第56話 VS『星霊』/type-Ⅱ:ラジエル&type-Ⅱi:ベルゼブブ


 ビットを回避しつつ、あたしは背中にマウントされている双剣を手に取る。

 大剣よりは、小回りが利くからだ。


 ビットは縦横無尽に宙を飛び回り、中にはあたしに向かって飛んでくるモノもあった。

 それらを双剣で片っ端から叩き落としていく。


 ついでと言っては何だけど、その隙に両腕の前腕部に新たに装備されたビーム砲で、『星霊』本体に向かってビームを放つ。


 だけどビームが到達する前に、ビットが何枚か重なり合って盾を形成して防いでいた。

 さっきのフルバーストも、それで防がれたに違いない。


 そんな事を考えていると、不自然に宙に浮いているビットがいくつか視界に入った。

 不思議に思っていると、そのビットからビームが放たれた。


「くっ……!?」


 なんとか双剣とガントレットで致命傷だけは免れたけど、左脇腹と右頬をビームが掠った。


 すると今度は、ビットが次々とあたしに襲い掛かってくる。

 ビットは一枚一枚がとても鋭利だから、貫かれたら一たまりもない。


 ビットの餌食にならないように回避しつつ、一旦『星霊』から距離を取る。

 するとビットが、あたしを追い掛けてきた。


「丁度いいわ!」


 あたしは上下逆さまになりながら、背中のキャノン砲を展開する。

 そして一列になってあたしを追い掛けてきたビットに向かって、ほぼ最大出力でビームを放つ。


 その攻撃で大半のビットは撃ち落としたけど、撃ち漏らしたビットはあたしに向かってビームを放ってきていた。


 それの回避とキャノン砲の収納を同時に行いつつ、本体である『星霊』に向かって突撃していく。


『星霊』もあたしの姿を視界に捉えたようで、その口からビームを放ってくる。

 それをあえてギリギリで回避する事で、『星霊』のビームを利用してあたしを追尾していたビットを撃ち落とす。


 そして『星霊』の目の前までやって来た所で、ガントレットからワイヤーアンカーを射出して『星霊』の口にフックを掛ける。

 そのまま減速しつつ懐まで潜り込み、ビーム砲を全て展開する。


「これで終わりよ!」


 そう叫び、ほぼ至近距離からフルバーストをかます。

 絶大な威力を物語るように、『星霊』の体は少し浮き上がっていた。


 ビームの放出が終わると、『星霊』の体にはポッカリと大きな穴が空いていた。

 そして『星霊』はその体を、ダークグレーの結晶体へと変化させた。


 これで、最後の『星霊』も回収する事が出来た―――。




 ◇◇◇◇◇




 クロナちゃんの方を見ると、彼女はすでに『星霊』を下していた。


 ……わたしも頑張らないと!


 そう意気込むけど、ビットの回避で精一杯だった。


 両手に双剣を構えているから、近くまで来たビットを叩き落とす事で致命傷だけは免れているけど、いつ防戦一方のこの状況が崩れるかは時間の問題だった。


 すると突然、ビットのいくつかが撃墜された。

 見ると、ビットを撃ち落としたのはビットだった。

 訳が分からないでいると、クロナちゃんの声が響いた。


「マシロ! 援護するわ!」

「ありがとう、クロナちゃん!」


 見ると、クロナちゃんは今さっき倒した『星霊』の力を使って、ビットを展開していた。

 さっきのビットも、クロナちゃんの援護だろう。


 クロナちゃんにお礼を言いつつ、わたしは『星霊』に向かって突撃していく。

 ビットがわたしを追い掛けてくるけど、クロナちゃんのビットがわたしに近付く事を阻んでくれていた。


 ありがたいと思いながら、『星霊』の口から放たれたビームを回避し、懐に潜り込む。

 そして両手に持っていた双剣を『星霊』の体に根元まで突き立てる。


『星霊』は苦しそうに身悶えるけど、まだ終わらない。

 背中にマウントしていた大剣を取り、それも『星霊』の体に突き立てる。


 それが決定打となったのか、『星霊』はピクリとも動かなくなった。

 そしてその姿を、正八角形の結晶体へと変化させる。


 それを回収し、クロナちゃんと合流する。

 するとフィーラとリーファが、口を開く。


「おめでとう! これで全ての『星霊』は回収出来たよ!」

「後はヨグ神殿で、『星霊』の力を全て使って異界の門を開くだけだよ!」

「行きましょう、マシロ。元の世界に帰る時よ」

「そうだね、クロナちゃん。早く行こう」


 クロナちゃんとそう言葉を交わし、わたし達は山頂にあるというヨグ神殿まで飛んでいく。


 ……そこで待ち受けている、邪悪な存在達の事など知らずに―――。


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