第32話 黄金の夜明け、銀の星 前編
クロナちゃんと合流し、彼女の傍に降り立つ。
「クロナちゃん、大丈夫だった?」
「ええ。そっちは?」
「ちょっと苦戦したけど、ちゃんと倒せたよ」
見ると、クロナちゃんの両腕にもわたしと同じガントレットが新しく装備されていた。
「それじゃあ戻りましょうか」
「うん」
クロナちゃんの言葉に頷き、戻ろうとしたその時―――。
「――《サンダー》」
わたし達のモノではない、第三者の声が響いた。
わたし達は声のした方を振り向き、襲い掛かってきた雷撃を大剣を盾にして防御する。
「へぇ〜……不意打ちだったとはいえ、僕の魔法を防ぐのか」
すると目の前に、見た目はわたし達とそう年の変わらない、一人の銀髪の男の子が立っていた。
その男の子は、死神のような黒いロングコートを羽織っていた。
「アンタ……一体誰なの?」
クロナちゃんは大剣を構え、警戒心を露にしながら尋ねる。
「誰、と言われても……名乗るほどの者じゃないよ?」
「そう……それなら、さっさとあたし達の前から消えて」
「それは出来ない」
「何で?」
「キミ達が――――の、『星霊』の力を使っているからだ。その力は、この世にあってはいけない力だ。だから僕は、キミ達を排除する。そして本命を遂行する」
風が吹いて聞き取れなかったところはあるけど、男の子がわたし達を敵視している事だけは理解出来た。
それと、気になる事も言っていた。
「本命?」
「そうだ。僕の本命は――『エルフの里』を滅ぼす事だ」
「っ!? それじゃあ、クーデターを起こしたのは……!」
「クーデターとは人聞きが悪い。僕達は義挙しただけだ。それを里長が……いや、あの『魔女』が都合の良いように情報操作しただけさ」
「『魔女』?」
魔法があるんだから、『魔女』と呼ばれるヒトもいてもいいと思うんだけど……その単語とアルさんが上手く結び付かない。
すると男の子は、肩を竦める。
「まあいいや。僕のやるべき事は変わらない。キミ達を……魔装少女をここで排除する! 《ファイア》!」
そう言うと男の子は、わたし目掛けて火球を放ってきた。
それを防ごうと思っていると、クロナちゃんがわたしの前に割り込み、両腰のビーム砲で火球を相殺した。
「マシロ、ボーッとしてないで! アイツは敵よ!」
「それは分かってるけど、でも……相手はヒトなんだよ!?」
「やらなきゃやられるわよ! それにあたしもマシロも、ここで死ぬわけにはいかないでしょ! あたし達の願いを叶えるためにも!」
「……そうだったね、ゴメン」
わたしは気を引き締め直し、大剣を握り締める。
それを見て、クロナちゃんは何処か満足そうな表情を浮かべていた。
「……あたしだって出来る事なら対人戦なんてしたくないわよ。でも……お互いの信念、正義がぶつかり合ってしまったのなら、戦うしかないでしょ?」
「なんか主人公っぽい事言ってる」
「お姉ちゃん達が描いてる漫画の主人公の受け売りだけどね」
そう言うクロナちゃんから視線を外し、男の子の方を真っ直ぐに見据える。
隙なんていくらでもあったのに攻撃を仕掛けてこないなんて、意外と律儀なのかもしれない。
「お喋りはもう済んだ? なら、そろそろ攻撃を仕掛けてもいいかな?」
「意外と律儀なのね? 不意打ちをした相手とは思えないわ」
「律儀と言うほどでもないさ。おかげで――こちらの準備も整った」
男の子はそう言うと、コートの裾を翻す。
そして懐から、とても古めかしい一冊の本を取り出した。
「起動しろ、『法の書』! そして目覚めろ、エイワス!」
男の子がそう叫ぶと、本のページがバラバラと飛び散る。
次の瞬間、男の子の身に変化が起きた。
背中の左側からだけ翼が生え、左前腕部にはバックラーが装備されていた。
そして右腕全体は刺々しい機械の装甲に覆われ、手からは鋭利なツメが伸びていた。
姿形は違うけど、それはどう見ても――魔装、だった。
「行くぞ! 覚悟しろ、魔装少女!」
男の子はそう叫ぶと、ものすごい速さでわたしの方へと接近してきた―――。
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