第1章 第18話 ドミルガンと対峙する

【魔王ザルド・ダークネス】の四天王の一人、デュラハンのドミルガンが歩いてやってくる。

自分の首を右わきに抱えて左手で王様の髪を掴んで引きずって……


平和だったこの街に似つかわしくない人物が全くお呼びじゃないのにやってきた。


「我が名はドミルガン、異世界人を連れにやってきたが案外見つけるのが早くて助かった」

ドミルガンを名乗るデュラハンが口を開くとその魔のオーラが一帯をおおい、そのオーラを浴びたものは全ておそれおののき恐怖のあまり震えが止まらず喋ることも出来ず口を閉じる事さえできなかった。


ただ、健太、美咲、雄一、そして僕の異世界人4人は恐れることはなかった。

それどころか、この平和な街を破壊したことにいきどおり、その感情が気力に変化して勇気が湧いてきた。


「絶対にアイツを倒すぞ!」

健太が叫んだ!僕たち残りの3人が声を合わせて「オーッ!」と応えて突撃しようとしたところ


「おまちください 皆さま方!まだドミルガンが話してる最中です!最後まで話を聞きましょう」

とラポーナさんが叫んで僕たち4人を制し僕たちは突撃を止めた。


僕は「いや、なんで止めるんですか?」と心の中でつぶやいた。

他の3人も同じ思いだろう……


ラポーナさんは僕らの事は無視して、凛々しい顔つきでドミルガンに叫ぶように語りかけた。

「【魔王ザルド・ダークネス】の四天王の一人!デュラハンのドミルガンよっ!われはユゲノラ王国宮廷魔術師補佐、名はラポーナ=ブルノジー!」

其方そなたの左手にある我が国王を手放して、こちらに引き渡してほしい!」


「ラポーナ……なるほど、ラポーナか……」

ドミルガンは少しの間だけ鼻で笑った。

「ラポーナ……貴様が宮廷魔術師とはなぁ……言いたいことは山ほどあるが、まあいいだろう」

ドミルガンはラポーナさんを笑いながら睨みつけ、続けて口を開いた。

「いいだろう、オレの左手にある王冠を被ったゴミは貴様にくれてやる、ただし!」

「ラポーナ!異世界人は渡してもらうぞ!」


ラポーナさんが引き続き凛々しい顔でドミルガンを圧倒するように言い返す。

「いいえ、ドミルガン!今すぐ国王を離してこちらに引き渡しなさい!

さもなくば、私は異世界人4人を引き連れて、お前以外の四天王の土地に移動します!」

「さあ!早く!国王をこちらに引き渡しなさい!」


ドミルガンの顔は黒いヘルムに隠れて表情は見えないがきっとおこってるだろう。

首を抱えてる右腕全体がいかりで震えてる……

「……よし分かった。だが、おまえと異世界人4人が私に近づくのが条件だ」

魔のオーラを大量に放出しながらドミルガンは言った。


「わかったわ」

ラポーナさんは小さくうなづきながら言うとすぐに振り返り、僕ら4人を見て「私について来て」と小さく言った。


僕ら5人はドミルガンにゆっくり歩いて近づいていき、ラポーナさんとドミルガンの距離が約5メートルくらいでラポーナさんの足が止まった。


改めて近くで見てみるとドミルガンと呼ばれる巨大なデュラハンは4メールから5メートルくらいあるんじゃないか?

余りに巨大な体躯たいくにラポーナさん以外の僕ら4人は圧倒されていた。


ドミルガンが左手から国王を離したらゴトッという音と共に国王が地面に叩きつけられ、右腕に抱えていた頭は部下と思われる魔人の掌の上に大切そうに載せた。


ドミルガンの部下と思われる魔人の姿は、頭がカエルそのもので、体は人型、タキシードを着こなして執事のような印象だった。


両手ががら空きになったドミルガンは異世界人と呼ばれてる僕たち4人のなかで健太をつかもうと手を伸ばして、ドミルガンの人差し指が健太の胴回りに届こうとしたその時!


カキーン!


健太が剣でドミルガンの巨大な指を弾き飛ばした。

「僕たちは魔王を倒してこの世界の平和を取り戻す!」

健太が叫ぶと美咲と雄一が続いた。

「私たちはこの平和な街を滅茶苦茶にしたのは許さない!」

わぁあれにぃ……たぁおぉされるがよいぃぞぉ!ドミィルガァン!」


僕はセルリアンブルーに輝くコードレス掃除機を手にしながら静かに言った。

「ドミルガン……僕はお前を許さない」

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