第12話 VS??? 後編
謎の女の子のビームに徐々に押されていく中、不意に背中に感じていた圧力が消えた。
その直後、わたしの斜め上から新たなビームが放たれた。
そのおかげで、女の子のビームをいくらか押し返すことが出来た。
「何……!?」
頭上を見上げると、わたしと同じくキャノン砲を装備したクロナちゃんがビームを放っていた。
「マシロ! このまま押し返すわよ!」
「う……うん!」
何が何だかちょっとだけ分からないまま、わたしはビームの出力を最大まで上げる。
クロナちゃんは最初から最大出力で放っているのか、ビームの出力が上がるようなことはなかった。
するとわたし達のビームが、女の子のビームを押し返していく。
そして―――。
◇◇◇◇◇
ドバンッ!! と、ビームが謎の少女に直撃し、盛大な爆発が巻き起こる。
あたし達のビームが少女のそれを上回り、そして押し返した。
その結果、今の爆発が起こった。
もうもうと煙が立ち込める中、あたしはマシロの隣に降り立つ。
あの時、コアを手にした瞬間、スクラップが瞬く間にコアに吸収された。
そしてあたしのブレスレットの中へと吸収され、マシロと同様にあたしの背中にも二門の砲塔が追加された。
それからぶっつけ本番でビームを放ったけど……上手くいったようだ。少なくとも射撃の方は……。
ブワッ! と風が巻き起こると、煙を晴らしていく。
そしてその中から、無傷の少女が姿を現した。
「嘘でしょ……」
二人掛かりでのビームの直撃を受けても無傷とか……冗談だと思いたかった。
「……こんなモノか。今代の魔装少女は……」
「……? 今代……?」
少女の言葉に、マシロは意味が分からないといった風に首を傾げる。
あたしもマシロと似た感想を抱いていた。
……まるで、あたし達の前に先代とも言うべき魔装少女がいたような口振りじゃないの。
そう思っていると、少女は銃形態にしていた剣を元の姿に戻す。
そしてそれらを両手に構え直しつつ、両足を揃えて地面から浮かび上がる。
「……どうせ最後だと思うから、名乗らせてもらう。ぼくは……ステラ。この世界の裁定者にして、調停者だ。平和を乱すモノは何であろうとも消滅させる。それがたとえ、今代の魔装少女であろうとも――!」
少女―ステラはそう言うと、一瞬よりも短い刹那の間に、あたし達との距離を詰めてきた―――。
◇◇◇◇◇
女の子―ステラちゃんの接近に対応し切れず、わたしもクロナちゃんもステラちゃんの回転斬りをモロに受ける。
その威力はまるで、丸太で殴られたように重かった。
「がっ……!」
「ばっ……!」
左右に吹き飛ばされ、何度かバウンドした後に地面を転がっていく。
クロナちゃんはなんとか立ち上がろうとしているけど、ほとんど体力が残っていないのか上手く立ち上がれずにいた。それはわたしも同じだった。
ほとんど死に体なわたし達だけど、ステラちゃんの攻撃はこれで終わりじゃなかった。
むしろ、トドメを刺しに来ていた。
「……フェザービット、展開」
すると、ステラちゃんの翼が無数に分裂し、フレーム部だけを残して金属の羽がステラちゃんの周りを浮遊する。
そしてステラちゃんが緩く右手を挙げると、羽がわたし達目掛けて一斉に襲い掛かってくる。
「ぐっ……きゃああああっ!!」
無数の羽が絶え間無くわたしの身体に傷を付けていき、その猛攻に晒されながらわたしは意識を失った―――。
◇◇◇◇◇
二人の魔装少女を無力化したステラは、展開していた羽を翼に格納する。それと共に両手の長剣も背中に背負う。
少女達には無数の傷痕はあれど、命に別状はなかった。
元より、ステラに二人を殺害する意思など微塵もなかった。
にも関わらず二人に攻撃を仕掛けたのは、純粋に今代の魔装少女の実力を知りたかったからに他ならない。
それと、『星霊』type-Ⅴi/アスモデウスを討伐したのは、ステラの不手際によって発生してしまった、現在進行形で進んでいるこの世界の異常に対しての責務に近かった。
その戦場がたまたま、マシロとクロナの近くだったのは運命の悪戯でしかないのだが……。
ステラは最後に地面に倒れ伏すマシロとクロナの方に目をやり、翼を羽ばたかせてその場から急速に離脱する。
自らの拠点へと帰還する最中、ステラはバイザーに手を掛け、そして素顔を晒す。
もしその場にステラ以外の誰か―更に言うのであれば、この世界に元から住んでいるヒトが彼女の素顔を見れば、驚きを隠せなかったであろう。
何故なら、彼女の素顔は本来であればあり得ない、生きているハズのない人物の顔であったからだ。
「……あの娘達がぼくの後輩に当たる魔装少女、か……これからの成長は楽しみだけど、その前にアイツらを――『対の魔王』を探し出さなきゃ。アイツらの生け贄になる前に……」
ステラというのはただの偽名。
彼女の本名は
この世界に『大賢者』セイラとして名を残した、『初代』魔装少女だった―――。
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