第13話 謁見
「…………………………うっ」
瞼を刺激する光によって、わたしはゆっくりと目を開ける。
まず最初に目に映ったのは、全く知らない天井だった。
あの後どうなったんだっけ? と思いながら身体を起こそうとすると、全身に鈍い痛みが駆け巡った。
「ぐっ……」
それでもなんとか上半身を起こし、自分の身体を確認する。
こっちの世界に来てから着替えたTシャツやホットパンツではなく、ガウン……バスローブ? みたいなモノを着せられていた。
そしてその隙間から見える身体には、所々包帯が巻かれていた。
なんとなく左隣に目を向けると、そこにはベッドに横たわるクロナちゃんの姿があった。
あどけない表情で眠っている彼女の顔を見て安心感を抱いていると、ガチャリとドアが開くような音が聞こえた。
そちらに目を向けると、そこにはベアトリーチェさんと数人のメイドさんがいた。
「あら……目を覚まされましたの?」
「あ、はい……ついさっき……わたしはどれくらい眠ってたんですか?」
「そうですわね……三日ほど、でしょうか」
「三日……」
結構な期間眠りこけていたらしい。
それよりもまずは、現状を確認したかった。
「あの……ここはいったい?」
「着替えながら説明いたしますわ。……お願い」
「「「はい」」」
ベアトリーチェさんがそう言うと、メイドさん達はわたしとクロナちゃんの傍へとやって来る。
そしてわたしの着ていたモノを脱がせ、濡れたタオルで身体を拭かれ新しい包帯が巻かれていく。
抵抗する気力もないから、されるがままにしていた。
そんな中、ベアトリーチェさんが説明を始める。
「貴女方はあの闇色の鎧の人物と交戦した後、意識を失ってしまいましたの。応急措置を済ませた後、急いでディアマンテの帝城へと向かいましたわ。そこで本格的な治療を施し、現在へと至る訳です。……あ。安心してください。治療も着替えも、わたくしのお付きの女性魔法使いと侍女にやらせましたので。男性の目には触れてはおりません」
その気遣いは本当に有り難かった。
その後、お腹に優しいご飯も出してもらって、ベアトリーチェさん達は戻って行った―――。
◇◇◇◇◇
それから更に一週間後。
クロナちゃんも無事目覚め、傷もだいぶ癒えてきた。
そんなわたし達は今、この国の国家元首と謁見していた―――。
◇◇◇◇◇
あたしはマシロと共に、玉座の前に膝を着く。
こちらの世界のドレスコードなんて知りもしないから、とりあえず制服を着て謁見していた。
玉座に座るこのダイヤモンド帝国の国家元首は女性―つまり女帝で、ベアトリーチェさんをそのまま大人っぽくしたような容姿をしていた。
「初めまして。わたくしがこの国の王であるアンジェリーナ・ブリカット・ダイヤモンドです。この度は我が娘の窮地を救ってくれたようで。その褒美を取らせたいのですが……何がいいですか? 叶えられるモノであれば、出来る範囲で叶えましょう。何でも言ってください」
そう言われ、あたしはマシロと目を合わせる。
そして無言で頷き合うと、マシロが答える。
事前にベアトリーチェさんから女帝と謁見する旨を伝えられていたから、そうなった場合に何て答えるかはマシロと話し合っていた。
「では……魔侵獣が多く棲息している場所を教えてください」
マシロがそう答えると、女帝は目をパチクリとさせる。
そして何故か、マシロに聞き返す。
「そんなことでいいんですか? ほら……美味しいスイーツをお腹一杯食べたいとか、綺麗な服が欲しいとか、可愛いモノが欲しいとか……」
「あ〜……わたしって普通の女の子じゃないっていう自覚はあるので、そういうのはあまり興味が無くて……」
「そ、そう……そちらの彼女は?」
すると女帝は、あたしに振ってくる。
何かを期待するような眼差しだけど、たぶんその期待には応えられない。
「あたしもマシロと同類なので、スイーツとかオシャレには興味は無いですね。それと、あたしの希望もマシロと同じだと思っていただければ」
「そう……」
あたしの答えを聞き、女帝は見るからにガッカリとした様子を見せる。
女帝と言うから、傲岸不遜なイメージがあったけど、今の様子を見せられると何と言うか……妙な親近感を覚える。
するとそんな女帝を励ますように、玉座の傍に控えていたベアトリーチェさんが彼女の手の上に自分の手を重ねる。
「お母様、落ち込まないでください。ここは女帝として、しっかりとした姿と威厳を持ってください」
「……ベアトは母を励ましてるの、貶してるの?」
「どちらでしょうね?」
テヘッと、ベアトリーチェさんは小さく舌を出す。
それから女帝は姿勢を正し、再びあたし達の方に視線を向ける。
「コホン……貴女方の希望は分かりました。後で候補地を纏めた資料を渡します。それと、資料の受け渡しと傷が癒えるまでの間は、我が城に滞在なさってください」
「「ありがとうございます」」
女帝の厚意に、あたしとマシロは声を揃えてお礼を述べた―――。
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