第26話 VS『星霊』/type-Ⅵi:ベルフェゴール


 マシロと別れ、あたしは索敵魔法でもう片方の『星霊』の行方を探し出す。

 反応はすぐにあり、車列の右手側から接近してきていた。


 あたしは大剣を片手に、翼を羽ばたかせて『星霊』へと接近する。

 接近するにつれて、『星霊』の姿がはっきりとしてきた。


 その『星霊』はドラゴンのような姿をしていて、体の側面にはビーム砲が二門装備されていた。

 そして装甲の色は、暗い黄色……いや、金色? だった。


 あっちもあたしの姿を確認したのか、ビーム砲からビームを撃ってくる。

 距離があったから余裕を持って回避出来た―けど、続けざまにビームを撃ってきた。


「くっ……!」


 流石に回避は間に合わないと判断して、大剣でビームを防ぐ。

 その間に、背中の砲塔を展開する。


 そしてそこからビームを放ち、『星霊』の右側面に装備されていたビーム砲を撃ち抜く。

 本当は胴体を狙ったけど、少し狙いを外してしまった。


 あたしは砲塔を格納し、『星霊』の右側に回り込む形で接近していく。

 背中の砲塔は一撃の威力は高いけど、連射出来ないのが唯一の欠点だった。


 その点、『星霊』のビーム砲は連射性能が高い。

 ただ、一撃の威力はそれほど高くはない。

 大剣で防ぎ切れたのがその証左だった。


『星霊』は首を回し、口を大きく開いてあたしを狙ってくる。

 そしてそこから、ビーム砲よりは威力の高いビームが放たれた。


 それを回避し、着実に『星霊』へと接近する。

 右側に回り込んでいるおかげか、ビーム砲による射撃はなかった。


 そして『星霊』の懐に入り込む事に成功し、大剣をおもいっきり振るう。

 魔侵獣のように一撃で、とはいかないまでも、その装甲に深いキズを負わせる事には成功していた。


 あたしはそのまま二撃目を叩き込もう―とした所で、『星霊』があたしから大きく距離を取る。

 そして左側のビーム砲から、ビームを撃ってくる。


「ちっ……!」


 舌打ちしつつ、大剣でビームを防ぐ。

 すると『星霊』は、口からもビームを放ってきた。


 それを防ぐ術は――ある。


「《リフレクト》!」


 魔法を発動し、透明な壁を斜めに展開する。

 ビームはその壁に反射し、空の彼方へと消え去っていった。


 どんな種類の魔法があるのかは妖精達から教えられていたけど……この魔法を実際に使ったのは今回が初めてだった。

 ぶっつけ本番だったけど、成功して良かった。


 ビームが止み、その隙に『星霊』へと再び接近する。

 だけどやっぱり、ビーム砲による次射が早かった。

 でも、対抗出来ないわけじゃない。


「《リフレクト》!!」


 また透明な壁を魔法で生み出すけど、今回は一枚だけじゃなかった。

『星霊』を取り囲むように、何枚、何十枚と展開する。


 そしてビームが正面の壁に反射し、次々と壁に反射していく。

 その過程で、進行方向にある『星霊』の体を穿っていく。


 自分の攻撃で自分の体を傷付ける結果となった『星霊』には、確実にダメージが蓄積していた。


 このチャンスを逃すまいと、冷却の終えた砲塔を再び展開する。

 そして壁の隙間から銃口を覗かせ、必殺の一撃を放つ。

 距離も近かったから、今度はちゃんと『星霊』の胴体のど真ん中を撃ち抜いた。


 体に大きな穴を空けた『星霊』は、地面へと墜落していく。

 地面に大きな窪みを作り、あたしも遅れて地面に降り立つ。

 警戒しつつ大剣を構えていると、『星霊』の姿に変化が訪れた。


『星霊』は暗い黄色の正八角形の結晶体へと変化し、あたしのブレスレットへと吸収された。

 そして次の瞬間、あたしの姿にも変化が訪れた。


 両腰に、折り畳み式のビーム砲が追加されていた。

 これでまた、攻撃手段が増えた――のはいいんだけど……。


「……そろそろ近接系の魔装も増やしたいわね。いつまでも大剣一本だけ、なんて流石にキツイわよ」


 そう呟きながら、マシロの下へと戻って行った―――。


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