第29話 新たな襲撃
「まず、この里でクーデターが起きた理由だけど……それはワシにも分からない」
「えっ? 分からないんですか?」
わたしがそう聞き返すと、アルさんは重々しく頷く。
「ああ、そうさ。里のあちこちで反乱が起きたからクーデターが起きた、という『結果』を知っているだけで、何故起きたのかという『原因』は分かっていない。まあ……ある程度の目星はついてるんだがね」
「その、目星というのは?」
ラインハルトさんがそう聞き返すと、アルさんは肩を竦めながら答える。
「里の方針にいちいち口を出してくる若者がいてね。おそらくソイツが主犯格だろうよ」
「それでは……クーデターを起こしているのは、『エルフの里』の若者達だと?」
「そうさね。今まで拘束した連中は、ものの見事に若者しかいなかったね」
「ちなみに、ですが……その主犯格とやらの名前は判明しているのですか?」
「ああ。ソイツの名はアレイ――」
「里長!」
すると、襖を凄い勢いで開けて、この屋敷までわたし達を案内してくれたヒトが慌ただしく入ってきた。
「どうしたんだい? 騒々しい」
「至急、里長の耳に入れたい情報があり……」
そう言い、アルさんの傍に跪くと、コソコソと耳打ちをする。
それを聞いて、アルさんの表情が険しくなっていく。
「……それは本当かい?」
「冗談であって欲しかったのですが……」
「まあいい。守備隊の第一から第三……いや、第五まで出して迎撃に当たらせな。分かってると思うけど、絶対に里の中に入れるんじゃないよ」
「ハッ!」
そう返事をすると、そのヒトは忍者みたいな身のこなしでアルさんの前から立ち去って行った。
それを見計らってか、ラインハルトさんがアルさんに尋ねる。
「何かあったのですか?」
「ああ。里から北東の方角に、『星霊』が二体現れたらしい。今守備隊を向かわせるよう指示を出したが、まあ……無傷では済まないだろうね」
「そうですか……クロナ、マシロ殿」
「分かってるわよ、ハル。あたしとマシロで、『星霊』を倒してくればいいんでしょ?」
ラインハルトさんが具体的な事を言う前に、クロナちゃんは彼の真意を見抜きながら立ち上がる。
そんな、お互いの事を良く理解している様子を見て、わたしはニヤニヤが止まらなかった。
「頼めるか?」
「任せなさい……マシロ」
「うん。行こう、クロナちゃん」
気を引き締め直し、そう答えつつわたしも立ち上がる。
「本当は客人にやらせる事じゃないし、言える立場でもないが……頼む。この里を守るために力を貸してくれないかい?」
「ええ」
「お任せください」
クロナちゃんと一緒にそう答え、わたし達は屋敷を出る。
そして走りながら変身し、『星霊』が出現した地点へと飛んで行った―――。
◇◇◇◇◇
守備隊はまだ到着しておらず、現場にいたのはわたしとクロナちゃんの二人だけだった。
そしてわたし達の視線の先には、『星霊』の姿があった。
その『星霊』は暗い紫色の装甲を身に纏い、両前足にはとても大きなクローが備わっていた。
そしてその『星霊』の傍には、同じクローを装備した、明るい紫色の『星霊』がいた。
二体の『星霊』はわたし達に気付いていないのか、その動きは緩慢だった。
「アレは……表と裏の九番目の『星霊』、ガブリエルとリリス!」
「一気に二体同時に現れるなんてね……骨が折れそうだわ」
「でもやるしかないよ、クロナちゃん」
「それもそうね」
クロナちゃんはそう答え、背中の二本のキャノン砲と、新しく両腰に装備された二本のビーム砲を同時に展開する。
クロナちゃんが何をしようとしているのか、手に取るように理解出来た。
わたしもクロナちゃんと同じく、キャノン砲とビーム砲を展開する。
そしてそれらの銃口を、明るい紫色の『星霊』の方へと向ける。
こういう時、なんて叫ぶのかは理解しているし、それはクロナちゃんも同じだったようだ。
「「フルバースト!!」」
わたし達からそれぞれ四条の、計八条のビームが放たれ、『星霊 』目掛けて飛んで行った―――。
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