第10話 VS『星霊』/type-V:カマエル 後編
キャノン砲がわたしとクロナちゃんを捉え、そこから必殺のビームを放ってくる。
その直前―――。
「……っ! 変身解除!」
わたしは変身を解除し、自由落下に身を委ねる。
落ちるついでに、隣までやって来ていたクロナちゃんの手を引くと、彼女もわたしの意図が分かったようで変身を解除する。
そして二人揃って、重力に引かれていく。
落下を始めた直後、キャノン砲からビームが放たれ、わたし達がいた空間を撃ち抜いた。
やっぱり衝撃波は健在で、わたしもクロナちゃんもそれをまともに浴びて落下速度がグンと増す。
地面が近付いてきて、このままだと地面に激しく全身を打ち付けてしまう。
でも、そうはならなかった。
「「変身!」」
解除していた魔装を再び身に纏い、わたしとクロナちゃんは繋いでいた手を離して地面スレスレを滑空していく。
そしてそのまま、一気に『星霊』の懐に潜り込む。
「やああああああっ!!」
「はああああああっ!!」
大剣を大きく振りかぶり、わたしとクロナちゃんはほぼ同時に『星霊』の両前足に斬戟を叩き込む。
防御力の低そうな部分―つまり間接部を狙ったその斬戟は、切断するまでは至らなかったけど、確実にダメージを与えたという手応えはあった。
その証拠に、『星霊』はグラリとバランスを崩していた。
「マシロ! 一気に畳み掛けるわよ!」
「うん!」
このチャンスを活かすべく、わたしとクロナちゃんは『星霊』の周りを縦横無尽に飛び回り、斬戟を加えていった―――。
◇◇◇◇◇
『星霊』の背部へと回り、あたしは砲塔の状態を確認する。
まだ放熱は終わっていないようで、放熱フィンが露出したままだった。
二門ある内の片方の砲塔の後部―つまりフィンが露出している部分に、あたしは大剣を突き立てる。
その時点でフィンの部分が小さな爆発を引き起こしていたけど、あたしはさらに追い打ちを掛ける。
「《ファイア》!」
剣の部分を媒介にして、砲塔内部に炎を放つ。
当然と言えば当然で、砲塔がオーバーヒートして砲身の至るところから爆発が起こる。
あたしは大剣を引き抜いて素早く『星霊』の背部から離脱すると、それと同時に砲塔が大きな爆発を引き起こした。
その爆発に巻き込まれ、背ビレともう片方の砲塔も誘爆する。
『星霊』は大きく口を開き、不協和音みたいな耳障りな音を響かせる。
もしかしなくても、悲鳴……なのかしら?
そんなことを思っていると、『星霊』は大きくバランスを崩し、地面に這いつくばる。
爆発を起こした背部には装甲はほとんど残っていなくて、内部構造が丸見えになっていた。
その中でも一際強く光り輝く、正八角形の結晶みたいなコアも見えていた。
装甲の色が反映されているのか、そのコアは明るい赤色に発光していた。
あの明るさなら……トドメを刺すのはあたしじゃない。
「マシロ! トドメを!」
◇◇◇◇◇
「マシロ! トドメを!」
クロナちゃんのその声に導かれるように、わたしは『星霊』の露出したコアへと突撃していく。
そして大剣を前に突き出し、翼を羽ばたかせてさらに加速する。
「やああああああっ!!」
無意識にそんな声が出て、わたしは飛行の勢いの乗った大剣をコアに突き立てる。
パリン、とガラス細工が砕けるような軽い音が響き渡り、『星霊』はピタリと動きを止める。
そしてボロボロと、その金属の体が崩壊していった―――。
◇◇◇◇◇
地上に降り立ち、あたしはマシロの傍へと近付く。
マシロの手には、『星霊』のコアと全く同じ色と形の結晶体が浮かんでいた。
その結晶体は、『星霊』の残骸を吸収していた。
そして吸収が終わると、今度はマシロの右手のブレスレットへと吸い込まれていった。
その直後、マシロの身に変化が起きた。
マシロの背中には、『星霊』ほどの大きさではないにせよ、二門の砲塔が新しく装備されていた。
「これが、新しい魔装……」
「これで遠距離にも対応出来るようになったね」
「そうね。しばらくはマシロに頼りきりになっちゃうかもしれないけど……」
「いいよ。その代わり、近接戦はお願いね?」
「ええ、いいわよ」
そう言葉を交わし、マシロと微笑み合う。
イレギュラーだったとはいえ、強大な敵を打ち倒した直後だったからか、あたしもマシロもリラックスした状態になっていて、近付いてくる気配を察知することが出来なかった。
いや……出来ていたとしても、反応は出来なかったに違いない―――。
◇◇◇◇◇
クロナちゃんと話し合っていると、キィィィン……という甲高い音が聞こえてきた。
辺りを見回すけど、ベアトリーチェさん達の車列の他に、周囲には何の影も形もない。
気のせい? と思った直後、わたし達の近くの地面が爆発した。
咄嗟に腕で顔を庇い、爆風と土煙をやり過ごす。
それが止んだ後、恐る恐る顔を上げる。
爆心地には、わたし達が倒した『星霊』と全く同じ姿形をしたドラゴンがスクラップに近い状態で横たわっていた。
唯一異なる点は、装甲の色が暗い赤色なことくらいか。
そしてその上に、一つの人影があった。
肩甲骨辺りまで伸びている金髪は陽光を反射し、キラキラと輝いている。
スラリと伸びた手足に均整の取れた体型は、まさに女の子が理想とする女の子の姿そのものだった。
だけど、その女の子らしさを打ち消すように、全身を闇色の鎧で覆い、両手には二本の長剣が握られていて、背中からは金属の翼が生えていた。
そして極め付けが、素顔を隠すようにバイザーをしていたことだった。
その姿を見て、わたしもクロナちゃんも全く同じ想像をしていたのか、声を揃えてポツリと呟く。
「「魔装、少女……?」」
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