第47話 暗殺(未遂)


 大通りに面している廃ビルの一室で、黒づくめのヒト達が集まっていた。

 そのヒト達は人間にエルフ、ドワーフなど種族はバラバラだった。


 しかし彼等には、共通の目的があった。


「第二班から通信。目標は予定通り、大通りを進行中の模様」

「了解。こちらも予定通り作戦行動を開始する」


 そう言うと、ガチャガチャと武装を装備し始めた。

 火器類が多く、明らかに何らかの事件を起こすつもりだった。


 それも当然で、彼等はこの地でダイヤモンド帝国第二皇女の暗殺を企てていた。


「……高貴な者を殺す事で、この地に血の紋を刻む。そしてその魂を、我等が神に捧げる。大義は我等にあり」

「「「この世全てに混沌を」」」


 彼等は『邪神教団』。

『対の魔王』とは別に、邪神の降臨を目論む秘密組織だった―――。




 ◇◇◇◇◇




 わたし達の世界で言う所のリムジンみたいな車体の長い車が、大通りをゆっくりと進んで行く。


 窓越しではあるけど、ベアトリーチェさんに似た容姿の女の子が沿道に向かって手を振っていた。


「すごい歓声ね」

「そうだねぇ〜(ボリボリ)」


 アイスを乗せていたコーンを噛み砕きながら、そう答える。

 そのままボーッと車列を眺めていると、先頭車両が突然爆発した。


 思わず身を屈めると、続けて廃ビルっぽい建物からミサイルが何発も放たれた。

 それらは全て、車体の長い車に向かっていた。


「……っ! 変身っ!!」

「変身!」


 わたしとクロナちゃんは魔装を身に纏い、ミサイルを迎撃していく。

 なんとか全弾撃ち落とすと、今度は黒づくめのヒト達が車列に押し寄せてきた。


 パニックになり我先にと逃げ惑う人々の上を飛び越しながら、わたしとクロナちゃんはそのヒト達が車体の長い車に近付かないように牽制する。


 対人戦は今まで何回かあるけど、全然慣れそうにない。

 すると、クロナちゃんが車のドアの窓を叩き割り、中のヒトに話し掛けていた。


「早く避難して! 奴等の狙いはたぶん貴女だから!」

「わ……分かりました!」


 すると、再びミサイルが撃ち込まれてきた。

 それを迎撃するけど、一つだけ撃ち落とし損ねた。


「しまっ……!?」


 だけど、何処かから飛んできたビームによって撃ち落とされた。

 ビームの出所に目を向けるけど、背の高い建物くらいしかなかった。


 釈然としない気持ちを抱きつつも、黒づくめのヒト達を確実に無力化していった―――。




 ◇◇◇◇◇




「……命中。次弾装填」


 とある建物の屋上に陣取る青年は、ガチャンと薬莢の形をした弾丸をスナイパーライフルから排出し、次の弾を装填する。

 そしてスカウター越しに、車体の長い車周辺で行われている戦闘を見守る。


 更には、片翼しかない翼を展開して特殊な魔力波を発生させ、この街一帯の情報をリアルタイムで習得していた。


 彼の名はケイで、『スターズ』の一つであるサジタリウスを担う『黄金の夜明け』団の一員だった。


 サジタリウスは後方支援に特化した魔装で、その狙撃能力は『スターズ』随一であった。


 彼はこの街で『邪神教団』の不穏な動きを察知し、独自に動いていた。

 第二皇女暗殺計画の情報は掴んでいたが、詳しい日時までは分からなかったのでこのような場当たり的な対処しか出来ていなかった。


 しかし、彼の計算違いは二つあった。

 一つは、セイラが気に掛けているマシロとクロナの二人がタイミング良くルビーの街にいた事。


 そしてもう一つは――。


「……ラム。そっちはどう?」

『今丁度終わった所ですよ』


 耳に着けたインカム越しに、ラムの声が響く。

 ケイの計算違いのもう一つは、セイラのお願いで二人の後をつけていたラムもルビーの街にやって来ていた事だった。


 なのでケイは専用回線でラムに連絡し、この街の『邪神教団』殲滅に協力してもらっていた。

 そしてついさっき、ミサイルが発射された場所にラムを向かわせていた。


「……了解。ラムはその場で待機。あの二人がピンチに陥ったら、そっちの任務を最優先して」

『りょーかいでっす』


 そこで通信を切り、ケイはマシロとクロナの戦闘を陰ながらに見守った―――。


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