第52話 VS『邪隷』 中編


 突然現れたステラに、あたしは思考が停止していた。


「はっ? えっ??」

「大丈夫そうだね。『邪隷』……ああ。あの『混沌の魔力』に汚染された『星霊』の事だけど、片方はぼくが相手するから、もう片方はキミ達に任せるよ。二人なら大丈夫でしょ? 魔装少女なんだから」


 そう言い残すと、黄金に輝くオーラを纏って暗い色合いの方の『星霊』モドキ……いや、ステラの言葉を借りるなら『邪隷』の方に向かって行った。


「クロナちゃん! 戦える?」

「……ええ! いけるわ!」


 マシロの問い掛けにそう答え、あたしは明るい色合いの『邪隷』に向かって攻撃を仕掛けた―――。




 ◇◇◇◇◇




 ぼくはオーバーロードを発動させ、『邪隷』に突撃していく。


『星霊』はともかく、邪神の片鱗である『混沌の魔力』に汚染された『邪隷』相手に手加減なんてする必要は無かった。

 と言うか、する余裕すら無い。


『邪隷』はぼくを敵だと認識したようで、四つの首から禍々しいビームを放ってくる。

 それを余裕を持って回避し、ヴァルゴ専用の一対の魔装であるスピカを銃形態ブラスターモードに変化させ、『邪隷』の胴体目掛けてビームを発射する。


 オーバーロードの効果もあって出力は増していて、極太の二条のビームが『邪隷』の胴体に命中する。

 しかし、表面装甲を僅かばかり融解させたに過ぎなかった。


 通常なら今の一撃で倒しているのだけど、そうならなかった原因ははっきりと分かっていた。


「……やっぱり制限したままじゃこの程度か」


 イブちゃんに無理言って行った反転が原因である事は明白だった。

 それだけ、ぼくが対邪神戦を想定して基礎設計した『スターズ』のスペックは常軌を逸している。自分で言うのもなんだけど……。


 チラリと、後輩二人の方に目を向ける。

 二人もオーバーロードしているようで、あかあおのオーラが軌跡を描いていた。


 ……二人になら別に見られてもいいか。


 そう思い、ぼくはヴァルゴの反転状態を停止させ、元の姿へと戻した―――。




 ◇◇◇◇◇




 クロナちゃんはオーバーロードを発動させて、紅いオーラをその身に纏う。

 わたしもオーバーロードして、蒼いオーラを身に纏う。

 そしてクロナちゃんと共に、明るい色合いの『邪隷』に攻撃を仕掛ける。


『邪隷』はその四つの首から禍々しいビームを放ってくるけど、それを余裕を持って回避する。

 オーバーロードの効果か、戦闘能力が大幅に上昇していた。


 クロナちゃんは『邪隷』の懐に潜り込み、左腕のガントレットからツメを伸ばして『邪隷』の装甲にツメを突き立てる。

 しかし、その攻撃は装甲に引っ掻き傷を付けただけの結果となった。


「くっ……!?」


 クロナちゃんは急いで離れ、翼の付け根に装着されていたビーム砲による一撃を回避する。


 わたしはと言うと、『邪隷』の真上に回り込み、背中のビーム砲を展開していた。

 そして『邪隷』の背中目掛けて、ビームを放つ。


 いつもより威力が増している感じがするビームは『邪隷』の背中に命中し、仰け反らせる事に成功した。

 逆に言えば、それだけだった。


 背中の装甲は融解し、攻撃の余波で翼の付け根に装着されていたビーム砲は砲身が少し歪んでいた。


 ダメージを与えた感じはするけど、致命傷とまではいかなかったらしい。

 その証拠に、『邪隷』のツメがワイヤーアンカーのように射出されていた。


 ワイヤーアンカーは蛇のようにうねうねと動き、わたしとクロナちゃんの方へと飛んでくる。


 拘束されたら絶対にタダじゃ済まない事は明白だった。

 だって、ワイヤー全体を禍々しいオーラが包み込んでいるから。


 空を縦横無尽に駆け巡り、捕まりそうになったワイヤーを大剣で叩き落としていく。

 その一瞬の隙を突いてビームを放ってくるけど、それは出力が増している腰のビーム砲で相殺する。


 すると、ステラちゃんのいる方で変化が起きた。

 ステラちゃんの魔装が、闇色から純白に変化していた。


 その姿はまるで、女神様のようだった―――。


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