認すると……


「にゃー!にゃんてキレイな髪なんにゃ!」


……僕は勝った


「さあ、ミレイ、僕の勝ちだ!

この地下道の事やトールス・ドイムの事を話してもらうぞ!」

「何でもするにゃ、ご主人様」


……???

……何でもする?いやトールスの情報が聞ければ良いだけなんだけど


「いや、こっちの欲しい情報を話してくれるだけでいいんだ」

「何でもするにゃ、ご主人様」

「じゃあ答えてくれ、まずはこの服を着た人の事を……」

ラポーナさんが持ってる制服の絵を見せたら、ミレイは即答そくとうした。

「トールスが儀式をするって連れってたにゃ」


……儀式って何だろう?


「次にトールスがくわだててる儀式について教えてくれ」

「何をやるのかは知らないにゃ、ただ儀式の部屋は知ってるにゃ」

「ミレイ、ありがとう

ラポーナさん、アリー、儀式の部屋に行って助けにいこう」


2人は小さく頷き、僕たちはミレイの案内で儀式の部屋へと向かった。




……ただミレイがやたら僕にくっついて来るのは歩きにくくてしょうがない……


「ねえミレイ……そんなにくっつくと歩きにくいから、少し離れてくれないか?」

「ミ、ミレイは怖いにゃ!ご主人様から離れたら怖いから、離れないにゃ!」

ミレイは特に怖い様子を見せないまま僕にくっついてる。


……こいつ、僕にくっつきたいだけだろう……なんでだ?


チョット邪魔だなぁ……と思ったその時

「きゃあ、一郎くん!何かが!何かがっ!!」

と棒読みで僕にしがみついてきたラポーナさん……


……いや、ホント勘弁して欲しい!歩きにくさが倍増してしまった……


「イチルウ、少しつかまっていいですか?」


アリ―!君もか!


……でもアリ―ならいいか、服をつかんでるだけだし……


こうして僕たちは団子状態で儀式の部屋を捜索することになった。




明かりがあるとは言え見知らぬ暗い道を歩くのは肉体的にも精神的にも疲れる。

しかも、アリーもラポーナさんもミレイも僕にピッタリくっついて歩くもんだから、歩きにくいやら疲れるやら……


「ご主人様、トールスが儀式をしていた部屋はここにゃ」

疲弊した精神が少しだけ回復する言葉をミレイが言ってくれたその時、ラポーナさんが助言した。

「皆さん、今は盗賊の山田さまがいらっしゃいませんので、扉を静かに開くことは出来ません。

戦闘準備をして、出来ればトールスに奇襲を掛けてください」


僕は【アベル商店の掃除機】を手にしてダイヤルを【魔】に合わせ、アリーは弓と矢を準備して、ミレイは特に何もなく、ラポーナさんは杖を片手に扉を勢い良く開いた。

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