第48話 射手座の暗躍


 時間は数分前まで遡る―――。


 ケイの指示でミサイルの発射元までやって来たラムは、そのまま廃ビルの中を探索する。

 そしてある一室で、『邪神教団』の連中と鉢合わせた。


「っ! 誰だ!」

「誰でもいい! 目撃者は殺せ!」


 有無を言わさずに、連中からバババッ! と実弾を撃ち込まれる。

 しかしその弾丸がラムの身体を貫く事は無かった。


「あっぶないですねぇ〜。急に撃ってこないでくださいよ」


 そう毒づくのは、魔装を身に纏ったラムだった。

 ラムの魔装は全身を隙間無く装甲で覆われ、両腕にはシールドが装備されていた。

 そして背中から生えるサブアームには、身の丈ほどもある大盾が二つ装備されていた。


「これでも喰らえ!」


 すると、連中の一人がラム目掛けてロケットランチャーを放ってきた。

 普通なら無事では済まないが、ラムはサブアームを動かしてそれを防ぐ。


 そして着弾時に、シールドの方が爆発した。

 そのおかげか、ロケットランチャーによる攻撃の被害は最小限に抑えられていた。


 これにはカラクリがあり、大盾自体がリアクティブアーマーの役割を担っていた。

 この大盾がある限り、実弾でラムの身体に傷を付ける事は難しい。


「実弾は無理だ! 魔法で応戦しろ!」


 連中の一人がそう言うと、様々な属性の魔法がラム目掛けて飛んでくる。

 その魔法達を、ラムは両腕のシールドだけで防いでいく。

 魔法の合間に実弾による射撃もあったが、ラムはそれを大盾で難なく防いでいく。


「もうっ! しつっこい!」


 痺れを切らしたラムは、四つの盾で攻撃を防ぎながら近くにいた一人に接近する。

 そして大盾でシールドバッシュをかます。


 大盾が連中の身体にぶつかった瞬間、リアクティブアーマーの機能をあえて誤作動させ、その爆発で相手の身体を吹き飛ばしていく。


 相手の生死を確認する間もなく、ラムは次の相手に向かってシールドバッシュをかまして行く。


 そうしてここにいた連中を無力化したのは、三分も掛からなかった―――。




 ◇◇◇◇◇




 無力化した黒づくめの連中を、《バインド》という拘束魔法で拘束する。

 連中の数も、次第に少なくなっていた。


「やあっ!」


 マシロの方を見ると、最後の一人を無力化した所だった。

 魔力のロープで拘束されて地面に転がるけど、その顔には不敵な笑みが浮かんでいた。


「ククク……これで終わったと思うなよ!」


 そう叫ぶと、ガリッという何かを砕く音が響いた後、そのヒトは糸が切れたように動かなくなった。

 もしかしたら、口の中に自害用の毒か何かを仕込んでいたのかもしれない。


 すると、ビルの方から無数のミサイルがあたし達がいる場所目掛けて飛んできていた。

 というか……ミサイルはこの大通り周辺を目標にしているように見える。

 それくらい、横に広く広がっていた。


「マシロ! 迎撃するわよ!」

「うん!」


 マシロは頷き、背中のキャノン砲と腰のビーム砲を展開する。

 そして彼女と共にフルバーストし、ミサイルを一つ残らず迎撃していく。


 だけど、物量がものすごくて、迎撃が間に合わないモノもあった。

 その時――何処かから飛んできたビームが、あたし達が撃ち漏らしたミサイルを確実に撃ち落としていた。


 出所も射手も分からないけど、今はありがたかった。

 それから、マシロと共に必死にミサイルの迎撃をした―――。




 ◇◇◇◇◇




「……ターゲットクリア。次」


 引き金を引き、マシロとクロナが撃ち漏らしたミサイルをケイが撃ち落としていく。

 しかし、スナイパーライフル一挺では確実に限界は来る。


 だから――片翼を情報収集用のモードから、戦闘用モードへと切り替えた。


 戦闘用モードに切り替わった片翼は分裂し、ビットのようにケイの周りに浮遊する。その数は八基。


 そしてケイのスナイパーライフルでは間に合わなさそうなミサイルだけを、ビットが縦横無尽に空を駆け巡り撃ち落としていく。


 端から見れば、狙撃手が何人もいるように見えただろう。

 しかし現実は、たった一人の青年がミサイルを撃ち落としているだけに過ぎなかった。


「……うん?」


 すると、ケイのスカウターがルビーの街から立ち去るトラックを発見した。

 その荷台には、『邪神教団』の生き残りの連中が乗っていた。


「……逃がすか」


 スナイパーライフルの銃口をトラックの方へと向け、照準を合わせていく。

 そして引き金を引き、魔力を込めた弾丸を発射する。


 弾丸は過たずトラックに命中し、爆発四散した。

 燃料タンクがあると思われる場所を狙って撃ったので、まず間違いなく連中は死んでいるだろう。


 ケイは再び大通りの方に目を向けると、ミサイルの迎撃は終わっていた。

 それを確認したケイは、魔装を解除する。


「……ミッションクリア。引き上げるか……ラム。キミも立ち去っていいよ。今回はありがとう」


 インカムでラムと通信しながら、ケイは人知れず建物の屋上から姿を消した―――。


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