第55話 最後の『星霊』


『星霊』のコアを回収し変身を解除した後、マシロと共に避難したリースさん達の下へと向かう。


 ちなみに、今回新たに追加された魔装は、肩部ビーム砲に腕部ビーム砲、ワイヤーアンカーに双剣だった。


 腕部ビーム砲が追加されたおかげでいちいちビーム砲を展開して射撃する手間が省けるようになったし、双剣が追加されたので近接戦闘も小回りが利くようになった。


「あと一つ、かな?」

「そうね」


 マシロの言葉に、あたしはそう返す。

 これまで九体の『星霊』のコアを回収していて、残りはtype-Ⅱの『星霊』だけだった。

『星霊』の名前の法則性から、マシロはラジエル、あたしはベルゼブブで間違いない。


 というか、異世界にも生命の樹:セフィロトと邪悪の樹:クリフォトの概念がある事が驚きだった。

 それを言ったら、クトゥルフ神話の邪神の名前がある事にも驚きだけど……。


 そんな事を考えていたら、リースさん達の下へと辿り着いていた。


「二人共、無事だったか。それで……あの敵は?」

「きちんとマシロと二人で倒しましたよ」

「そうか……では、街に戻るぞ」


 それからあたし達は、ルビーの街へと戻って行った―――。




 ◇◇◇◇◇




 シャーロットさんからもお礼を言われた後、宿屋の部屋で妖精達から新たな情報が伝えられた。


「最後の『星霊』の居場所を見つけたよ!」

「この街から北にある山にいるよ!」

「そう……今日は疲れたから、明日以降ね。今はゆっくり休まないと」

「うん、そうだね」

「それともう一つ、伝えておくね!」

「キミ達を元の世界に戻すには、ヨグ神殿にある転移魔法陣を使わないといけないんだ」

「その神殿って、何処にあるの?」


 マシロがそう尋ねる。


「『星霊』がいる山……レムリア山の山頂だよ」

「それじゃあ……『星霊』を倒したその足で神殿に向かえばいいわけ?」

「そうなるね!」

「元の世界に帰れる……」


 そう思うと、自然とやる気がみなぎってきた。

 ハルの事は少し気掛かりだけど、転移する前に連絡すればいいか……。


 ……この時のあたしは、そう楽観的に考えていた―――。




 ◇◇◇◇◇




 翌日。


 クロナちゃんが運転するバギーでレムリア山の麓まで向かい、そこから魔装で空を飛んで『星霊』のいる場所まで向かう。

 魔装で空を飛べなければ、山登りで体力をいくらか削られていたに違いない。


 すると、山の中腹辺りで二体の『星霊』を見つけた。

 片方はライトグレーの装甲で、もう片方はダークグレーの装甲だった。

 休息中なのか、『星霊』達は地面に寝そべっていた。


 その『星霊』達がわたし達に気付く前に、先制攻撃を仕掛ける。

 背中、両肩、両腕、両腰のビーム砲を展開して、ライトグレーの『星霊』の方に八つの銃口を向ける。


 そしてほぼ最大出力で、ビームを放つ。

 クロナちゃんもわたしと同じように、ダークグレーの『星霊』にフルバーストしていた。


 ビームは『星霊』に直撃した――かに見えたけど、全くの無傷だった。

 隣を見ると、クロナちゃんも同じみたいだった。


「……おかしくない? 『星霊』と言っても、フルバーストで無傷なんて……」

「『邪隷』とか?」

「それなら、黒い靄が全身を覆っているハズでしょ?」


 無傷だったカラクリをクロナちゃんと考察していると、『星霊』の方に動きがあった。


 二体の『星霊』は起き上がると、翼を大きく広げる。

 そして翼を大きく震わして――翼が羽のように無数に分裂した。

 その羽は、わたし達の方に向かって来ていた。


「くっ……!?」

「きゃっ……!?」


 雨のように襲い掛かってくる羽を全力で回避しつつ、わたしの頭にはある単語が浮かんでいた。

 この動き……本体から離れて自動で動くコレは―――!


 クロナちゃんもわたしと同じ事を考えていたようで、同時に叫んでいた。


「――ビット!!」


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