第25話 VS『星霊』/type-Ⅵ:ミカエル
順調に『エルフの里』へと向かっていたのに、急に車が停まった。
「急に停まってどうした?」
「……最前列の隊員からの連絡です。『星霊』とおぼしき反応を前方に捉えたようです」
ラインハルトさんが尋ねると、副隊長さんは耳に着けたインカムに触りつつそう答える。
それと、聞き捨てならない単語も出て来ていた。
「『星霊』か……分かった。その場で待機するよう伝えてくれ。『星霊』の迎撃は専門家に任せる、ともな」
「了解。……クイーンよりポーンワンへ。その場で待機との命令だ。『星霊』の迎撃は、こちらの車両にいるプロフェッショナル達に任せる」
「……と言うわけだ。『星霊』の迎撃をお願いしてもいいか?」
「はい」
「ええ」
クロナちゃんと揃って返事をし、車から降りる。
それから変身をして、車列の前方へと飛んで行った―――。
◇◇◇◇◇
車列の前方まで来ると、『星霊』の姿を朧気ながらに確認出来た。
前回のカマエルと同じくドラゴンのような姿で、体の側面にビーム砲みたいなモノを二つ装備していた。
そして体色は、明るめな黄色……いや、金色? だった。
その『星霊』を見て、妖精達が声を上げる。
「アレは……六番目の『星霊』、ミカエル!」
「ミカエルがいるなら、近くにベルフェゴールもいるハズ!」
「それじゃあ、あたしはそのベルフェゴールとやらを探すわ。あの『星霊』の相手は任せていい?」
「うん、任せて」
「無理しないでね」
クロナちゃんはそう言い残し、この場から離れて行った。
残されたわたしは、大剣を構え背中のキャノン砲も展開する。
そして『星霊』がわたしの姿を捉えたのと、わたしが攻撃を仕掛けたのはほぼ同時だった。
「いっけええええええ!!」
ほぼ最大出力で、極太のビームを放つ。
『星霊』も口を大きく開き、ビーム砲と合わせて三ヶ所からビームを放ってくる。
ビームはわたし達のほぼ中間地点でぶつかり合う。
拮抗したのは本当に一瞬の出来事で、わたしのビームが『星霊』のビームを押し返した。
ビームの単純な威力だけなら、わたしの方に分があるらしい。
ビームを押し返された『星霊』は、ビームを放つのを止めてその場に飛び上がる。
その一瞬後、わたしのビームが『星霊』のいた場所を抉った。
キャノン砲を一旦格納し、わたしは翼を羽ばたかせて『星霊』へと接近する。
連射出来ないのが唯一の欠点で、冷却時間が終わるまで接近戦を挑む他なかった。
だけど、『星霊』の方が早かった。
『星霊』はビーム砲から、再びビームを放ってきた。
「くっ……!」
それをなんとか回避し、再び接近を……と思っていたのに、『星霊』は続けざまにビームを放ってきた。
キャノン砲が連射性能を捨てて一撃の威力に重きを置いているのなら、あのビーム砲は一撃の威力を犠牲に連射性能に特化しているのかもしれない。
それなら、さっきの攻撃でわたしのビームが『星霊』のビームを押し返したことにも説明がつく。
そんなことを考えながら、雨のように降り注ぐビームを回避していく。
キャノン砲は再び撃てるようになったけど、こんな状況だと狙いを定めている間にわたしの方がビームの餌食になってしまう。
だから――わたしは『星霊』との距離を詰めることにした。
流石に懐まで潜り込めば、『星霊』に反撃されることもないだろう。
そう思いながら、ゆっくりではあるけど『星霊』に接近していく。
回避出来るビームは回避し、回避出来ないと思うモノは大剣を盾にして防いでいく。
そうして、懐まで潜り込んだその時、『星霊』は首をもたげて大きな口をわたしの方に向けていた。
そこからビームが放たれ、わたしは間一髪の所で回避する。
でもそのせいで、ビーム砲の前に出てしまった。
『星霊』に上手く誘導されてしまったのかもしれない。
そんなことを思う間もなく、ビームが放たれる。
だけど、大剣を盾にしたおかげで、なんとか致命傷だけは回避出来た。
そしてそのまま、大剣をビーム砲の方へと押し込んでいく。
銃口をわたしの大剣で蓋をされ、逃げ場を失ったビームはそのままビーム砲の銃身を暴発させる。
爆発に巻き込まれる形になったけど、ダメージの方は『星霊』の方が大きかった。
ビーム砲の暴発によって、その付近の装甲に大きな穴が空いていた。
その穴に再展開したキャノン砲の銃口を突っ込み、この戦いを決める一撃を放つ。
極太のビームは『星霊』の体を貫通し、確実にダメージを与える。
ビームを放ち終え、キャノン砲を引き抜くと、『星霊』は真っ逆さまに地面へと墜落していく。
地面に激突し、活動を停止した『星霊』はその姿を正八角形の黄色の結晶体へと変化させる。
そして、遅れて地面に降り立ったわたしのブレスレットへと吸収される。
その直後、わたしの身に変化が起きた。
両腰に、折り畳み式のビーム砲が追加されていた。
背中のキャノン砲と同じく、性能が『星霊』由来なら、連射性能が高いのだろう。
「……クロナちゃんの方は大丈夫かな?」
そう呟きながら、わたしは彼女が飛んで行った方向に目を向けた―――。
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