インタールード
第1話 初代魔装少女VS『対の魔王』 前編
「……っ!」
イブちゃんの研究室でジェミニの微調整についてアドバイスしていたその時、禍々しい魔力を感じて、ぼくはキョロキョロと辺りを見回す。
今のは……邪神が持つ『混沌の魔力』? まさか……。
「イブちゃん。ジェミニの調整、頼んだよ」
「ちょっ、セイラ様!?」
イブちゃんの声を無視し、研究室を飛び出す。
建物内を走り抜け、外に出た瞬間に魔装を身に纏う。
そして魔力を背中の翼に回し、音速を超える速度でアイン=ソフ=オウルから地上に向かって落下していく。
『混沌の魔力』を感じ取った場所は――レムリア山の山頂にあるヨグ神殿からだった。
もし『対の魔王』が邪神の降臨を企てていたら、あの場所ほど相応しい場所はない。
それと、ラムちゃんからの報告で後輩二人が全ての『星霊』を回収した事も知っていた。
もしかしたら、手遅れになるかもしれない。
「……あの二人の好きにはさせない!」
そう呟き、オーバーロードを発動させて更に加速していく。
雲を突き抜け、神殿の屋根が見えた所でスピカを手に取る。
そして屋根目掛けて、ビームを放つ。
スピカをマウントし直し、自分で空けた大きな穴から神殿内に侵入する。
後輩二人は魔法陣の中にいて、マシロちゃんの方に『対の魔王』の片割れが触れようとしていた所だった。
何の比喩でもなく、魔の手がマシロちゃんのおでこに触れる前に、マシロちゃんとクロナちゃんを抱えて魔法陣の外へと連れ出す。
マシロちゃんは意識を喪っているけど、クロナちゃんはまだ意識を保っていた。
だけどそれも時間の問題だろう。
二人をそっと床に降ろし、オーバーロードを一旦解除して彼女達を守るように立ち塞がる。
そして百年振りに、『対の魔王』と対面する。
「……ギリギリセーフ、かな?」
「いったい誰?」
「せっかくあたし達の新しい肉体が手に入るチャンスだったのに……ただで済むとは思わないでね?」
「そんなつれない事言わないでよ。せっかくの感動の再会でしょ?」
そう言い、ぼくはバイザーを顔から外す。
それと同時に、二人にぼくの事を思い出してもらう為に魔装も解除する。
その効果はテキメンで、二人はぼくの顔を見て驚きの声を上げる。
「そんな、まさか……!?」
「なんで生きてるの!?」
「「セイラ!!」」
「セイ、ラ……?」
その言葉と共に、ドサッという音が後ろから聞こえてきた。
振り向くと、クロナちゃんも意識を喪ったみたいだった。
正面に向き直り、仇敵と言葉を交わす。
「なんで生きてるって……そっちこそ、なんで生きてるの? 肉体はぼくが『星霊』という形で、バラバラに引き裂いてあげたのに」
「……確かにあたし達の肉体はセイラによって引き裂かれたけど、精神体になる事で死ぬ事を免れただけだよ」
「その後、わたしに唯一残っていたダアトの力を使って、不本意だけど仮初めの肉体を造ったってわけ」
「『対の魔王』を完全に無力化出来なかったのは痛手だけど……そっか。だからそんなふざけた見た目をしてるんだね?」
煽るようにそう言うけど、やっぱり二人には効果が無いみたいだった。
「そっちの質問には答えたよ。今度はわたし達の質問に答えてもらう番だよ、セイラ」
「もう一度言うよ。なんで生きてるの、セイラ? 人間の寿命はとっくに超えてるんじゃないの?」
「……答えた所で、どうせ二人には理解出来ないよ。質問はもういい? その魔法陣を壊したいんだけど?」
ぼくが寿命を超えて生きてるのにはきちんとした……きちんとしてるかなぁ?
まあともかく、理由もカラクリもちゃんと存在する。
だけど、面倒だから答える気力は無かった。後輩二人になら全然問題はないんだけどね……。
閑話休題。
ぼくが魔法陣を指差すと、二人はけらけらと嗤う。
「あははははは! 出来るの、セイラに!?」
「もう起動しちゃってるのに!? あははははは!」
「やってみなきゃ分からないでしょ?」
「「これでも?」」
二人はそう言うと、魔法陣の周りに浮遊していた『星霊』のコア―自身の半身をその身に取り込んでいく。
そして二人は、本来の姿を取り戻す。いや……取り戻してしまった。
双子のように瓜二つの顔立ちに、同じ髪型。
スタイルも全く同じで、女性らしい滑らかな曲線美を描いている。
胸元のネックレスには十色の宝石が嵌められており、背中から生えている三対六枚の翼は闇よりも暗い黒色に染まっていた。
「そこの二人には感謝しなくちゃね。二人のおかげで、わたし達は身体を取り戻せたんだから」
「さて……神々がご降臨されるまでの間、セイラと遊んであげるよ。せいぜいあたし達が身体の感覚を取り戻すまで、生き延びてよ? 簡単に死なれたら困るよ?」
「死ぬもんか。それと……復活して早々悪いけど――もう一度、死んでもらう。今度は魂まで引き裂いてあげるよ」
魔装を再び身に纏い、復活してしまった『対の魔王』に対してそう挑発し返す。
視線を合わせたのは一瞬。
ガラガラとぼくが空けた穴が音を響かせたと同時に、ぼく達は互いの命を奪うために動き出した―――。
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