第24話 『エルフの里』へ


「事情はだいたい理解したわ。ならあたしとマシロだけで『エルフの里』に行くしかないわね」

「大丈夫ですか? 私達がいなくても?」

「まあ……なんとかなるでしょ」


 あたしは楽観的にそう答える。

 状況的には楽観視出来るような状況じゃないけど、マシロと二人でなら乗り越えられると感じていた。


 そこで話が一区切りしたと思い、ソファーから立ち上がる。

 そして部屋の隅に置かれている古めかしいラジオを付ける。

 するとちょうど、ニュースが流れてきた。


『……次のニュースです。ハート皇国にある『エルフの里』でクーデターが発生し、里の内外に甚大な被害が及んでおります。この為国は、近隣の諸外国に支援を要請し……』

「「「「「えっ?」」」」」


 ラジオから流れてきたニュースに、あたし達は揃って疑問の声を上げた―――。




 ◇◇◇◇◇




 翌日。

 リリアに連れられ、執務室へと向かう。

 そこには、ハルが執務机に座って待っていた。


「兄様、お二人を連れて参りました」

「すまない、リリア。……さて。二人を呼んだのは他でもない。私と共に『エルフの里』に向かって欲しい」

「クーデターが起きたから?」


 あたしがそう返すと、ハルは頷く。


「ああ。と言っても、私達が向かうのは支援部隊としてだ。帝国は皇国の支援要請を受けて、即時支援部隊を結成した。私はその部隊の隊長に任命された」

「うん? それとわたし達がついていく事に何の関係が?」

「姫様直々の指名だ。支援部隊に、二人を同行させるように、とな。まあ、表向きは隊長である私の補佐役として、だがな」

「……『エルフの里』周辺には『星霊』がいるからかしら?」

「おそらくそうだろう」


 あたしがポツリと呟いた予想に、ハルは肯定の意を示す。

 あたしはマシロの方を見る。

 すると彼女は、無言でコクリと頷く。


「分かったわ。あたし達も同行するわ」

「感謝する。……リリア。慌ただしいが、私のいない間は家を頼む」

「畏まりましたわ」

「ディアマンテから支援部隊が来るのは早くて一週間後だから、それまでに出来るだけの準備はしておいてくれ」

「分かったわ」

「分かりました」


 そしてその日は解散した―――。




 ◇◇◇◇◇




 その一週間後。

 わたし達は『エルフの里』に向かって出発した。


 支援部隊の中には食料等を積んでいるとおぼしきトラックが何台もあり、わたし達が乗り込んだ軍用車は全体の半分にも満たなかった。


 列を作って目的地へと向かう中、ハンドルを握る騎士のヒトが口を開く。


「休暇中にスミマセンね、隊長」

「いや、問題無い」

「花も恥じらう乙女二人を侍らせてお楽しみだったのに、まったくタイミングの悪い事で……」

「……副隊長。それは私に対する侮辱か? よろしい。ならば罰は単騎でのワイバーン討伐と、鎧だけでゴーレムとのタイマン。好きな方を選ばせてやろう」

「冗談ですって、冗談。訂正しますよ。そちらの黒髪の少女とイチャイチャラブラブしてたんでしょう? まったく……隊長もスミに置けないですね」

「わ、私はクロナとはイチャイチャしてないぞ!?」

「あ、あたしはハルとはイチャイチャしてないわよ!?」


 すると二人共、慌てたように否定する。

 そんな二人の答えを受けて、副隊長さんはわたしに振ってくる。


「ああ言ってますが、実際の所どうだったんです?」

「はよくっつけや、って言うのが率直な感想ですね。アレだけ甘い雰囲気を醸し出しておいて、まだ告白してないんですよ? 砂糖を吐かずにはいられませんでしたよ」

「隊長は奥手だからなぁ……まあ、恋愛のペースなんざヒトそれぞれなんで、草葉の陰から見守ってますよ」

「……ソレ、死んでるぞ?」

「いわゆる「尊死」ってヤツですわ」


 それからも副隊長さんが愉快な話をしてくれたおかげで、緊張感をあまり感じずに『エルフの里』へと向かえていた―――。


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