第1章 章終 第21話 ラポーナの仲間として魔王討伐の旅に出立する

僕の名前は高橋一郎。

海老名泉高校1年生だった。


いや、結構前の事だけと事実、そうだった。


今目の前にあるのはアニメや映画で見たファンタジー世界の王国の謁見の間だ。


「宮廷魔術師見習い、ラポーナ=ブルノジーに命ずる」

「佐藤健太、山田美咲、中村雄一、高橋一郎を従えて魔王ザルド・ダークネスの討伐をせよ」

部屋の中で三段高いところにある豪華な椅子に座った国王様は威厳ある大きな声で声をはっした。


僕の少し前で頭を下げて座ってるラポーナさんが切れの良い大きな声を応えた。

「ははっ!ラポーナ=ブルノジー他4名!王命承りまする!」


国王が僕たちに魔王討伐の王命の発令はアッサリと終った。


国王が退出するはずであったが、国王が三段高い所から降りて僕の前まで来て、膝を折り僕の顔と国王の顔が近距離になるくらい近い所に座った。


「高橋一郎 殿、今回は本当にありがとう……ワシをはじめ、城の者、街の人々の怪我を全員に完治するまで治療してくれたようじゃのう」


僕に顔が近い王様が言うと僕は応えた。

「はい、最終的に全員無事で良かったです。建物とかは作り直しのようですが……」


僕に顔が近い王様がもう一度言った。

「本当に……本当に……助かった、何とお礼をすれば良いかのう……」

「僕は魔王を倒して元の世界に戻るだけです。お礼はいりません」

僕が答えると……


今まで僕に近かった国王が突然立ち上がり

「異世界人高橋一郎には金貨500を与えよ!また、高橋一郎とその仲間はこの城において永久に客人としてもてなすこととする。以上のことが守れない場合は罰を受けてもらう」

と大声で謁見の間に響き渡るように言った。





……僕は馬車の中の左の後ろ側で金貨500枚を抱いて寝ころがっていた。


これでこの世界でアリーと遊んで暮らすのも悪くはない……そもそもこの金貨が無くても掃除屋として簡単にお金は稼げる。

でも、アリーはそんなの望んでないだろう。


魔王討伐だ。


僕は改めて心に誓おう……


魔物に家族が襲われて一人ぼっちになってしまう……そんな悲劇を一つでも防ぐことが僕の使命であり、クラスメート全員を探し出し元世界に戻るのが目標である、と。




馬車が城から街へと進むと人集ひとだかりが出来ていた。

街の人々がお礼に来ていた。声をかけてくれる人、お花をくれる人、握手を求めてくる人、手を振ってくれる人、食べ物をくれる人……


沢山の人の囲まれ、沢山の人にお礼を言われ、沢山の人に声援を貰い……


僕たちは街を出た。


城門の門番さんたちも泣きながら手を振ってくれた。


ドミルガンが構えてる拠点のカーフタンスの街に行くにはヤラーマムの森を通る必要がある。


ヤラーマムの森の入り口近くにエルフが一人立っていたのを見かけた御者を担当してる美咲は「ねえ一郎、あそこにいるのはアリ―じゃない?」と後ろを振り向きながら声を掛けてくれた。


僕は金貨500枚の袋を馬車の床に置き飛び降りて走った。

森の入口目掛けて走った。


森の入口にいたエルフが入ってこっちに向かってくる。

エルフが近づくにつれ誰だか分かってきた。


アリ―だ!


僕は「アリ―!」と叫びながらアリーに近づいて行った。

アリ―も「イチルウ!」と叫びながらこっちにやってきた。


やがて二人は近づき抱き合った。


「アリ―!危険な冒険だけど付いて来てくれるかい?」

「うん!イチルウと一緒にいる!どこまでもついて行く!」


馬車はいつのまにか僕たちのそばまで来て

「お客さーん、お乗りにならないなら置いていきますよー」

と御者の美咲にからかわれてしまった。

わぁれ提案てぇえいあんしよぉう!うしぃろぉろから乗るぅとのぉりやすいぃぞぉ」

ともう一人の御者の雄一が優しく教えてくれた。

「一郎!アリ―!手を貸すぜ!乗りな!」

健太はアリ―と僕の手を引いて馬車に乗せてくれた。


「あら、アリーさんと仰いましたか?私の魔王討伐グループへ入りたいのでしたら試験を受けてもらいます。なにせこの宮廷魔術師補佐であるラポーナさんのグループなのですから……」

ラポーナさんから嫌味な発言が出ると雰囲気が悪くなりラポーナさんに冷たい視線が集まった。


ラポーナさんは手のひらを返したように

「あらやだ、冗談ですわ!ヤラーマムの森のエルフ族、アルレシア・シルヴァリスさん!私の魔王討伐隊へようこそ!メンバー全員で歓迎しますわ!歓迎パーティーしましょう!一郎くんの金貨500枚で!」

ラポーナさんは獲物を狙う目で金貨500枚が入ってる袋を見た。


僕は金貨500枚入ってる袋を抱きかかえて

「ラポーナさん!いくらあなたでもこのお金は渡しませんよ!」

僕の目もまたギラついてた。


美咲が御者をしながら口を開いた

「ところで、なんでドミルガンを倒したのにドミルガンの拠点のカーフタンスってところに行くの?」


ラポーナさんが答えた。

「カーフスタンにはおそらく皆さんのご友人がいると思われます。その調査と、もしも皆様のご友人を発見したときには、その救助をする為です」


こうして僕たちは魔王討伐の為にデュラハンのドミルガンの拠点であるカーフタンスの街に向かうのでありました。


    第1章【ドミルガンの襲撃】 終わり

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