第2章 第24話 アリーと話す

扉を開けてみたら、もぬけの殻だった。


コウモリの魔人が魔狼を連れてどこかに行ったと言ってたので当然と言えば当然なのだが机、イス、本棚などは残っていたが、本棚に本はなく机の上にも何もない。


「もぬけの殻ね」

美咲がつぶやいた。


「なんか不気味……」

アリーは不安そうに言うと僕に左腕に抱き着いてきた。


「本棚に本がない……机の上に何もない……これは不気味ですね……」

ラポーナさんもアリーに続けて僕の右腕に抱き着いてきた。

僕はまたもや両手が不自由になった。


健太は本棚を探しまわってる。

僕は両手が塞がってあまり動けない。


雄一は机の引き出しを調べてる。

ラポーナさんがつまづいて、右腕に抱き着かれてる僕と僕の左腕に抱き着いてるアリーも一緒に仲良く3人で転んだ。


僕とアリーとラポーナさんは連結してる。

誰かが転べば3人一緒に転ぶ、一蓮托生だ。


美咲は窓枠などの机と本棚以外のところを見ている。

すると美咲が声を上げた。

「なんだろうこの紙……」


美咲は窓の隙間に紙が挟まってるのを見つけた。

しかし、紙は窓の厚さに合わせた大きさに切られていて、見つけるのは不可能な挟まり方をしていた。


どうやって見つけたのだろうか?


「美咲ぃ~……さぁては盗賊スキィルを使用したぁなぁ?」

「あったりぃ~……どう?盗賊スキル【素材感知】は便利でしょ?」

「【素材感知】……とぉわ?素材そぉざあいを調べてどぉうするのだぁ?」

「その場所にあるのは珍しいというか……普通はそこにはありえない素材があったらそこには何かある……これが私の師匠の教え。

窓枠に紙があるのはおかしいでしょ?それで分かったの!」


雄一と美咲がそんな会話をしていると、美咲が持ってる紙を見て、怪訝けげんそうな表情でラポーナさんが言った。


「この紙には……何が書いてあるのですか?文字……いや文字というには不規則な……」

僕も謎の文字を読んでみようとのぞいてみると……


そこには日本語が書いてあった。


「デラダイムに連れていかれるらしい 加藤愛」


美咲がその日本語を読み、続けてつぶやいた。

「加藤さんがここにいたんだ……一人で寂しかったろうに……」


僕たちは4人で、しかも王都で沢山の人々にお世話になってここまで来ている。

加藤さんに比べると恵まれているに違いない。


「山田さま!この文章の文字は5文字目までは単調たんちょうですがそれ以降は複雑ふくざつで最後の3文字が煩雑はんざつなのは何故なのですか?!」

ラポーナさんは早口で美咲に聞いていた。

「この文章は……この言語は……とても不思議です!

これが山田さまの元の世界の言語なのですね!

これは興味深い!

是非ご教授ください!」


「いやそんなの説明できないよう!」

美咲はラポーナさんから逃げ出した。


僕はそんな二人を見るのをやめて、

アリーと二人で窓の外の庭を眺めながら、


あの花は何だろう?

あの草は薬草なのか毒なのか?

この庭に小動物が遊びに来るのか?

虫とかいたらヤダねーみたいなこと話してイチャイチャしてた。


健太と雄一は相変わらず机と本棚を探してたが、ラポーナさんと美咲が追いかけっこしてるのに気づいて止めにはいり、ラポーナさんが落ち着いたころに今後の方針を決めた。


「とりあえずデラダイムへ行きましょう」

ラポーナさんはどこかを指差して言った。

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