第30話 VS『星霊』/type-Ⅸi:リリス
「「フルバースト!!」」
マシロと共にビームの一斉射撃を行う。
八条のビームは『星霊』へと向かって行き、命中――する直前に、『星霊』がビームの存在に気付き、ビームを回避する。
そしてあたし達の方へと、もの凄い速さで接近してきた。
「マシロ! 迎え撃つわよ!」
「うん!」
キャノン砲とビーム砲を格納し、代わりに大剣を構え直す。
マシロと左右に分かれると、あたしに狙いを定めた暗い紫色の『星霊』はすぐそこまでやって来ていた。
『星霊』はクローの付いた前足を大きく振り上げ、そしてあたし目掛けて振り下ろす。
大剣を盾にしてそれを防ぐけど、一撃の威力が重かった。
「ぐっ……!」
足下がほんの少し陥没したのを感じていると、『星霊』は左前足も振り上げる。
その足を横に薙ぎ払う動作が見えたので、右腰のビーム砲を展開して足の付け根を狙う。
ビームは命中し、ダメージを与えられたとは言い難いけど、攻撃を中断させる事には成功した。
するとフッと、大剣に掛かる圧力が消えた。
何? と思っていると、『星霊』はあたしから少し距離を取り、その場でサマーソルトみたいに一回転する。
その行動は攻撃行動だったらしく、鞭のようにしなったシッポがあたしのお腹に命中する。
そしてそのまま、盛大に吹き飛ばされる。
「ぐっ……がはっ!?」
地面を転がり、大剣を支えに何とか起き上がってお腹を擦る。
魔装が無ければ、確実に内臓がヤられていた。
そう思わせるくらいの、思い一撃だった。
見ると、『星霊』が追撃を仕掛けようと接近してきていた。
『星霊』を近付けさせまいと、あたしは冷却期間の終わったキャノン砲を左側だけ展開し、一撃必殺のビームを放つ。
だけど『星霊』はそのビームを難なく回避し、クローの付いた前足を振り下ろしてくる。
「くっ!」
あたしは地面を転がり、紙一重の所でその攻撃を避ける。
クローは地面に突き刺さり、そのチャンスを活かすべく右側のキャノン砲を展開する。
そして至近距離からビームを放つ――けど、信じられない事が起きた。
『星霊』は体を強引に捻って、ビームを回避する。
その際、右前足の膝がグチャグチャに砕け散ったけど……機械の体だからか痛みを感じていない様子だった。
三つの足で着地した『星霊』は、口を大きく開く。
何をしてくるのかを悟り、右側のキャノン砲を格納しつつ翼を大きく羽ばたかせて『星霊』の射線上から急いで離れる。
その数秒後、『星霊』の口からビームが放たれた。
あと一瞬でも離脱が遅れていたら、ビームの餌食になっていた事は間違いない。
まあ、大剣で防げなくはないけど……。
それと戦っていて気付いたけど、今回の『星霊』はこれまでの『星霊』と戦闘能力が異なっていた。
もしかしたら、近接型と遠距離型で戦闘能力に違いがあるのかもしれない。
ビームの放出が終わり、『星霊』はその口を閉じようとする。
その隙を突くように両腰のビーム砲を連射する。
丁度良いタイミングでこの魔装を手に入れられたのは、本当にラッキーだった。
ビームが何発も直撃し、『星霊』は煩わしそうに首を大きく振る。
すると翼を大きく広げ、あたしから大きく距離を取る。
その間にも、『星霊』の口だけでなく胴体にもビームを叩き込むけど……効いているようには見えなかった。
あたしから距離を取った『星霊』は、再びもの凄い速さで接近してくる。
そしてあたしを排除しようと、左前足のクローを前へと突き出す。
あたしはと言うと、精神を集中させてその時が来るのを待つ。
そして『星霊』が眼前までやって来たその時、身体をおもいっきり捻って『星霊』の突撃をかわす。
それから捻った勢いを利用して、その場で一回転して大剣を横薙ぎに振るう。
すれ違い様に斬りつけたから、『星霊』の左後ろ足しか斬れなかった。
それでも、ようやく目に見えるダメージを与える事が出来た。
『星霊』は反転し、再び突撃してくる。
だけど今度はあたしの目の前で急に止まり、その場でサマーソルトをかましてシッポによる攻撃を繰り出してくる。
今度は大剣で防げたけど、攻撃の威力を受け流すためにあえて吹き飛ばされた。
サマーソルトを終えて『星霊』が口を大きく開くのと、冷却が完了したキャノン砲と両腰のビーム砲をあたしが展開するのはほぼ同時だった。
「フルバースト!!」
『星霊』の口からは一条のビームが、あたしの魔装からは四条のビームが放たれる。
お互いのビームは中間地点でぶつかり合い――あたしのビームが押し勝った。
『星霊』のビームを跳ね返したあたしのビームは、そのまま『星霊』本体へと直撃する。
頭が首の根元から吹き飛び、背中も大きく抉れていた。
『星霊』はそのまま地面へと真っ逆さまに墜落し、地面に大きなクレーターを生み出す。
しばらく警戒していたけど、『星霊』はピクリとも動かなかった。
そして次の瞬間、『星霊』の体に異変が起きた。
残骸の部分が一ヶ所に集結し、暗い紫色の正八角形の結晶体が形成される。
その結晶体はあたしの下にやって来ると、右腕のブレスレットへと吸収された。
次の瞬間、あたしの身にも変化が起きた。
両腕前腕部に、何らかのギミックがありそうなガントレットの魔装が追加されていた。
試しにギミックを展開してみると、ガントレットの前から大きなツメが伸びた。
待望の近接型の魔装が追加され、近接戦闘で取れる選択肢が増えた。
その事を素直に嬉しく思いながら、あたしはマシロの方へと目を向けた―――。
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