第4章 第50話 ルナ・ドラコニア

「たのもう!私よりも強い者を探しているのじゃ、お手合わせ願いたい!」


日が落ちたばかりの夜の外から勇ましい女性の声が聞こえると、僕を含めた馬車に乗っていた雄一を除いた全員が御者の席に乗り出して声の主を見た。

「噂の腕試し竜人族だ」


槍を持ち鎧を着た竜の角と羽としっぽを生やした美女がそこにいた。

「たのもう!私よりも強い者を探しているのじゃ、お手合わせ願いたい!」

槍を持った竜人族の女性は、さっきより小さい声で同じことを2度言った。


竜人族の美女から目を離さずにラポーナさんが言い放った。

「我はユゲノラ王国宮廷魔術師補佐のラポーナ=ブルノジーである!

我らは王命により魔王討伐の為に王国内を巡回している!

竜人族の娘よ!名を名乗り、何故なにゆえ街道で腕試しなどしているのか……

答えよ!」


「丁寧な自己紹介に感謝するのじゃ。

私は竜人族の集落リビュードラの族長の娘、名をルナ・ドラコニアと申すの者じゃ」


ルナと名乗った竜人族の女性は続けて言った。


「わが故郷ふるさとリビュードラが魔人どもに奪われてしまったので取り戻すために協力してもらえる強者つわものを集めてるのじゃ……」

「……お手合わせ願おう」


僕たちは馬車の中で顔を見合わせているとラポーナさんが

「佐藤さま、お願いします」

と言って健太にルナと手合わせするようにうながすと健太はまだ少し眠いのかあくびをしながら馬車を降りた。


「オレの名前は佐藤 健太、職業は剣士」

健太の体にはいつの間にか鎧がまとい右手に剣左手に盾を持っていた。

僕と一緒に異世界から来た健太は職業剣士として鎧と剣と盾を自由自在に呼び出し、普段は消すことができて必要な時には一瞬で装着できる。


「一瞬で武具防具を装着できるとは……かなりの腕前と見た……では参るのじゃ!」

ルナは槍を構え健太に突撃した。


「喰らえ!竜撃槍ドラゴニックランス!!」


目にもとまらぬ速さでルナの槍が健太を貫いたと思ったら、健太は半歩体を引いて盾で槍をらしバランスが崩れたルナの胴体に剣を振るった。


「剣士三段突き!」


健太の剣撃が3つに見えてそのどれもがルナに当たったように見えたが、ルナもひらりとかわして距離を取り槍使いの間合いにまで、ルナは健太から離れる。


「双方そこまで!ルナさん、佐藤さまの腕前はこれで分かったでしょう!」

ラポーナが大きな声で言うとルナも大きな声で答えた。

承知しょうち、佐藤健太殿の腕前は確かなものじゃ……で、他の方々の腕前も知っておきたいのじゃが……」


「では次は私が」

ラポーナさんがそう言って馬車を降りて、持っていた杖をルナに向けるとルナの周りが炎に包まれた。


槍を使った接近戦では相当の腕前のルナも突然炎に囲まれて焦りの表情を隠せない。

ルナが周りをよく見ながら突破口が無いか探していると炎は突然消えた。


まるで最初から炎が無かったかのように……


ルナはキョトンとした顔をしているとラポーナさんが

「これが私の魔術のほんの一部です……お分かりいただけたでしょうか?」

とドヤ顔で言った。


「承知、あとおひとりだけ腕を見せていただきたい」

ルナは少し打ち解けて言った。


……僕は次は誰が出るべきか考えた……


雄一は昼に馬車の御者をするので夜は寝ている……寝たばかりで起こすのは可哀想

美咲は盗賊としてのスキルは色々あるけどルナが見たいのは直接の戦闘技術だろうから、美咲は違うだろう

同じ意味でミレイも違うだろう

アリーの弓の腕前は見事だけど槍と弓が交えたら怪我をしそうで怖い


……僕が出るしかないか……


僕は一歩前に出て

「次は僕がお相手しましょう」


と言うと、ルナが僕に尋ねた。

「そちらの御仁の職業は?」


「僕の名前は高橋一郎、職業は掃除屋です」


「掃除屋……どうやって戦うのじゃ?」


「【アベル商店の掃除機】よ、でよ!」

僕はセルリアンブルーに輝くコードレス掃除機を呼び出した。

「僕はこのコードレス掃除機で戦います」


ルナは驚いたが冷ややかな微笑を浮かべて

「その得物えものでは短くて私の槍にはかなわんぞ!」


僕はセルリアンブルーに輝くコードレス掃除機を構えて

「僕は不意打ち以外では絶対に負けません、いつでもどうぞ」


「では高橋殿!始めるのじゃ!」

と言うと槍を構えて僕に突撃してきた。


僕は【アベル商店の掃除機】のダイヤルを【せい】に回してスイッチを入れる。


ゴォオオオオオオッ!


僕が持っている【アベル商店の掃除機】が轟音を鳴り響かせると、槍を構えて向かってきてるルナは突然倒れて眠った。

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