第9話 VS『星霊』/type-V :カマエル 前編
フィーラとリーファの言葉に、わたしは耳を疑った。
……『星霊』!? アレが!?
姿形がドラゴンなのも驚いたし、キャノン砲みたいなのも背負ってるのは意外だった。
それよりも、真っ赤な体躯は威圧感を感じさせると共に、何処か神聖さすら漂わせていた。
「二人共、今は戦わないで!」
「今の二人の実力じゃあ、万に一つも勝ち目がない!」
すると、妖精達はそう言ってくる。
賢明な者であれば、ここは大人しく妖精達の言葉に従うのだろう。
だけど……。
「……それは出来ないよ。それに、全く勝ち目がないわけじゃないんでしょう?」
「それは……」
「なら、今ここで倒さなくちゃ。遅かれ早かれ、『星霊』とは戦わなくちゃいけないんだしね。……行ける、クロナちゃん?」
「ええ。それとあたしもマシロと同意見よ。喩え無謀でも、倒せる時に『星霊』は倒さないと」
「だよね。……それじゃあ、行くよ!」
わたしとクロナちゃんは翼を羽ばたかせ、『星霊』に向かって一直線に飛んでいく。
すると『星霊』はわたし達の方に顔を向け、体を回転させる。
そして首をもたげ、キャノン砲をわたし達の方に向ける。
「……っ!? クロナちゃん!」
「分かってる!」
わたしとクロナちゃんは左右に分かれ、キャノン砲の射線上から離れる。
そのすぐ後に、キャノン砲から二条の極太のビームが放たれた。
「うわっ!?」
ビームの直撃は避けられたけど、ビームが空気を切り裂いた衝撃波を受けて、わたしはバランスを崩す。
衝撃波は地上にも届いていたようで、車が何台か滑ったり転がったりした。
……衝撃波だけでコレとか……もしビームが直撃したら跡形もなく消え去るんじゃ……。
そんな悪い想像が、わたしの頭を
すると、『星霊』はわたしの方に頭を向け、口を大きく開く。
そしてそこから、キャノン砲ほどではないけど、そこそこの太さの一条のビームがわたし目掛けて放たれた。
「マシロ!!」
ボーッとしていたわたしは反応が遅れたけど、クロナちゃんが間一髪の所でわたしの手を引っ張って射線上から退避してくれた。
「あ……ありがとう、クロナちゃん」
「お礼はいいわよ。それより……ボーッとしてたら、すぐに死ぬわよ?」
「うっ……ゴメン」
「悪いと思ってるなら、とっととあの『星霊』をやっつけるわよ!」
「……うん!」
クロナちゃんの言葉に頷き、わたしは大剣を握り締めながら『星霊』に向かって飛んで行った―――。
◇◇◇◇◇
マシロと共に『星霊』に接近する中、あたしはさっきの事を思い返していた。
赤い『星霊』は背中の砲塔からビームを発射した後、砲塔の後部からフィンを露出させて放熱していた。
だからたぶん、砲塔からの射撃は連射出来ないに違いない。
口からのビームも、砲塔ほどではないにせよ、クールタイムは必ずあるハズ。
だから今が、『星霊』に接近出来る絶好のチャンスだった。
でも……『星霊』の能力はあたしの予想を遥かに上回っていた。
『星霊』は首をもたげると、二門の砲塔の隙間に背ビレを露出させる。
そしてその背ビレからなんと、無数のミサイルを放ってきた。
「マシロ! 避けて!」
「うん、分かってる!」
あたしとマシロは縦横無尽に飛び回り、ミサイルを避けていく。
でもその中で、あたし達の後を追うミサイルもあった。
もしかしなくても、追尾型ミサイルだろう。
「くっ……!」
なんとか振り切ろうとするけど、追尾型ミサイルはしつこく追ってくる。
マシロの方もあたしと似たような状況だけど、彼女の方が状況が悪かった。
追尾型ミサイルに気を取られ過ぎて、普通のミサイルへの注意が疎かになっていた。
そして回避出来なかったミサイルが、マシロに命中する。
「きゃあっ!」
「マシロ! きゃあっ!」
マシロの方に気を取られて、あたしも被弾してしまう。
一度被弾したらもうおしまい。
あたしもマシロも、次々と襲い掛かってくるミサイルを避けられず、防御に専念するしかなかった。
タコ殴りって、こういう状況の事を指すのだろう。
四方八方から襲い来るミサイルは、脅威以外のナニモノでもなかった。
すると、ガシャン! という何かが閉じる音が聞こえてきた。
……もしかして、放熱が終わった!?
悪い予想というのはよく当たり、その音が響くと同時にミサイルによる猛攻も嘘のように止んだ。
そしていつの間にか二門の砲塔の射線上に誘導されていたあたしとマシロに、銃口が向けられる。
飛行しての回避は間に合わない、と悟った直後、砲塔からビームが放たれた―――。
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