第1章 第7話 召喚後初のピンチ

僕は颯爽と街中を歩いていた。


居酒屋【アシカの髭亭】、宿屋【大通り3番目の宿屋】をピカピカにした僕はウキウキで次はどこを掃除しようか?


さっきの宿屋の掃除洗濯でレベルは11まで上がったみたいで、どうも同じことをしても段々レベルが上がりづらくなっていくみたいで、これからお皿やジョッキを洗ったところで大してレベルは上がらない。


そう思った僕はあるお店を掃除することを画策した。

今、目の前にある魔法具の店【アベル商店】

ここなら珍しい魔道具を掃除するだけでレベルアップが期待できそう。


そう思いながら僕は【アベル商店】の中に入っていった。


口ひげを生やした太っちょな中年男性が笑顔で口を開いた。

「いらっしゃい、アベル商店へようこそ……おや?新顔だね?私の名はクデーゲ、よろしくね」

「僕は客ではありません。掃除の営業に来ました」

「掃除?うちはそんなに汚れてないから必要ないよ」


僕はゆっくり窓の方を見て

「この近くの【大通り3番目の宿屋】に行って窓の外からチラリと覗き込んでみてください。ビックリするほどピカピカですから」


クデーゲは温和な表情から殺気が漂うにらみつける表情に一瞬で変わった。

「お客さん、お名前をお聞きしましょう」

「僕の名前は高橋一郎。異世界から来た掃除屋です」


クデーゲの顔は更に睨みつける表情に加えて険しくなった。

「……高橋さん、異世界人であることは他言無用と言われませんでしたか?」


……思い出した……


「そういえばラポーナさんがそんなことを言っていたような……」

僕が目をそらし、はぐらかせながらしどろもどろ言うと、クデーゲは続けて言った

「この店は国に懇意にさせていただいてるので異世界人の事については秘密に出来ますが、他所よそではそうはいきません」


「二度と異世界人であることを言いません!」

「今の言葉、お忘れなきよう」


僕はもう二度と異世界人であることを言わないことを誓った。

ラポーナさんに自分が異世界人であることを言わないように……そう言われていたのに浮かれて忘れてた……のは記憶から消そう。

たまたま だけど秘密は守れたのだから……


まあそれはそれとして、掃除の交渉をしよう。

「クデーゲさん、それはさておき掃除をさせてはもらえませんか?」

「そりゃ構いませんが・・・ただ、アレには触らないでください」

クデーゲは店の真ん中にある大きな緑色の宝石の原石のような石の塊を指さす。


クデーゲはすぐに振り返り店の奥へ引っ込み、僕は大きく頷くと掃除を始めた。

窓拭こうとすれば右手に雑巾が現れ、拭けばピカピカ、続けて机、床、イスなどピカピカに磨き上げる。


そして例の緑色の石の塊の


通っただけだったのに、僕はいつの間にか例の石を持っていた。

そしてクデーゲに言われたことを思い出していた。


「そりゃ構いませんが……ただ、アレには触らないでください」


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