第4章 第55話 夜の見張り

僕は焚火たきびはさんでアリーの反対側に置いてある折り畳みの椅子と香時計の時間を計るための紐を持って、アリーの隣に椅子を置いて座った。


「イチルウ、はいお香」


アリーは粉末のお香が入った壺を僕に渡してくれた。

僕はアリ―の隣で紐を真っすぐに延ばして土の上に置き、粉末のお香を紐の隣に少しづつ置いていく。


「アリ―ありがとう」


紐と同じ長さまでお香を置いて端っこに火を付けれな香時計のタイマーの出来上がり、端から端までお香が全部燃え尽きたら2時間40分が経ち、僕は雄一と交代する。


アリーのお香は2/3くらい残っていて、1時間20分は一緒に居ることが出来る計算だ。


「ふたりだけで話すのは久しぶりだねアリー……」

「うん、ゆっくり話せるねイチルウ……イチルウの前いた世界ってどんなところなの?今まで聞いたことが無かったからききたいな……」

「うん……僕がいた世界はね……この世界に魔法があるように僕の世界には科学があるんだ」

「カガク?」

「そう、科学。タービンを使って電気を起こし、電気を使って電車や車を動かし、電気をバッテリーに詰め込んで音楽を聴いたり遠くの人と話したりも出来るんだ」

「……よくわからないけど、いい世界ね」

「便利だけど、人に騙されやすい世界でもあるんだ。

軽々しく人を信用できないし、情報があまりにも多いので何が本当で?何が嘘か?わかりにくい世界だよ」


そして僕とアリーはこの世界と僕の世界の違いや僕とアリーのそれぞれの家族の話をしているうちにずいぶん時間が経ち……


「おふたりさん!話に夢中で私のこと忘れてらっしゃるんですけど!!」

後ろから怒鳴り声が聞こえると思ったら美咲だった。香時計を見るとアリーの香時計が燃え尽きて全て灰になっていた。美咲は盗賊のスキルで時間には正確で寝るのも起きるのも自由自在だ。


「いや~お熱いですね~……私が邪魔だったらアリーもう少し見張りやってる?」

「いや、その、もう寝ます!」


アリーは「じゃあイチルウおやすみなさい」と言うと真っ赤な顔をして、そそくさとテントへ向かっていった。


美咲は紐を真っすぐにして土の上に置くと「一郎、お香取って」と言ったので、僕はお香が入ってる壺を渡すと、お香を紐の隣に少しづつ置いて端に火をつけて、紐の長さと同じ香時計が出来上がった。


美咲とは1時間一緒にいる事になる。


「一郎、私とじゃイヤ?」

「そんなことはないよ」

「じゃあ、アリーと私どっちがいい?」

「もちろん、アリー」

「ほほう……じゃあ、ラポーナさんと私だったら」

「それは美咲かなぁ~」

「へぇ~……ラポーナさんがイヤなの?……ラポーナさんって女性として完璧じゃん」

「いやあ……僕たちを引っ張って行ってくれるリーダーとしては尊敬するけど、たまにウザったいんだよね……」

「ほう、意外!てっきりラポーナさんの色気にメロメロなのかと思った」

「ラポーナさんは迫ってくるけど、腹黒さが見えてね……結局僕たちって『ラポーナさんに利用されてる』って見方もあるじゃん?」

「そうと言えなくもないけど、私たちが元の世界に戻るにはラポーナさんの協力が必要じゃない?」

「でも、僕たちはラポーナさんが所属する王国に召喚されたことを考えると僕たちは『召喚された時点から利用されてる』とも言えると思うんだ」

「じゃあ、一郎は元の世界に戻らないで、アリ―と一緒にエルフの森に暮らすの?私ヤダよ!元の世界に帰りたいよ!」


美咲は不機嫌に少し怒鳴どなった。


「ごめん……クラスのみんながそろって帰れるように頑張るよ。その思いは変わらない」

その場を取りつくろうように美咲に僕は謝った。


そのあと美咲とは他愛たあいもない会話をしてたら、僕の香時計が燃え尽きて雄一との交代の時間が来た。


僕はテントに入り、ハンディクリーナーで雄一から【眠】を吸い取って起こし、雄一にハンディクリーナーを渡し、雄一はテントを出て僕と交代で見張りに行った。


僕は寝た。





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