第7話 邂逅 後編


 マシロと別れたあたしは、地上に残っているグリフォン型の魔侵獣へと向かって行く。

 その傍らには騎士風の男性とお姫様風の女性がいるけど……状況からして、この魔侵獣に襲われたに違いない。


 そんなことを思いながら、あたしは剣を握り直して大きく振りかぶる。

 そして降下の勢いを乗せ、上段から縦におもいっきり振り下ろす。


 だけど、グリフォンはその攻撃を難なく回避する。

 そして攻撃を外したあたし目掛けて、タックルを仕掛けてきた。


「ぐっ……きゃあっ!」


 剣を盾にして致命傷だけは避けるけど、タックルの勢いだけは殺せずにそのまま吹き飛ばされる。

 そして木に背中からぶつかり、ずるずると地面へと落ちる。


「キミ! 大丈夫か!?」

「……なんとか」


 騎士風の男性の質問に、あたしは剣を支えにしながら立ち上がる。

 背中が少し痛いけど、戦闘に支障が出るほどではなかった。


 するとグリフォンは再び、タックルを仕掛けてくる。

 さっきの二の舞は御免被りたいと思い、剣の柄を握り締めながら精神を研ぎ澄ます。


 そして目の前までやって来たその時、剣をおもいっきり横薙ぎに一閃する。

 さっき翼を斬り落とした時、もしかしたら間接部は脆いんじゃ? と思ったから、グリフォンの膝を狙った。


 その予想は的中し、グリフォンの左足を斬り落とすことに成功した。

 足を失ったグリフォンはそのまま、左半身を下にして地面を滑っていく。


 足を二本失い、翼ももがれたグリフォンに近付き、トドメを刺す。

 バターでも切るように、グリフォンの頭部が胴体から斬り落とされた。


「ふぅ……あっちはどうかしら?」


 肺に溜まっていた空気を吐き出しつつ、あたしはマシロの方へと目を向けた―――。




 ◇◇◇◇◇




 グリフォンの攻撃を避けつつ、わたしは魔法で反撃していく。

 羽を次から次に飛ばしてくるから、接近出来ずにいた。


 ……遠距離攻撃が出来る魔装があれば、とっても楽なんだけどなぁ……。


 そんなことを思うけど、無い物ねだりしても無いモノは無い。

 それなら、今ある手札で頑張るしかなかった。


 そこでふと気付いた。

 グリフォンが飛ばしてくる羽の数が、最初の頃より少なくなっていた。

 さすがに無尽蔵、というわけではなかったようだ。


 そして当然、羽の数が少なくなるということは、グリフォンに近付く隙が出来るわけで……。


「……今!」


 わたしは翼をおもいっきり羽ばたかせて、グリフォンへと一直線に接近する。

 グリフォンはわたしを近付けさせまいと羽を飛ばしてくるけど、その数ももう数える程度しかなかった。


 致命傷になりそうなヤツだけ剣で打ち落とし、速度を緩めずに接近する。

 そして辻斬りのように、すれ違い様に剣を横薙ぎに一閃する。


 たったそれだけでグリフォンは上下に真っ二つになり、地上へと落下していく。

 落下予想地点は……クロナちゃん達から離れてるから問題はないだろう。


 それを確認してから、わたしはゆっくりと地上へと降りていった―――。




 ◇◇◇◇◇




 地上へと降り、変身を解除する。

 クロナちゃんの方も無事にグリフォンを討伐し、変身を解除していた。


「助かりましたわ。ありがとうございます」


 すると、お姫様みたいな格好をした女のヒトが、わたし達に近付いてきた。

 その後ろには、鎧を着た男のヒトが控えていた。


「あ……はい」

「申し遅れました。わたくし、ダイヤモンド帝国第一皇女、ベアトリーチェと申します。こちらはわたくしの近衛騎士のラインハルトです」

「ラインハルトです」


 男のヒト―ラインハルトさんは、右手を左胸に当てる。

 おそらく、騎士風の敬礼なのだろう。


「助けていただいたお礼をしたいのですが……時間は大丈夫ですか?」

「ええ、まあ……あたし達に特に予定はないので」


 女のヒト―ベアトリーチェさんの質問に、クロナちゃんがわたしの代わりに答えてくれた。

 それを聞き、ベアトリーチェさんは小さく頷く。


「それでは向かいましょうか。この国の首都である帝都、ディアマンテへ」


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