第6話 邂逅 前編


 翌日。

 少しでも魔装に慣れるようにと、妖精達の案内で街の近くにある森までやって来ていた。


「はあああっ!」

「やあああっ!」


 あたしはマシロと協力して、ゴブリンみたいな見た目の魔侵獣を次々と屠っていく。


 あたし達の使う魔装が強いのか、それとも魔侵獣が弱いのか分からないけど、大体一、二撃で倒せていた。

 でも、数だけは多いからそれなりに苦戦した。


「これで……!」


 最後の一体を倒し、あたしは周囲を確認する。

 見たところ、倒し損ねた魔侵獣はいないようだ。


「今ので最後、かな?」

「そうみたいね」


 変身を解除したマシロにそう答えつつ、あたしも変身を解除する。


「お疲れ様、二人共!」

「戦いにも大分慣れてきてるよ!」

「これなら、『星霊』を倒せるだけの実力を身に付けるのも予想より早いかもね!」

「そうだね!」


 今回もあたし達の戦闘を手助けしなかった妖精達が、なんか言ってる。

 それを半分無視しつつ、マシロと協力してコアの摘出を行う。


 それが粗方片付いた後、街に戻ろうとすると―――。


『きゃああああ!』


 森の奥の方から、女性の悲鳴が聞こえてきた。


「……っ!? 悲鳴!? 助けに行かないと! 《変身》!」

「ちょっとマシロ!?」


 マシロは再び変身すると、悲鳴が聞こえた方向へと飛んで行ってしまった。


「まったく……《変身》!」


 あたしも再び変身し、マシロの後を追った―――。




 ◇◇◇◇◇




 森の奥で、とある一団が魔侵獣に襲われていた。

 その一団が使っていたらしい車両は横転し、車両の周りには騎士のような見た目のヒト達が地面へと転がっていた。


 一団を襲った魔侵獣はグリフォンに似た見た目をしており、一体だけで一個師団を壊滅出来るだけの戦闘力を有していた。


 それが二体。

 控えめに行って、余程のことがない限りは生存は見込めなかった。


 そんな中、未だに両の足で立っている甲冑の青年が、長剣を構えながら傍らにいるドレスを着た少女に声を掛ける。


「姫様! ここは自分に任せて、姫様は早くお逃げください!」

「でも! 相手はグリフォンなのですよ! いくら貴方でも無謀です!」

「確かに無謀かもしれませんが……何。姫様が逃げ仰せるだけの時間は稼ぎますよ!」


 そう言うと青年は、長剣を強く握りグリフォンへと立ち向かって行く。

 否、行こうとした。


 キィィィン……という甲高い音が聞こえたと思った刹那、片方のグリフォンの片翼が半ばから斬り落とされた。


「は……?」

「え……?」


 突然の出来事に青年と少女が思考を停止していると、再び変化が訪れた。


 また甲高い音が聞こえたと思ったら、片翼を落とされたグリフォンのもう片方の翼も、今度は根元から斬り落とされた。


「マシロ! 大丈夫……みたいね」

「うん。……あ。勝手に飛び出しちゃってゴメンね、クロナちゃん?」

「まあ……いいわよ。やっちゃったことは。でも……マシロ。まさか身体が勝手に動いたとか、そんな理由で飛び出したの?」

「ううん。悲鳴が聞こえたから、助けなきゃって思って。……決して身体が勝手に動いたとか、そんな理由ではございません」

「何故に敬語……それと、視線を逸らしてたら意味がないんじゃないの?」

「そんなことより……あの魔侵獣を倒して、あそこにいるヒト達を助けないと」

「そんなことって……はぁ。マシロの言う通りね。ここは一つ、人助けでもしますか」


 青年と少女の視線の先には、蒼白と紅黒の鎧を身に纏った二人の少女が、宙に浮いていた―――。




 ◇◇◇◇◇




 クロナちゃんと協力して、ゲームとかに出て来るグリフォンみたいな見た目の魔侵獣へと攻撃を仕掛ける。


 二体いるけど、片方はわたし達の攻撃によって翼をもがれているから、それほど脅威じゃないだろう。


 問題はもう片方の方だった。

 翼が健在なグリフォンは飛び上がると、宙に浮かぶわたし達目掛けて突進してきた。

 それをクロナちゃんと左右に分かれて回避する。


 突進を回避されたグリフォンは反転すると、その翼を大きく羽ばたかせる。

 そして翼から、鋭利な羽が雨のように降り注いできた。


「くっ……!」


 当たったらタダじゃ済まないと直感的に思い、翼を動かして全力で避けていく。

 クロナちゃんの方も、ひょいひょいっと避けていた。


「マシロ! こっちは任せたわよ! あたしはあっちのグリフォンの相手をするから!」

「分かった! 無理しないでね!」


 そう言葉を交わすと、クロナちゃんは地上にいるグリフォンの方へと向かって行った。

 そしてわたしも、頭上に浮かぶグリフォンの方に攻撃を仕掛けて行った―――。


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