第1章 第8話 手に入れる

僕はとりあえず元の位置に戻そうと石が置いてあった店の真ん中あたりまで戻ろうと振り返る。

「石を元の位置に戻せば何もなかったことになる」


僕のそんな甘い考えが頭をよぎった次の瞬間、石は光った。


最初は7色虹色に輝いていたが僕が店中をピカピカにしたせいで輝きはさらに増し、やがて真っ白になり、僕が見えるものすべてが白になった。


どのくらい時間がったのか?


一瞬とも長時間とも思える時間が過ぎ段々と元の景色が戻ってきて、石が光る前の状況に戻った。

ただし、僕が手に持ってるもの以外は……


僕が持っていた石はコードレス掃除機になっていた。


全体がセルリアンブルーに彩られた棒状の先端にTの字型をした吸引口、逆の先端には持ちやすい取手とってとスイッチ、真ん中よりも取手側にくっ付いてるのは吸引装置と思われる部品。


「どこをとってもセルリアンブルーのコードレス掃除機だ……」

石が掃除機になった事を認識した僕は途方に暮れた。


突然店が光ったのに驚いたクデーゲが慌てて奥からやってきて現状を見渡すと何とも言えない表情をしていた。


「……高橋さんっ!やっておしまいに……なられましたなっ!!」

クデーゲは複雑な感情を押し殺して、何とか言葉にする事が出来た。

注意したのに言う事を聞かなかった……怒り!

石が一瞬で謎の棒状に変化した…………驚き!

何が原因で変化したのか?……………好奇心!

この事件を町中が知ったら………………注目!

石の代金がパーになったら………………赤字!

クデーゲの頭は混乱していた。


頭が混乱してるクデーゲと途方に暮れてる僕はしばらくして1つの案を思いつく。


クデーゲは一旦店をしまい、戸締りをした後、僕とお城へ行った。


門番に「城内に入るには証がいる、見せよ」と言われたので、僕は門番に【城内職者の証】を見せるとスンナリと城内には入れた。


ラポーナの部屋を目指して歩いていたら、たまたまラポーナに出会えたので相談すると

「それを踏まえた上でこれからブリーフィングがありますので、ついて来てください」

と言われたのでついて行く。


やや広い会議室にラポーナ、クデーゲ、僕が到着すると佐藤健太、中村雄一、山田美咲の3人が先に部屋にいて、挨拶を適当に済ませてから健太から報告を始めた。

「俺は剣の師匠に剣術を教わり今レベル10だ」

健太が言うと美咲が続けて言う。

「私は盗賊の師匠に色々教えてもらいレベル8よ……でも、レベルには表せない色々なことを教えてもらったの」

雄一は少し演技を付けたような派手言い方で

わぁれ夕暮ゆぅうぐれぇれの魔術師まぁじゅつしぃユ・ウ・イ・チ!レヴェルは11だぁ!」

と言った。

たいしたことじゃないけど、たしか雄一の一人称は僕と同じく【僕】だったのに変わった。

話し方を変えたのも魔術だけではなく魔術師としての振舞い方も、魔術の師匠に教わったのだろうか?ただ、雄一が自己紹介したらラポーナさんが雄一を睨みつけてるように見えたのは気のせいだろうか?


「ラポーナさんも雄一の【夕暮れの魔術師】みたいな二つ名があるんですか?」

とウッカリ聞いてしまった。


ラポーナは僕を睨みつけて言った。

「私にはそんなものはありません」

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