第2話 初代魔装少女VS『対の魔王』 後編


 スピカを再び手に取り、音を置き去りにして二人に斬り掛かる。

 だけど、二人は余裕を持ってぼくの斬戟を回避する。


「《ボルケーノ》!」

「《ブリザード》!」


 そして至近距離から、魔法を放ってきた。

 炎と吹雪をなんとか回避し、一旦距離を取る。

 ファーストアタックはお互いに失敗しているけど、こんなのはただの挨拶だった。


 これから更に戦闘は激化する事が予想される。

 しかも、邪神が現れるまでの制限時間付きだから、一撃必殺級の攻撃を繰り出し続けなきゃいけなくなる。

 そうなると、後輩二人にも被害が及ぶ。


 だから――。


「【世界タヴ】!」


 スピカの柄に取り付けてあるリボルバーを回して、後輩二人の周りにドーム状の防御壁を形成する。

 これさえあれば、戦闘の余波が彼女達に襲い掛かる事はない。


 この力は、ぼくがこっちの世界にした時に得た特殊能力の一つで、タロットカードにちなんだ名前だったから、ぼくは「アルカナフォース」と呼んでいた。


 元々アルカナフォースはカードの形をしていたけど、『スターズ』を製造する際、イブちゃんに無理を言ってリボルバーでカードの選択を出来るように、カード自体は弾丸の形に変えてもらっていた。

 これによって、使い勝手は劇的に良くなった。流石天才美少女科学者のイブちゃん。


 閑話休題。

 リボルバーを更に回し、アルカナフォースを選択する。


「【女帝ダレット】、【皇帝ヘー】!」


 右手の剣には炎を、左手の剣には氷を纏わせる。


「ふぅ〜ん? まだそんな力を使ってるんだ? それじゃあこっちも、遠慮なく使わせて貰おうかな? 顕現、【サンダルフォン】」

「顕現、【ナヘマー】」


 二人はそう言うと、その手に大剣が握られた。

 そして刀身に、禍々しい魔力が纏わりつく。


 まあ元々『星霊』は二人の肉体だったんだから、後輩二人が使っていた魔装をあの二人が使う事に違和感も疑問も感じなかった。

 むしろ、使わない方がおかしいまである。


 二人が何かを仕掛けてくる前に、こっちから攻撃を仕掛ける。

 一瞬で二人の間に潜り込み、両手の剣を横薙ぎに一閃する。

 だけど二人は、大剣でそれを防ぐ。


「《トルネード》!」

「《サンダーボルト》!」


 正面から竜巻が、頭上からは雷が襲い掛かってくる。

 ぼくはリボルバーを回し、対応するアルカナフォースを呼び出す。


「【運命】!」


 アルカナフォースを発動させると、竜巻はぼくの前で不自然に曲がって上空へと向かって行き、雷はぼくのすぐ近くに落ちる。


「小細工を! 顕現、【ザドキエル】!」

「顕現、【ルキフグス】!」


 二人の両腕にビーム砲が装着され、至近距離から禍々しい色のビームを放ってきた。

 ぼくはオーバーロードを発動させて二人から一瞬で距離を取る――けど、ビームはぼくを追尾してきた。


 スピカを剣形態ブレードモードから銃形態ブラスターモードに変形させ、ビームで相手のビームを撃ち落とす。

 ビームの威力はぼくの方が上だったみたいで、相手のビームを押し切った。


 次の攻撃を……と思った所で、神殿が激しく揺れた。

 それに呼応するかのように、魔法陣は眩しいほどに輝いていた。

 それを見て、二人は歓喜の声を上げる。


「ああ! とうとう我等が神々がご降臨なされる!」

「これで世界は、混沌に包まれる!」

「させるか!」


 魔法陣を破壊しようとビームを乱射するけど、その尽くを二人の魔法によって阻まれてしまった。

 そして神殿の揺れも激しくなり、魔法陣は更に輝きを増していた。


 邪神の降臨の阻止も大事だけど、それよりもまず優先するべき事は……。


「……くっ!」


世界タヴ】を解除し、スピカを背中にマウントしてから後輩二人の身体を肩に担ぐ。


「逃げるの?」

「逃がすと思ってるの?」

「馬鹿言わないで。お前達は必ず消滅させる。『対の魔王』、セフィラ、クリファ。その日が来るまで、首を洗って待ってるといい」


 そう言い残し、ぼくは高速で飛行してヨグ神殿から離れて行った―――。


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