第37話 告白 前編
『エルフの里』からサファイアの街に戻ってきた一ヶ月後。
わたし達は何故か、海へと来ていた。
これには深い……深いかなぁ?
まあ理由があって、あの時ステラちゃんが立ち去った後のわたし達の様子がおかしかったから、ラインハルトさんに気分転換でもしたらどうだ? と提案されて、ローエングリン家の別荘があるこのアクアマリンの街を紹介された。別荘も持ってるとか……流石貴族。
ちなみに、アイナちゃん達キャリー姉妹とはサファイアの街で別れた。
三人は次はスペード連邦という国に向かうらしい。
縁があったら、そこで再会するかもしれない。
「やっぱり……海は日差しが強いわね」
手で影を作りつつ、隣に立つクロナちゃんがそう呟く。
クロナちゃんもわたしも水着に着替えていて、クロナちゃんは黒の水着に腰にパレオを巻いていて、わたしはフリルの付いた白い水着を着ていた。
それと、浜辺にはわたし達以外の姿はなかった。
その事を不思議に思っていると、後ろから声が掛けられた。
「絶好の海水浴日和だな」
「ですね」
振り向くと、やはり水着に着替えたラインハルトさんとリリアちゃんの姿があった。
二人は引率役として、わたし達についてきていた。
「綺麗ですよね」
「ああ、そうだろう。ここの海辺は国内でも有数の……」
「いえいえ。海も確かに綺麗ですけど……クロナちゃんの水着姿も綺麗ですよね?」
そう言いつつ、クロナちゃんの肩を押してラインハルトさんの方へと近付けさせる。
「ちょっ、マシロ!?」
「さあ、感想をどうぞ」
「いや、どうぞって言われても……」
「兄様。ここで感想を言わないのは女性に恥を掻かせるだけですよ?」
弱腰なラインハルトさんを見かねてか、リリアちゃんが援護射撃をしてくれた。
見ると、リリアちゃんはわたしに向かってパチリとウインクしてくれた。
わたしの意図は把握してるらしい。
「あ〜っと……クロナ。その……水着、とてもよく似合ってる……と思う」
「えっと、その……ハルも水着、似合ってるわよ……」
ラインハルトさんは照れ臭そうに頭を掻きながらそっぽを向き、クロナちゃんも耳まで真っ赤にしながら俯いてしまっていた。
とても初々しい反応をする二人を見て、わたしとリリアちゃんはニヤニヤとした視線を二人に向けていた―――。
◇◇◇◇◇
夜になると、昼間の暑さも幾分か和らいでくる。
寝る前に少し散歩でも……と思い、あたしは一人夜の浜辺に繰り出す。
夜空と夜の海を眺めながら歩いていると、誰かが近付いてくる気配を感じた。
そちらを振り向くと、ラフな格好をしたハルの姿があった。
「ハル? 何でいるのよ?」
「それはこちらの台詞だ。夜の散歩をしていたら、クロナと出くわすとは思わなかった」
「それはあたしも同じよ」
「折角だ。少し二人で一緒に歩かないか?」
「えっ……うん、いいわよ」
ハルの提案には少し驚いたけど、あたしはそのままハルと並んで浜辺を歩き始めた―――。
◇◇◇◇◇
なんだか良い雰囲気の二人を、わたしとリリアちゃんは気配を出来る限り圧し殺しながら遠巻きに観察していた。
クロナちゃんが別荘を出た後にラインハルトさんも出ていったから、絶対に何かあると思い、リリアちゃんを誘って二人の尾行を始めた。
クロナちゃんがこっちを見た時は一瞬ドキリとしたけど、そのすぐ後にラインハルトさんが姿を現したから事なきを得た。
「……とっても良い雰囲気だね」
「……そうですね」
「……このままチューの一つでもすればいいのに」
「……あの二人では手を繋ぐので精一杯なのでは?」
「……それもそっか」
間違っても声がクロナちゃん達に届かないように、わたし達はヒソヒソと声を抑えながら話す。
二人は肩が触れるか触れないかくらいのもどかしい距離で、ゆっくりと並んで歩いていた。
そしてある所で、ラインハルトさんが足を止める。
それからクロナちゃんの方を向き、とても真剣な眼差しを彼女に向けていた。
これはとうとう!? と思うと、わたしの鼓動も次第に速くなっていった。
それと同時に集音魔法を使って、物陰から二人の会話を盗み聞いた―――。
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